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大人のための最新自動車事情
第115回 | 大人のための最新自動車事情

ランチア デルタ──復刻されるWRC 6連覇のラリーカー

ラリー人気の高いヨーロッパでは、販売戦略上ラリーで活躍することが重要だ。ラリーは基本的に一般公道を使用して開催され、車両も市販乗用車がベース。したがって良いクルマの条件も「ラリーで好成績を残すクルマ」となるのだ。WRC(世界ラリー選手権)はF1グランプリと同等かそれ以上の人気を誇るほど。そのラリーシーンでかつて華々しい活躍を見せた名車、ランチア『デルタ HFインテグラーレ』が復刻されるという。

ランチア『デルタ HFインテグラーレ』は、WRCに出場して勝利するために作られた

1988年に登場したランチア『デルタ HFインテグラーレ』は、モータースポーツファンにとってもスポーツカー好きにとっても、特別な存在感をもつモデルだ。

レギュラーモデルの『デルタ』は、1975年に発表されたフォルクスワーゲン『ゴルフ』の後を追うように作られた5ドアハッチバックの一般的な乗用車。そこへDOHCターボエンジンを積み、フルタイム4WDとしたのが『HFインテグラーレ』シリーズである。その目的はヨーロッパで絶大な人気を誇るWRCに出場して勝利を挙げること。つまり『HFインテグラーレ』はFIA(国際自動車連盟)の公認取得用の市販車だったのだ。

コンパクトで角張ったスタイリングは、ほかの多くのスポーツカーと違ってどこかアンバランスで、むしろ親近感を覚えるもの。1987年から1992年にかけてWRCで6連勝した輝かしい実績が人気の根底にあるのは間違いないが、同じくWRCで活躍し、スーパーカーブームで脚光を浴びたランチア『ストラトス』と印象はまったく異なる。

じつは日本でも人気が高く、ハッチバックのスポーツカーとしては異例なほどの台数が輸入され、街中でもよく目にしたくらいだった。ボディカラーは派手なレッドやイエローが多かったが、国産車と見紛うシルエットは国内でも違和感なく受け入れられた。このクルマが秘めていたハイパワーに日本のオーナーたちも満足していたように思う。

そのラリーカーの名車が復活する。今年9月初旬にスイスで開催されたグランドバーゼルモーターショー2018において、『デルタ HFインテグラーレ』の復刻モデルとなる『Lancia Delta Futurista(デルタ フトゥリスタ)』が公開されたのである。

復刻モデルの『デルタ フトゥリスタ』は330馬力のパワーで車重はわずか1250kg

製作したのは、イタリア人レーシングドライバーであり、自動車コレクターでもあるエウジェニオ・アモス氏が設立したAutomobili Amos(アウトモビリ・アモス)。ランチアと同じくフィアット・クライスラー傘下にあるイタリアの小さな自動車メーカーだ。

ベース車両は『デルタ HFインテグラーレ』の翌年に発表された『デルタ HFインテグラーレ 16V』。シリーズには、さらにハイスペックな『16Vエヴォルツィオーネ』『16VエヴォルツィオーネII』も存在するが、アモス氏は「大切に保存されるべき」としてそちらを選ばなかった。実際には生産台数が少ないといった事情もあるのだろう。

『デルタ フトゥリスタ』は、オリジナルのシャシーとエンジンをベースに、最高出力200psだった2.0L直列4気筒DOHCターボを330psまでパワーアップし、それに伴いトランスミッションや吸気・冷却システムを変更。大型のインタークーラーも装備した。

ボディは後部座席用のドアを取り払って3ドアハッチバックとし、ボディパネルにはアルミ板の叩き出しを採用した。前後のバンパーやボンネット、フロントグリル、ハッチ、リアスポイラー、さらにダッシュボードやドアのインナーパネルは、より軽量なカーボンファイバー製だ。その結果、車両重量は従来比で90kgも軽量化され、なんと1250kgを実現したという。最高出力330psのパワーで、車重はたったの1250kgである。

むろんエンジンの強化に伴ってサスペンションの形式も大幅に変更されている。マクファーソン・ストラットからすべてダブルウイッシュボーンとし、ややアンダーステアだったキャラクターもオーバーステア気味に調整したと発表されている。

『デルタ フトゥリスタ』の限定生産台数はわずか20台。販売価格はおよそ3870万円

オリジナルの『デルタ HFインテグラーレ』とイメージが異なるポイントを挙げるとするなら、それはインテリアだろう。レカロ製のバケットシートとセンターマーク付きのステアリングホイールは、いずれも上品なブラウンのアルカンターラで覆われている。

アモス氏はこの内装をはじめ、デザインも足回りも電装系もすべてイタリア製にこだわり、ブレーキはブレンボ、エンジンパーツ類はアウトテクニカ・モトーリを採用。深いグリーンのボディカラーはアモス氏が所有するフェラーリ『F40』と同じ色で、バッチはフェラーリの「カヴァリーノ・ランパンテ(跳ね馬)」を製作した会社に依頼したという。

ちなみに、『デルタ フトゥリスタ』の生産台数はわずか20台。価格は30万ユーロ(約3870万円)とアナウンスされている。

この価格が高いか安いかは『デルタ』ファンの声を聞くのが正しい。ただ、アモス氏は復刻モデルを製作する理由について「私が最初に恋したクルマだったから」と語っている。この言葉が本当なら、ビジネスとして作られるクルマではないということだろう。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Automobili Amos
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Lancia Delta Futurista オフィシャル動画

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