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アデノイド顔貌の原因から治療までの全部

アデノイド顔貌(がんぼう)とは、アデノイドが肥大している人にみられる特有の顔つきのことをいう。何が原因で、どんな症状、悪影響を及ぼすのであろうか。治療法や治療費用、保険は適用されるのかなどアデノイド顔貌の原因から治療までの全貌を紹介する。

今回のアドバイザー

宮島悠旗

歯科医師(歯学博士・日本矯正歯科学会認定医)

2005年3月 愛知学院大学歯学部卒業後、2006年3月 東京歯科大学にて研修医修了、研修医修了証取得。2010年3月 東北大学大学院歯学研究科卒業、歯学博士取得。2011年11月 東北大学大学院歯学研究科口腔保健発育学講座顎口腔矯正学分野 助教、日本矯正歯科学会認定医取得。2014年1月 宮島悠旗ブライトオーソドンティクスを起業。最新の技術で「噛み合わせ」と「エステティック」に配慮し、患者一人一人の要望に応える矯正治療を追及。矯正治療の技術を生かした一般歯科とのチーム医療で、歯の寿命を延ばし健康な体を保つために、理想的な噛み合わせを整える治療計画を提案している。

アデノイド顔貌とは、一体何なのか

アデノイドとは、鼻腔の奥にある咽頭扁桃のことだ。扁桃組織には口蓋扁桃と咽頭扁桃の2種類があり細菌やウイルスが体内に侵入するのを防ぐ役割を果たしているが、アデノイドは口蓋扁桃よりも高い位置にあるため目視することはできない。

アデノイド顔貌とは、そのアデノイドが肥大している人にみられる特有の顔つきをいう。ウイルスや細菌から身を守るための免疫機能が過剰に作用することでアデノイドは肥大してしまう。特有の顔立ちになる特徴がある。

ちなみにアデノイドとは扁桃腺ではない

アデノイドは扁桃腺だと思われがちだが、この表現は正しくはない。扁桃腺といわれる部位は口蓋扁桃であり、アデノイド・口蓋扁桃ともに腺組織ではなくリンパ組織であるからだ。

アデノイド顔貌は何が原因で生じるのか

アデノイド顔貌になる原因は後天性のものである。しかし遺伝によりアデノイド肥大が生じやすい場合、それによって後天性にアデノイド顔貌を発症するしやすくなることがある。多くの場合2歳ごろのアデノイドの肥大が特に激しく、小学校入学の7歳あたりから治まるケースが一般的だ。

後天

アデノイド顔貌は、鼻呼吸ができずに口呼吸をしている人に多く見られる。口呼吸によって口内の細菌やウイルスが増加することが、アデノイド肥大を引き起こす原因になる場合がある。

口呼吸をすることのデメリット

口呼吸をすることにはアデノイド顔貌になる以外のデメリットも多い

・口呼吸のデメリット1. 風邪・アレルギーになりやすい
鼻呼吸であれば、鼻の中の粘膜や鼻毛が外部からのホコリやウイルスを体内に入れないように働いている。それに加えて鼻呼吸は鼻から吸った空気の加湿効果、加温効果もある。しかし、口呼吸は外部からのホコリやウイルスの侵入を阻止する役割を果たすものがなく乾燥した冷たい空気がダイレクトに入ってくるので、喉に直接ホコリやウイルスが付きやすくなる。その結果、アレルギーや風邪にかかりやすくなるのだ。

・口呼吸のデメリット2. 虫歯・歯周病になりやすい
口呼吸をしていると口の中が乾燥し、唾液の量が少なくなる。唾液には消化や口内細菌を殺菌するなどの働きがあるが、量が減ると本来の機能を果たせなくなるため、細菌の増加を招き虫歯や歯周病にかかりやすくなるのだ。

・口呼吸のデメリット3. 口臭がきつくなりやすい
口呼吸は口内の乾燥させ、細菌が繁殖しやすい環境を招く。その結果、口臭がきつくなりやすいのだ。

・口呼吸のデメリット4. 歯が着色しやすい
口呼吸をしていると歯の表面が乾燥しやすくなる。飲み物や食べ物の色素が唾液で除去されなくなるので、歯の表面に色素が残り歯が着色しやすくなるのだ。

・口呼吸のデメリット5. 口内炎ができやすい
口呼吸によって唾液が減少すると口内の粘膜が傷つきやすくなるだけでなく細菌の増加も招くため、口内炎が出来やすくなる。唇も渇いて荒れやすくなる。

・口呼吸のデメリット6. いびきや睡眠時無呼吸症候群を引き起こしやすい
いびきや睡眠時無呼吸症候群も引き起こしやすくなる。これは、口呼吸によって舌の位置が本来の位置よりも喉の方に落ち込む「低位舌」の状態になってしまうためだ。

・口呼吸のデメリット7. 集中力に欠けやすい
口呼吸は鼻呼吸に比べて酸素を取り込む量が少なくなるため、集中力を欠きやすくなる。

・口呼吸のデメリット8. 歯並びや顔つきに影響が出やすい
成長期の小児においては口呼吸だと顎が正常に発達しないため、歯並びが悪くなる。顔の形も口呼吸に適した顔つきに変わっていくため、アデノイド顔貌と呼ばれる特有の顔つきになってしまうのだ。

アデノイド顔貌の症状や特徴

アデノイド顔貌の症状は外見に出やすいことが特徴的だ。これまでとは違った顔になってしまうこともあり、コンプレックスになってしまうことも多い。以下で挙げる症状を理解し向き合っていくことが大切である。

口・唇

口周りの筋肉が緩む

口呼吸をしていると口周りや頬などの顔の筋肉が緩む。口の中の舌が見えるほど緩むケースもある。口呼吸の慢性化によって口が開けっ放しになっていると口を閉じる筋肉が低下するので、顔を引き締めているつもりでも締まりがない顔になってしまいやすい傾向がある。舌も本来あるべき位置よりも前や低い位置に置くようになるため、喋り方がおかしくなったり滑舌が悪くなったりする方も多い。口を閉じなければ発音できない「ま行」や舌を動かして発音する「タダナラ」行やサ行の発音がうまくできなくなってしまう。

また口内環境も悪化しやすい。口呼吸による口内の乾燥は口臭の原因となる細菌の量を増やすだけでなく、歯周病や虫歯の一因にもなるからだ。

本人は気づかないケースが多い症状として「ぺちゃぺちゃと音を立てて食べる」も挙げられる。アデノイド顔貌の患者によく見られる特徴だ。これは口呼吸が原因で口内前方での咀嚼、口を開けて食べるためだと考えられている。

下唇が厚い

顎が小さいと下唇が下に引き伸ばされたような状態になるため、下唇が厚く見える。また口呼吸は唇を自然に前に突き出す呼吸法なのでたらこ唇になることもあるのだ。めくれた唇は空気に晒されるので唇の乾燥も特徴的だ。

常に口を小さく開けて口呼吸をしているので口周りの筋肉が衰える。その結果、下顎が十分に発達せず下顎が後退してしまうのだ。上下の顎の横幅が狭いので、V字型の顔つきや逆に低位舌によって舌が下顎の前歯を前に押し続けることで横顔がしゃくれるなどの特徴がみられるようになる。

口呼吸は、歯並びにも影響を与える。成長期に猫背姿勢が習慣になっていることから口呼吸になっている場合、下顎が筋肉に引っ張られるため、下顎は後ろに引っ込み出っ歯になってしまう。飲食物を飲み込む時に舌を前に押し出す癖(異常嚥下癖)によって前後の前歯が噛み合わない開咬になることもある。成長過程で舌が正しい運動や機能を習得していないと、歯が萌える歯槽骨が十分に成長せず、その結果小さい顎には全ての歯が綺麗に並べるスペースがないため、歯が前後に重なって生えてしまうのだ。

口呼吸をしていると口周りの筋肉の締りが悪くなるため、前歯に舌の力がかかるようになる。前歯が前方に押し出され、出っ歯のように見えることもある。

また歯のかみ合わせが悪いと口の片側で食べ物を噛む癖がつきやすい。片側の歯ばかりで食べ物を噛んでいると歯周病や虫歯、口臭になりやすくなるだけでなく、顔の歪みの原因にもなってしまう。

鼻汁がたまりやすい

アデノイドが肥大すると鼻を後ろ側から塞ぐことになるため、鼻汁がたまりやすくなる。

いびきをかく

いびきをかくことが多くなるのも特徴である。人間は寝る時に鼻呼吸をするが、鼻の通りが悪いために口呼吸になってしまう。口呼吸によって舌が喉の奥に落ち込み気道が狭くなることで喉が振動するので、いびきをかきやすくなる。

眠っている間に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」を発症することもある。アデノイド顔貌の症状の中で最も危険な症状といえる。 顔の筋肉の緩みによって舌根沈下が起こり気道が塞がれるために、呼吸が止まってしまうのだ。呼吸の停止は一時的なものなので死に繋がることは少ないが、熟睡できないので昼間の眠気にも襲われることになる。

鼻が小さく、鼻の穴が小さい

鼻が小さかったり、鼻の穴が小さいと鼻からの呼吸がしづらくなる。その結果、口呼吸が慢性化してアデノイド顔貌になりやすくなるのだ。

鼻と耳を繋ぐ耳管の開口部に位置するアデノイドが腫れると急性中耳炎や滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)になりやすくなる。これは、耳管の開口部が塞がれて中耳に溜まった液が排出されなくなるためだ。

顔全体

口が開いたままになる口呼吸を長時間続けていると顔の筋肉が衰えるため、顔が長くなる。顔の筋肉が衰えると締まりのない無気力そうな顔にもなってしまう。二重顎になったり、横から見た時に首との境目が曖昧になったりするケースもある。

背骨

背骨が丸まり猫背にもなりやすいといわれている。口呼吸がしやすいように頭を前に出す癖がつき、頭の重さで背骨が丸まる体勢になりやすいのだ。猫背になると呼吸が浅くなるため、自律神経の乱れや代謝機能の低下を招く。その結果精神的なストレスを抱えやすくなる方や、疲れやすさを感じる方もいる。

アデノイド顔貌かどうかのセルフチェック方法

アデノイドが肥大するとアデノイド顔貌特有の顔つきになることは紹介したが、顔以外にも様々な症状が起こることがある。「出っ歯・受け口」「ろうと胸」「猫背・反り腰」「学習障害」「睡眠時無呼吸症候群」などだ。これらの症状がアデノイド肥大に起因するとは断言できないが、気になるのであれば病院で診断を受けることが大切だといえる。

アデノイド顔貌の治療を始める前に、まずはカウンセリングを

アデノイド顔貌の治療法は症状によって異なるので、クリニックや医師のカウンセリングを受けることをおすすめする。施術内容や悩み、理想のフェイスラインなどを相談しておくことが、体に負担をかけないスムーズな施術に繋がるのだ。

時期に応じてアデノイド顔貌の治療法を見極める

子供の場合

原因であるアデノイドを切除

子供のアデノイド肥大は生理的作用による場合が大半だが、細菌感染症だと診断できない場合は抗生物質の投与を行う。抗生物質の投与でも改善がみられない場合や呼吸に支障が出る場合などは、全身麻酔をかけたうえでの手術が行われる。

口呼吸を治す

成長期(男性17~18歳、女性15~16歳)前の子供であれば、鼻呼吸の習慣を身につけることで改善も可能だとされている。ただ、口呼吸の原因が鼻炎などによる鼻づまりの可能性もあるため、耳鼻咽喉科などで根本的な原因を治療をすることも大切だ。

成長期を過ぎた後

鼻呼吸にしても治らない

成長期を過ぎてしまうと、鼻呼吸に直してもアデノイド顔貌の改善は難しいとされている。「顔が完成してしまっている」「前歯や上顎が前に出ている」など口呼吸に適した顔立ちになってしまっているのが主な理由だ。

大人

治療する必要がある

大人になってしまうとアデノイド顔貌の改善は困難であるが、治したいと考えているのであれば治療する必要がある。アデノイドの肥大や拡がりは画像で診断するため、耳鼻咽喉科の受診がおすすめだ。

アデノイド顔貌の治療法の種類と費用

アデノイド顔貌の整形費用は治療法やクリニックによって異なるが、これは施術に必要な材料費や顎の形状に個人差があるためだ。クリニックの費用設定は一律ではないので、事前のカウンセリングで施術内容だけでなく費用についても確認しておくことが大切だといえる。

整形による治療法

歯列矯正治療

矯正をして歯並びを改善することで鼻呼吸を促す施術法である。歯列矯正をすると歯並びが改善されるため、口呼吸から鼻呼吸へと促すことができる。1~2年ほどの期間を要し費用は60万円~100万円ほどかかるが、見た目と噛み合わせを同時に治療できるというメリットがある。

骨格を修正する整形

骨格を修正する整形で、上顎骨体移動術や下顎骨体移動術、上下顎骨体移動術、上下顎分節骨切術などがある。顎のバランスを整えるための外科治療が、顎骨体移動治療だ。4番目の歯を抜歯して口元を後ろに引っ込める施術で、個体差はあるものの7mm前後の移動が可能である。口の中からの施術なので傷口も目立たないし、全身麻酔なので痛みもない。治療費用は40万円~60万円。

オトガイ形成術

オトガイ形成術は、オトガイと呼ばれる下顎の先端部分を前方に移動させることで下顎を形成する施術だ。上顎や下顎の移動などの外科矯正だけでは改善が困難な場合に併用されることが多いが、歯列に問題がない場合は単独で施されることもある。費用は麻酔代と入院費を含めて80~120万ほど。顎変性症と診断され、かつ外科矯正の一環として手術を行う場合には保険が適用される。

シリコンプロテーゼ挿入

シリコンプロテーゼを注入して顎を前に出す整形治療である。理想的なラインを手に入れることができ、効果も半永久的なのがシリコンプロテーゼ挿入である。下唇の裏側を2~3cmほど切開して、理想的なラインに形成したプロテーゼを骨の上から挿入する施術だ。治療は30分ほどで、傷跡も目立ちにくい。ヒアルロン酸を使う方法もある。費用は30万円~50万円ほどだ。

アデノイド切除による治療法

アデノイドは成長とともに小さくなるが、極稀にアデノイド肥大が持続して起こる場合もある。耳鼻咽喉科などでアデノイド増殖症と診断された場合には、アデノイドを切除しなければならない。費用は40万円ほどだが保険適応で3割負担とすると、約12万円ほどである。

口腔癖の矯正による治療法

アデノイド顔貌の治療は、舌癖や口呼吸などの口腔癖の矯正も並行して行う。舌や口周りの筋肉を鍛えることで、締まりのない顔つきを改善していくのである。費用は40~70万ほどの相場観である。

アデノイド顔貌の治療にも保険を使うことが可能

美容目的の場合は保険適用外のため高額になるが、アデノイド顔貌の治療の場合は保険が適用される場合もある。これはアデノイド顔貌が顎変形症による骨格性上顎全突症や下顎後退症と診断されるためであるが、保険適用については治療前に確認しておくことをおすすめする。

条件1.顎口腔機能診療施設に指定されている病院で治療を受けている

顎口腔機能診療施設や更生・育成医療機関、自立支援医療などに指定されているクリニックでの診療が保険適用の条件の1つだ。

条件2.症状が顎変形症と判断される

保険が適用されるためには、顎変性症と診断されていなければならない。顎変形症は先天異常以外の矯正治療に保険が利く症例なので、治療に手術が必要と判断された場合には保険診療として扱うことができるのだ。

条件3.治療に関して病院の指示に従える

術前矯正、手術、術後矯正、保定装置を付けて咬合の調整など長期間を要する治療になるため、治療に関して病院の指示に従えることも保険適用の条件の1つとなっている。

アデノイド顔貌の治療が済めば良いわけではない

治療をしてもそのままではダメ

アデノイドの切除や抗生物質の服用で改善は期待できる。しかし、手術による切除や薬でアデノイドを小さくすることでアデノイド顔貌特有の顔つきが治るわけではないのだ。

口呼吸を改善する必要がある

アデノイド顔貌はアデノイド肥大による口呼吸が原因のため、口呼吸を直さなければ顔つきの改善には繋がらない。無意識に行っている口呼吸を鼻呼吸に直すことは容易ではないことを知っておく必要があるだろう。

ガム

ガムを噛んで、口周りの筋肉や顔の表情筋を鍛えることは口呼吸の改善に繋がる。口を閉じて鼻で呼吸しながら、普段使わない側の歯で噛むことを意識するようにする。1日2~3回、それぞれ30~40分続けることが大切だ。

大人用おしゃぶり

子供が口呼吸になる最たる原因は離乳の早期化だと考えられているので、おしゃぶりを使って口呼吸を直す方法もおすすめだ。「ブレストレーナー」などの大人用のおしゃぶりを使用することで、口を閉じて鼻呼吸をするトレーニングができる。

舌の筋トレ「あいうべ体操」

口周りの筋肉を鍛えるトレーニングとして有名なのが、「あいうべ体操」である。「あー」と口を大きく開く。「いー」と口を大きく横に広げる。「うー」と口を強く前に突き出す。「べー」と舌を下に突き出して伸ばす。この流れを1セットとして1日30セット。毎日続けることが大切だ。

食べる時片側で噛む癖をやめる

片側で噛む癖は顔の片側が弛ませたり、顔が歪むなどの悪影響を及ぼすともされている。意識的に口を閉じて両方の歯で噛むことが大切だ。

鼻腔拡張グッズを使い鼻呼吸を楽にする

口呼吸の原因が鼻通りの悪さに起因する場合は、鼻腔拡張グッズがおすすめである。鼻腔の広さを確保することで鼻呼吸をしやすくしてくれる製品で、ブリーズライトなどが有名だ。

寝るときに口にテープを貼る

起きている時は鼻呼吸だが、寝ているときは口呼吸になっている人も多い。寝ている時に薬局などで販売されている医療用のテープや絆創膏などを口に貼ることで、就寝中の口呼吸を予防することも可能だ。

歯列矯正

出っ歯などの歯並びの悪さを治療することで口呼吸が改善されることも少なくない。口呼吸を直す手段として歯列矯正することもおすすめだ。