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後ろが見えるヘルメット──ハイテクがライダーを救う

40〜50代の男性読者が生まれる前、日本の公道を走るオートバイ乗りは全員“ノーヘル”だった。ヘルメットの着用義務が段階的に始まったのは1965年。着用を怠ると罰則が課せられるようになったのは1975年以降のこと。それも51cc以上のオートバイに限られ、現在の50代は16歳になると原付き免許を取り、ノーヘルでホンダ『モンキー』を乗り回したものだった。しかし、これは記憶の彼方にある昔の話。いまやライダーにとって、ヘルメットは水や空気のように当たり前の存在になっている。ヘルメットそのものも、ライダーの頭部を保護するだけの装備から、さまざまな用途のハイテク装置へと進化を遂げている。

海外ブランドから続々、ライダーの危険を回避してくれるハイテクヘルメット

オートバイはクルマと違い、体の周りに保護してくれるフレームやパイプがない。事故を起こしたりもらい事故に遭ったりしないためには、ヘルメットを着用するだけではなく、危険を事前に察知するリスク回避能力が不可欠だ。

しかし、残念ながら加齢に伴ってリスクを回避する能力は確実に衰えていく。特に40代になってから再びオートバイに乗り始めたリターンライダーはカンが鈍っているので注意が必要だろう。その一方、オートバイ自体はどんどん高性能化している。

そこで今、海外ブランドからいくつか登場しているのが、ライダーのリスク回避をアシストしてくれるヘルメット周りのハイテク装備である。

たとえば、ヘルメット装着式のLEDブレーキランプユニット『Brake Free』もそのひとつ。最新技術によるオートバイ用ハイマウントストップランプだ。

ヘルメットに取り付けるハイマウントストップランプユニット『Brake Free』

ハイマウントストップランプとは、クルマの尾灯のうち、ルーフ後部、リア中央の高い位置に独立して設置されるブレーキランプのこと。遠方からの視認性が高く、前車の窓越しに数台先のブレーキングまで確認することができる。

しかし、道路を走るのはクルマだけではない。オートバイ、とりわけスポーツバイクのストッピングパワーは非常に強力だ。車体の軽さも相まって制動距離は非常に短く、それは多くの四輪ドライバーの想像をはるかに超えている。

にもかかわらず、一般的にオートバイのブレーキランプは小さく、四輪ドライバーに対してアピール不足だ。そうなると、追突事故のリスクが生じるし、ライダーにとってもらい事故は大きな不安要素となっている。

イギリス製の『Brake Free』は、そうした不安を解決してくれる装備だ。本体は100個のLEDがセットされたランプユニットで、ブレーキやエンジンブレーキ、シフトダウンなどの操作に応じてLEDランプが自動的に点灯する。

しかも、内蔵された加速度センサーとジャイロセンサー(角速度センサー)が減速操作を独自に判断するので、オートバイそのものと接続する必要がない。強力な磁石によって加工せずに固定できるため、大半の市販ヘルメットに簡単に装着できる。

本体の充電はMicroUSBポート経由で行い、充電時間は2時間程度。1回の充電で8時間以上作動する。防塵・防水能力はIEC(国際電気標準会議)が認定する基準で「IP64」を有しており、雨中の高速走行でも問題ないとされる。

気になるのは『Brake Free』の本体重量が170gあることだが、これは慣れの問題だろう。それ以上に、ご覧のとおりの未来的なデザインは、リスク回避と別の意味でも注目されるに違いない。

面白いのは入手方法だ。現時点では店頭販売は行わず、クラウドファンディングサイトの「Indiegogo」を通じて109ドル(約1万2000円)からの出資額を含む価格で予約を受け付けている。今ごろ製品の出荷が始まっているはずだ。

後方視界を広げてくれる画期的なオートバイ用リアビューシステム『ZONA』

一方、生まれるべくして生まれた安全装置といえるのが、やはりイギリス発のオートバイ用リアビューシステム『ZONA』だ。

近年のリアビューカメラはディスプレイが超小型になり、価格も手頃な製品が数多く登場している。とはいえ、クルマではなくオートバイ用、それもヘルメットの後方視界を確保する装置は、まだそれほど多くないに違いない。

もともとオートバイの乗車姿勢では、後方視認が大きな弱点だった。特にスーパースポーツ系は前傾姿勢となるため、ミラーの有効視界が狭いだけでなく、振り向く動作そのものがむずかしい。高速道路の合流などで完全に後方を確認するには、大きく姿勢を変えなければならないほどである。『ZONA』は、そうしたライダーのストレスを取り除き、後方視界を広げてくれる装置だ。

製品はオートバイの車体側に取り付ける小型カメラと記録装置、そしてヘルメット側に取り付ける受信機とHMD(ヘッドマウントディスプレイ)ユニットで構成されている。

小型カメラは専用のマウントでナンバープレートの横に配置し、Bluetooth発信器と動画記憶メモリを接続する本体をシート下にセットして車載バッテリーと接続。車体後方の映像をHMDにBluetoothで送る仕組みだ。

本体には加速度センサーが組み込まれていて、3分間以上のアイドリング状態になるとスリープし、走り始めると再び始動を開始。それにより、無駄にメモリを使うことを抑えてくれる。受信機のバッテリーは最大10時間作動するので、ツーリングでも十分に使えるだろう。ちなみに、カメラからの画像信号は暗号化されたプロトコルで発信されるため、同社からペアリングされて出荷された製品以外はマッチしないようだ。

ライダーにとって気になるのは、HMDの見え方だ。ディスプレイのサイズは不明だが、写真を見るかぎり非常に小さい。資料によれば「3メートルの距離から30インチディスプレイを見るようなもの」とのことだが、視野のなかでどんな存在感を示すかは、今のところ想像するしかない。

価格は269ポンド、日本円で約2万9000円となっている。

遠くない将来、オートバイに乗るのにヘルメット着用が不要となる日がくる!?

最初にライダーがヘルメットを着用しないノーヘルを「記憶の彼方にある昔の話」と書いたが、じつはそうとも限らない。

2年半ほど前、2016年10月もBMWモトラッドがBMW設立100周年を記念して発表した『Vision Next 100(ビジョン ネクスト100)』は、未来のバイクをテーマとしたコンセプトモデルだった。

まるで大友克洋の『AKIRA』に登場する「金田のバイク」のようなスタイリングもさることながら、驚いたのは、このコンセプトモデルがオートバイのウィークポイントである転倒リスクを取り去っていること。さらに、事故回避機能によって、ヘルメットの着用も不要になるとしていたことである。

つまり、ノーヘルは過去ではなく、未来の話でもあるわけだ。今回紹介したようなハイテクヘルメットも、その未来に向けてさらに進化するに違いない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) ZONA, BrakeFree Technologies.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)