クロード・モネ 《草上の昼食》 1866年/(C) The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
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本邦初公開作も。視覚で愉しむ旅体験「プーシキン美術館展――旅するフランス風景画」

17世紀から20世紀にかけて描かれた風景画65点が展示される「プーシキン美術館展――旅するフランス風景画」が、東京・上野の東京都美術館で開催中。7月21日からは、大阪・中之島の国立国際美術館で開催される予定となっている。本邦初公開の作品を含む圧倒的な美の世界は、まさに視覚の「旅」体験だ。

プーシキンが誇る世界屈指のコレクションから、風景画の名作をセレクト

印象派を中心とするフランス近代絵画のコレクションを持つ、モスクワ中心部にある「国立A.S.プーシキン美術館」。その歴史は1894年、モスクワ大学のイワン・ツヴェターエフ教授が呼びかけ、1912年に「モスクワ大学付属アレクサンドル3世美術館」として開館したことが始まりだ。エカテリーナ2世などの王侯貴族や、19世紀末から20世紀初めに実業家として活躍したセルゲイ・イワノヴィチ・シチューキン、イワン・アブラモヴィチ・モロゾフなどが蒐集した作品を中心に、世界屈指の絵画コレクションを収蔵している。
ギュスターヴ・クールベ 《山の小屋》 1874年頃/(C) The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
日本で「プーシキン美術館展」と銘打って開催するのは今回で3度目。そこで今回はこれまでと趣向を変え、コレクションのなかから「風景画」65点をセレクト。クールベ、ルノワール、モネ、シスレー、セザンヌ、ルソー、ゴーギャンなど、巨匠たちが描いた名画ばかりだ。

風景画の変遷を、時代を追って体験できる展示形式がユニーク

会場は6つのセクションに分かれ、神話の世界や古代の風景を描いた作品が集められた「第1章 近代風景画の源流」からスタート。宗教や神話をモチーフにすることが当たり前だった時代である1655年に描かれたのが、クロード・ロランの『エウロペの掠奪』だ。題名となっているギリシャ神話のモチーフが手前に描かれているが、あくまで主役は「海景」であると考えられている。
クロード・ロラン 《エウロペの掠奪》 1655年/(C) The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
その後、のどかな田園風景を自然に描写したものや、近代都市へと生まれ変わっていくパリを描いた作品、光溢れる印象派からフォービズムといった近代絵画へと移り変わり、最後の第6章「海を渡って/想像の世界」では19世紀末~20世紀に描かれた作品を展示。時代を追って風景画が変遷していく様を楽しめる。
アンドレ・ドラン 《港に並ぶヨット》 1905年/(C) The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
ポール・ゴーガン 《マタモエ、孔雀のいる風景》 1892年/(C) The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
アンリ・ルソー 《馬を襲うジャガー》 1910年/(C) The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
クロード・モネが26歳のときに描いた、今回が初来日となる『草上の昼食』(メイン画像)は、130×181センチの大きな絵だ。パリ近郊のフォンテンブローで、流行のファッションに身を包み、食事を楽しむ若者たちを描いた作品であり、後に「光」を描く作家となる、若きモネの傑作だ。またこの絵は謎めいた部分があることでも知られており、向かって右側の木には「P」という文字と矢で射抜かれたハートが刻まれ、その横には宴を覗き込む男が描かれるなどしているので、細部までじっくりと見入ってほしい。

ひと口に「風景画」といっても様々な題材、手法がある。各時代を代表する巨匠のタッチを楽しめる「プーシキン美術館展」。風景画の世界を巡る“美しき旅”を楽しんでもらいたい。Bon Voyage!

メイン画像クレジット:クロード・モネ 《草上の昼食》 1866年/(C) The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
Text by Tamotsu Narita Edit by Kei Ishii(Seidansha)