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- 葉巻への誘い──ゆとりある大人の愉悦を -

何から始めるべき? 初心者向け「葉巻」のチョイスとは

ウィンストン・チャーチルや吉田茂といった、歴史に名を残す著名人たちが愛好していた「葉巻(シガー)」。ダンディな大人の嗜みとして、憧れを抱く男性も少なくないだろう。とはいえタバコに比べ、吸い方やマナーなどに特別な注意が必要というイメージがあるため、葉巻の世界へ足を踏み入れることをためらってしまうのも事実。この記事では、葉巻を嗜んでみたいと考えている男性のための第一歩として、“葉巻のプロ”がアドバイスする葉巻の選び方から紹介しよう。

今回のアドバイザー

羽崎修平

「Panacee(パナセ)」店主

厳選された酒と、管理の行き届いた極上の葉巻が楽しめるバー「Panacee(パナセ)」店主。店名はフランス語で「万能薬」を意味し、店を訪れた人の心を癒やしたいという意味が込められている。旬のフルーツをふんだんに使ったカクテルも人気。

初めてだからこそ良い物を選びたい葉巻。シガーバーで先達の教えを受けるのがオススメ

特別な男たちの趣味という印象が強い葉巻。しかし最近では、若い世代でも気軽に葉巻を愉しむ人が増えているという。実際、大きなタバコ店やデパートなどに行けば、様々な種類の葉巻が販売されているわけだが、これから葉巻を嗜みたい初心者にとって、もっとも悩ましいのが「最初の1本」として、どの銘柄を選ぶべきかという問題だろう。

葉巻はキューバやドミニカなどを始めとしたカリブ海諸国、ヨーロッパ、アジア、そして日本でもつくられており、産地ごと、そして銘柄ごとにテイストも個性も違う。また太さや長さも様々なものがあり、それによって喫煙時間の長さも変わる。さらには年ごと、地域ごとにリリースされるスペシャル品もある。それだけに種類も多く、初めての場合はどれを吸っていいのか迷ってしまうものだ。

そこで求めたくなるのが、葉巻の世界を知るプロからのアドバイス。今回は、酒と葉巻が愉しめるバー「Panacee」店主である羽崎修平さんに、初心者が選ぶべき「最初の1本」について伺った。
「月並みな言い方ではありますが、入門編の葉巻としてよく名前が上がるのは『モンテクリストNo.4』でしょうか。吸口も大きくなく、煙の量もそこまで多くなくて、味わいもマイルド、吸う時間も長過ぎなくて、値段も手頃という点がオススメのポイントです。個人的にはコイーバのシグロⅠなどをオススメすることも多いですね」(羽崎修平さん、以下同)
とはいえ、羽崎さんは「最初の一本はまずお手頃に、とそれだけを基準に最初の一本として選んでしまうと、葉巻を好きになってもらえる可能性も少なくなってしまう気がするんです。なので、できれば最初はなるべくキチンと状態が管理された美味しい葉巻を吸ってもらいたいですね」ともアドバイスする。葉巻のような嗜好品は、形から入るのも重要。キューバ産葉巻としてあまりに有名な「コイーバ」や、イギリスの宰相サー・ウィンストン・チャーチルが愛した「ロメオ・イ・フリエタ」など、憧れの人が愛した銘柄から入ってもよいという。安価なものより少々値は張るが、それでも数千円で手に入るものがほとんどだ。

「1~2時間をゆったり過ごすアイテムとしては決して高くは無いのではないでしょうか」
自分で選ぶのは難しいと思うなら、羽崎さんが店主を務める「Panacee」のような、葉巻の愛好家が集まるバーへ足を運び、お店で勧める葉巻から試してみるという手もある。初心者がいきなりシガーバーなんて…と怖気づいてしまうかもしれないが、羽崎さんはむしろ初心者こそ、そうした場から始めるのが良いという。

「葉巻を吸ってみたいというお客さんが店に来たら、私に限らずお店の人は誰でも喜ぶと思いますね。『初めてなので、どういうのがいいですか』と聞かれたら、自分なりの解釈はお伝えしますけど、葉巻は基本的には嗜好品なので、結局のところ自分が好きなように楽しむのが正解なんです。とはいえセオリーを学んでから、その先で嗜好を求めるもの。習うより慣れろじゃないですけど、こなしていくことが大事。そのために入口はちゃんとした方がいいので、まずは葉巻のことを知っている人に手取り足取り教えてもらうのが、いちばんではないでしょうか。ご自身のまわりにいる葉巻好きを探すのは意外と難しい場合が多いものです。ですが葉巻を扱うお店に行けば仕事でもありますから、きちんと丁寧に教えてくれます」

吸い終わるまでの1時間程度を、ゆったりと過ごすことこそ葉巻の醍醐味

各自で好きなように愉しめばよい嗜好品とはいえ、やはり最低限のセオリーは理解しておくべきという葉巻。そこで、選び方とともにおさえておきたい葉巻の「基礎知識」についてもレクチャーしていただいた。羽崎さんによれば、紙巻きタバコは紙などの科学的な人工物を使用しますが葉巻はナチュラルな葉のみで出来ている”オーガニック製品”とのこと。
「葉巻は、中に『フィラー』と呼ばれる葉が入っています。それを『バインダー(中巻葉)』で巻き、さらに1番外側を取り囲む『ラッパー(上巻葉)』で巻いて、最後に吸口のところをキャップで止めてつくるんですが、このキャップを止めるところにちょっとだけ糊を使っているんです。この糊以外、葉巻は『すべてナチュラルな発酵させた葉』でできているので、少しヘルシーなイメージになりますよね。おまけにリラックス効果でストレス解消。素晴らしいアイテムです」

続いては葉巻の形状について。一般的に標準的な太さ、長さの「コロナ」と呼ばれる物。その他には太く短い「ロブスト」、しっかりとした長さと程よい口径の「チャーチル」、コロナよりも一回り小さな「ペティ・コロナ」、魚雷型と言われる太さが均一ではない「トルペド」など様々な形やサイズが揃っており、この太さや長さによって喫煙時間も変わってくる。

「太くて短い葉巻は、短時間にたっぷり煙を楽しむことができます。一方、細くて長い葉巻は口径が小さく煙の量も調整しやすいので疲れずにくく、デリケートでしっかりと味の変化を長い時間楽しめるという、ヨーロッパの貴族的な楽しみ方とでもいいましょうか。喫煙時間は吸い込みの強さや肺活量など人によっても違います。またTPOや持ち時間にあわせて、その場でベストなサイズや味わいを選ぶのも葉巻の楽しみのひとつですね。のんびりと紫煙をくゆらせる、その為だけに時間を費やすなんて、とても豊かで優雅な過ごしかたではないでしょうか」

「急がず煙をゆったり吸うのが、葉巻の美味しい吸い方。1時間なら1時間、葉巻を吸うことがプライオリティ・ワンになりますから、そのための時間をつくるものなのです。まずはセオリーに則り、葉巻を好きで嗜む店主やスタッフのいる店やバーなど、気持ちよく吸える場所で楽しんでもらいたいですね」
ちなみに、今すぐにでも葉巻を吸ってみたいという初心者には、JTが運営する「シガーバー&カフェ ル・コネスール」やキューバシガーの総代理店「シガークラブ」、タバコや喫煙具などを扱う「ダビドフ」銀座本店などもオススメとのこと。忙しい現代社会で忘れがちな、ゆったり時間を使い葉巻を楽しむという、贅沢なひと時を過ごせることだろう。次回は、葉巻を愉しむための基本的な手順に関するアドバイスについて紹介する。

Text by Tamotsu Narita
Photo by Kazushige Mori
Edit by Kei Ishii(Seidansha)