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- 男性にもある更年期──LOH症候群を理解する -

夜中に2回以上は要注意。夜間頻尿はLOH症候群のサインかも

夜に何度もトイレに立つなど、生理現象として見過ごしがちな症状が、男性の更年期、いわゆるLOH症候群発症のサインになっていることがあるという。夜間頻尿とLOH症候群の関係について、泌尿器科医師の大岡均至さんに聞いた。

■今回のアドバイザー
独立行政法人国立病院機構神戸医療センター
泌尿器科部長
大岡均至さん

神戸医療センターにて、泌尿器科部長、感染対策室特別顧問(ICD)、抗菌化学療法指導医を併任。腎癌分子標的療法から夜間頻尿など、専門分野は多岐に渡り、患者に寄りそった診療を心がける。

LOH症候群による精神状態の変調や睡眠障害が夜間頻尿の原因に?

多くの人が悩んでいる尿トラブルのひとつ「夜間頻尿」。夜間頻尿の原因はさまざまだが、独立行政法人国立病院機構神戸医療センター泌尿器科部長の大岡均至さんによれば、なかには男性更年期障害(以下、LOH症候群)の発症が深く関わっていることもあるという。

「LOH症候群は、男性の加齢にともなう精巣機能の低下、すなわち男性ホルモン・アンドロゲンの分泌が低下することで引き起こされる症状を指します。LOH症候群の具体的な症状は、以下の3つとなります。

(1)精神・心理症状(抑うつ、不安、疲労感、イラ立ちなど)
(2)身体症状(関節・筋肉関連、骨粗しょう症、発汗、ほてり、睡眠障害など)
(3)性機能関連症状(性欲低下、勃起障害、射精感の減退など)。

これらのうち『夜間頻尿』や『頻尿』は、精神状態の変調や睡眠障害の症状に含まれていることになります」(大岡さん、以下同)

ちなみに、夜間頻尿の定義は、夜、寝ついてから朝になるまでに一般的には2回以上トイレに立つことを指す。この状態が続くと、慢性的な睡眠不足を招き、翌日のパフォーマンスの低下につながる、と大岡さん。たった2回でも、深夜のトイレを侮らないほうがよさそうだ。

夜間頻尿のウラには、糖尿病などLOH症候群以外の病が隠れている可能性も

大岡さんによれば、頻尿・夜間頻尿を放置すると、LOH症候群をはじめ、さまざまな疾患を見逃す可能性があるという。

「LOH症候群と頻尿や夜間頻尿の共通点は、糖尿病やメタボリック症候群との関わりが深いこと。LOH症候群を発症している場合、男性ホルモン補充療法という治療を行いますが、同時に糖尿病や高脂血症(肥満)の治療をしなければならないケースも少なくありません。LOH症候群を放置すると、性欲や活力の低下、不眠から引き起こされる頻尿の悪化や、抑うつ、心血管疾患、糖尿病の悪化などにつながる可能性も。ひいては、死亡率にまで影響を及ぼす可能性があるのです」

LOH症候群による夜間頻尿、とひと口にいっても、さまざまな要因が複雑に絡み合い、影響を及ぼしているのだ。それでは、LOH症候群が疑われる場合、何科を受診するべきだろうか?

「LOH症候群の症状は多種多様。もし、性欲低下や勃起障害、夜間頻尿などの症状があれば、気軽に泌尿器科を受診してみましょう。LOH症候群を伴う頻尿であれば、適切な治療を受けることで、症状が劇的に改善することもあります。また、性欲や活力の低下が気になる場合は、内科や精神科を受診するなど、選択肢もさまざまです。ただし、どこを受診するにせよ、担当する主治医がLOH症候群という病態を認識しているかどうかが、その後の治療方針に大きく影響します」

とくに、LOH症候群はうつ病との鑑別が難しいため、医師によって診断・治療のアプローチが異なることも。医療機関選びは慎重にしたいものだ。

治療は男性ホルモン・テストステロン補充療法が原則

LOH症候群と診断された場合は、どのような治療が行なわれるのだろうか。

「治療の原則は、男性ホルモンであるテストステロン(T)補充療法です。経口剤・注射剤・経皮吸収剤(外用剤)などの方法がありますが、日本で保険が適用されているのは注射剤のみ。そのほか、精神科的なアプローチや漢方薬、勃起不全治療薬を用いる場合もあります。糖尿病や肥満を併発していれば、T補充療法とは別に、減量や生活指導などの治療も行う必要がありますね」

最後にアドバイザーからひと言

「LOH症候群は、責任がある立場に置かれ、社会貢献を期待される年代の男性が遭遇する疾患です。週末はクタクタで、平日もやる気が出ない、疲れているのに夜中にトイレで目が醒めるなどの症状にお悩みであれば、少し勇気を出して泌尿器科医に相談いただければ、お役に立てるかもしれません」

Text by Miki Ohnuki(Seidansha)
Edit by Kei Ishii(Seidansha)