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第89回 | 40男が嗜む逸品

まさに至上。世界最高峰の印象派コレクションを見逃すな

スイスのチューリヒ湖を望む美術館で、2015年まで一般公開されていた「ビュールレ・コレクション」。世界最高峰と呼ばれる印象派コレクションを含む64作品が「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」として日本を巡回中だ。

日本で拝む最後のチャンスかもしれない、誰もが知る巨匠たちの作品群

ルノワール、モネ、セザンヌ、ピサロ、シスレー、ファン・ゴッホ、ゴーギャン、ドガ、マネ、シニャック、ピカソ、ブラックなど、誰もが知る有名作家による印象派~ポスト印象派~モダン・アートを中心にコレクションする「ビュールレ・コレクション」。これらの作品は、一人のコレクターによって集められたものだ。

その人の名はエミール・ゲオルグ・ビュールレ。1890年ドイツに生まれたビュールレは、学生時代から美術に興味を持ち、美術史を学ぶ。第一次世界大戦後、実業家として成功したビュールレは作品収集を始め、やがてそれは世界屈指の個人コレクションとなっていく。集められた作品は移住したチューリヒの邸宅に飾られていたが、やがて壁は作品でいっぱいになり、隣にある別棟が保管庫になった。ビュールレは1959年に亡くなるが、この別棟を美術館として改装、1960年からコレクションが一般公開されることとなったのである。

(C)Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)

しかし2008年、セザンヌ「赤いチョッキの少年」、ドガ「リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち」、モネ「ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑」、ファン・ゴッホ「花咲くマロニエの枝」という4点の傑作(合計で数百億円の価値があるといわれる。本展にもすべて出品されている)が盗難に遭ってしまう。その後、作品はすべて発見されて美術館へ戻ったが、この影響によってセキュリティ上の問題から美術館は2015年に閉館。コレクションはチューリヒ美術館にすべて移管されることとなった。

(C)Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)

チューリヒ美術館へ移管される2020年までの間、ビュールレ・コレクションは世界を巡回することになり、ついに日本で「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」の開催が実現された。これほど大規模なビュールレ・コレクションが日本で見られる機会は、今回が最後だと言われている。

ビュールレによる、システマティックな収集スタイルを堪能すべし

本展のキービジュアルにもなっているルノワールの傑作「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」(なんとビュールレはこの絵のモデルであるイレーヌ本人から購入したそうだ)、モネ「ジヴェルニーのモネの庭」、ファン・ゴッホ「日没を背に種まく人」、ゴーギャン「贈りもの」など傑作揃いの本展。E.G.ビュールレ・コレクション財団館長のルーカス・グルーア氏(下の写真右。左はエミールの孫でE.G.ビュールレ・コレクション財団理事長のクリスチャン・ビュールレ氏)は、会見でビュールレ・コレクションの収集スタイルを「非常にシステマティック」と形容している。

(C)Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)

肖像画や風景画など、その作家のトピックとなるような作品を初期、中期、成熟期とコレクションし、絵やタッチが変化していく様をも楽しむという、美術史を学んだビュールレだからこそ、の視点も持ち合わせているのだ。たとえば本展に出品されているジョルジュ・ブラックの3枚の絵画たちの変容に注目してほしい。1906年頃に描かれた『レスタックの港』はフォーヴィズムの影響を受けており、抽象度が高く、色彩も激しいが、1912年の作品『ヴァイオリニスト』は分析的キュビズムと呼ばれる、対象を分解した画面に変わり、1924年の『果物のある静物』では黒を印象的に使い、各モチーフが存在感を放つ絵画へと変化していく。そうした違いを見るのも、本展の楽しみ方のひとつとなろう。

展示の最後には縦2メートル、横4.25メートル、非常に大きなモネの「睡蓮の池、緑の反映」がある。スイス以外では初の展示となるこの大型作品は来場者の撮影が許可されている。

(C)Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)

また5月7日に東京会場が終了した後、5月19日~7月16日には福岡「九州国立博物館」で、さらに7月28日~9月24日には愛知「名古屋市美術館」を巡回する予定となっている。絶対にこの機会を逃さないよう、ぜひとも各会場へ足を運び、素晴らしいコレクションを堪能してもらいたい。

Text by Tamotsu Narita
Edit by Kei Ishii(Seidansha)
Main Photo: (C)Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)

開催情報
至上の印象派展 ビュールレ・コレクション
会期:2018年2月14日~5月7日(5月1日を除く火曜休館)
開館時間:10:00~18:00 毎週金曜、土曜、4月28日~5月6日は20:00まで(入場は閉館30分前まで)
入場料:一般1600円、大学生1200円、高校生800円、中学生以下無料
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)

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