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- 相談しにくいセクハラ・パワハラ対策【初級編】 -

企業が考える「セクハラ」の代償。処分の重さを決める基準はどこに?

ビジネスマンが負う可能性がある「セクハラ」のリスクとして、まず心配になるのが勤務先から下される懲戒処分だろう。口頭注意から減給や解雇まで様々な処分が想定されるが、実際のところ、企業側はどのような基準をもとに処分内容を決めるのか? 専門家の意見を聞いた。

■今回のアドバイザー
弁護士法人咲くやこの花法律事務所 弁護士
渕山 剛行

大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属。知的財産法、労務・労働事件(企業側)、債権回収が得意分野。

企業側の判断に委ねられる処分の重さや適用基準。重すぎる処分は無効になることも

そもそも、セクハラの加害者に対し企業が下すことになる処分や適用基準は、法的な根拠に基づいているものなのだろうか?

渕山さん「セクハラを法的に規定した『男女雇用機会均等法』に基づき厚生労働省が定めたセクハラの指針では、会社側に対し、セクハラ加害者への適正な懲戒処分方針を就業規則内に定めることを求めています。しかし、懲戒処分の具体的な内容や基準が規定されているわけではなく、実際の処分方針は、会社側の判断に委ねられているのが現状です」

つまり、会社ごとに懲戒処分の内容や基準を自由に決めてよいことになるわけだが、安易に厳罰を加えることが、法律に触れる恐れもあるという。

労働契約法第15条では『客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする』と定められています。つまり、事案の内容に対して重すぎる懲戒処分は、それ自体が無効となり得るわけです。そのため、懲戒処分は、重すぎず軽すぎない妥当な処分にしないといけません」

具体的なセクハラの内容に加え「5つの選択基準」が処罰の内容を決める

渕山さんによると、会社が懲戒処分の内容を決める際には、国家公務員のセクハラに対する懲戒処分の内容を定めた人事院規則や、今までの判例を目安にするしかないという。そもそも判断が難しいセクハラにおいて、具体的にどのような点が重要視されるのだろう。

渕山さん「いままでの裁判例からみても、最も重要視されているのが『セクハラ行為の内容』です。身体接触のないセクハラ(卑猥な言動、男女関係を迫るなど)、暴力や脅迫を伴わない身体接触のないセクハラ(肩を抱く、お尻を触るなど)、暴力や脅迫を伴うセクハラ(強引にキスをする、押し倒して性行為を迫るなど)の3つケースで処分の傾向が大まかに分かれます。

それに加え下記の5点が考慮されて総合的に判断されて処分が決まります。

1.セクハラ行為の頻度や期間
長期間に渡ってセクハラ行為を行っていた場合は処分が重くなります。反対に、常習性がないと判断されると処分が軽くなるケースもあります。

2.セクハラによる懲戒処分歴
過去にセクハラの処分歴があった場合は、処分は重くなります。

3.職務上の地位や関係
上下関係を利用したセクハラ行為は悪質です。また、従業員を監督し、セクハラを防止する立場である役職者のセクハラもそれだけで処分が重くなります。

4.被害者の数
セクハラ被害を受けている人が社内に多ければ、それだけ処分が重くなります。

5.謝罪の有無
反省の態度が見られない場合は処分が重くなります。ただ、謝罪をすればただちに処分が軽くなるというわけではないので注意してください」

裁判例では、セクハラ内容に対して重い処分が有効とされたケースも

上記のポイントを考慮した上で、実際にどのような懲戒処分が下される場合が多いのかを、内容別に解説してもらった。

渕山さん「『身体接触のないセクハラ』では、初回であったり、程度が軽いものであれば、口頭で注意する程度で処分ナシのケースが多いようです。懲戒処分をしたとしても戒告・譴責(文章で注意をしたり、始末書の提出を求めるだけの軽い処分)が妥当でしょう。ただし悪質なケースの場合には、出勤停止あるいは降格処分になった事例もあります。実際に男性上司が女性部下に1年ぐらいにわたって下ネタを言い続け、会社から出勤停止の懲戒処分が言い渡されたケースでは、裁判所も有効と判断しました。

『暴力や脅迫を伴わない身体接触のあるセクハラ』では、出勤停止や降格といった処分が妥当です。常習性がなく加害者も反省しているようなケースでは、場合によっては処分ナシとして注意する程度にとどめるか、懲戒するとしても戒告・譴責程度に留めるべきでしょう。

『暴力や脅迫を伴うセクハラ』では、強制わいせつ罪となり刑事事件にもなりうる事例なので、基本的に懲戒解雇、軽くても降格や長期出勤停止といた処分になります。

上記はある程度の目安はありますが、懲戒処分の選択基準はケースバイケースであり、複雑なのも事実です。特に懲戒解雇相当の事案では、あらゆる事情を考慮して判断することになるでしょう」

最後にアドバイザーからひと言

「どのようなセクハラ行為をした場合にどの懲戒処分が下されるかは、就業規則には必ず記載されています。自分の会社がセクハラに対してどのような処分をするのか気になる男性は、就業規則を一度確認してみましょう」

Text by Katsuya Hokonoki(Seidansha)
Edit by Kei Ishii(Seidansha)