メディア個別 知られざる“東京の地産地消”でもてなす──銀座「数寄屋橋えどわん」 | editeur エディトゥール

editeur

検索
第26回 | 酒?料理?個室?目的別の接待の切り札店

知られざる“東京の地産地消”でもてなす──銀座「数寄屋橋えどわん」

地産地消という言葉に注目があつまる昨今。東京で接待をするのであれば、東京にこだわった店を選ぶというのもひとつの手だろう。まだあまり知られていない東京の味覚を世界へと発信する…そんなコンセプトの店が、銀座駅から徒歩1分の場所にある「数寄屋橋えどわん」だ。

店名のイメージを良い意味で裏切る高級感あふれる店内&個室

暖簾のかかった外観は、純和風の佇まい。店のコンセプト、そして「江戸」が入ったその名からして店内もいかに和風、江戸風なものを想像しているとそこは良い意味で裏切られることになる。照明の落とされた店内は、和風というよりもクラブ、ラウンジ風。確かに、ところどころ「和」を感じさせる箇所もあるが、あくまで控えめ。代わりに目につくのが、客席間の余裕あるスペースだ。もちろん、奥には接待にぴったりな個室もあるが、この贅沢な空間の使い方が何より高級感を漂わせている。

ところで、そもそもなぜ食材産地の印象が薄い「東京」をコンセプトにした店を作ろうと思ったのだろうか。

「もともと、鰹節のにんべんさんなどの老舗が集まる日本橋に母体となる店がありまして。その店が、そうした日本橋の老舗の素材を使った『日本橋の良さを広める日本橋の店』というコンセプトでやっているなか、さらに『東京の良さを広める東京の店』をやろうじゃないかと考えてこちらの店を出すことになりました。
しゃぶしゃぶ、おでんを始め料理のベースとなる出汁には、にんべんの鰹節を使用。米は八王子産の東京米をブレンドしたものを使用し、醤油は都内唯一の醤油工場、近藤醸造のキッコーゴ丸大豆醤油を用意するといった具合に、東京産の素材を積極的に取り入れています。毎日仕入れる旬の鮮魚は、その魚にあった調理法でご提供。厳選した日本酒は銀座随一の品揃えだと自負しております」(店長の池田さん)

口の中で溶ける極薄削りの鰹節

なんと、この店では「にんべんの鰹節」が椀ものとともに提供されるお通しにもなっている。

それも、店内の専用機械で削った0.01mmの極薄削り節なのだ。JASの定義では薄削りは「削り節を厚さ0.2mm以下の片状に削ったもの」とあり、一般的には薄くても0.04mm程度というからどれだけ薄いかがわかるだろう。

「この薄さを維持するには、機械の刃の調整や整備が大変なんですけどね。これだけ薄くすることで、カツオ節が溶けてなくなる感じを楽しんでいただくことができるんです」

液体のものが固まったわけでなし、そんなバカなと思いながら試してみた。質は良くとも味は当然ながら鰹節のもの。しかしそれが確かに、口の中で溶けるようになくなる。確かにこれは、旨いだけでなく“楽しさ”を伴う感覚である。

この鰹節は、なんと食べ放題。出汁巻卵、おでん、サラダ…と、他のメニューに各人好きなようにかけて食べることができる。このように店のこだわりの一つが鰹節であり、ほかに宗田節、鯖節、日高昆布、さらに乾燥椎茸の旨味を足した出汁。その自慢の出汁を味わうには、もう一つのこだわり東京の地域特産豚肉であるTOKYO Xも楽しめる「出汁しゃぶ鍋コース」(5000円)がオススメだ。

前菜、お造り、揚げ物、焼肴、鍋、締めの蕎麦、甘味の7品で構成されるこちらのコース(写真はイメージ。月ごとに内容は変わる)。焼肴と鍋はセットで考えらえており、魚系の焼肴(取材時は寒鰤照焼とおでん大根)には鍋がTOKYO Xの出汁しゃぶ鍋に。焼肴をTOKYO Xの肩ロース肉炙り焼きにした場合の鍋は魚系(取材時は寒鰤の出汁しゃぶ鍋)となる。今回は焼肴に寒鰤照り焼きとおでん大根、鍋にTOKYO Xの出汁しゃぶ鍋を選んでいただいてみた。

鰹×豚。味わいの変化も楽しい、TOKYO Xの出汁しゃぶ

鰤に大根とくれば、普通は一緒に炊き合わせた「鰤大根」となるところ。そこをあえて出汁がしみたおでん大根に、鰤の照焼を載せるというスタイルにしているところが面白い。鰤は旨味を凝縮したまま、大根は鰹の出汁を十分に吸ってなお、ほどよい歯ごたえを残している。間違いなく、日本酒が進む味だ。さてメインとなるのが出汁しゃぶ。まずは(通ぶって)、出汁だけを味わってみた。しっかりとした出汁ではあるが、後味はすっきり。いつまでも口に残ることはない。

そこに入れるのが、TOKYO Xの薄ピンク色の肉。きめ細やかなサシが食べる前から食欲をそそるが、先ほどの出汁にくぐらせれば、それはもう旨いに決まっていた。柔らかく、旨味のある肉がカツオの出汁を纏って絶妙の味わいに。なお、アクセントとなっているシャキシャキとした野菜も江戸菜(小松菜の改良品種)などの東京生まれの野菜を使っている。

そうして食べ進めるうちに、当初はあっさりしていた出汁もTOKYO Xの旨味、脂が徐々に加わりだんだん濃厚になっていく。出汁が旨味のピークを迎えた頃、そばをくぐらせて締め。満足度は高い。

「東京の味覚を世界に発信する」。こうしたコンセプチュアルな試みも、それがゴリゴリになるほどどこかコミカルな感じにもなってしまうもの。しかし、この店は店内の演出にしろ料理にしろ、あくまでさりげない範囲にとどまっているのがポイントといえよう。変化球でもなく、王道ともちょっと違う。こんな店も接待の候補に入れておきたいものである。

Text by Masayuki Utsunomiya
Edit by Kei Ishii(Seidansha)

店舗情報
数寄屋橋えどわん
住所 東京都中央区銀座5丁目1番7号 数寄屋橋ビルB1F
営業 17:00〜24:00(L.O.22:30)
休み 日、祝(連休の場合最終日が休み)

editeur

検索