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- 部下のタイプ別!上司向けストレスの向き合い方 -

【部下へのストレス】やる気のない部下に主体性を持たせるには

仕事のやり方・進め方はすべて伝えた。あとは、本人がやる気さえ出してバリバリ仕事をこなせばもっと評価できるのに。いつまで経ってもやる気を出さないように見える部下に、やきもきしている上司世代も少なくないのではなかろうか。

いつまで経っても主体性がない部下と、自発的な部下。この両者の違いとは?『モチベーションの新法則』(日経文庫)などの著書をもつ、心理学者の榎本博明さんに話を伺った。

■今回のアドバイザー
MP心理学研究所 代表/心理学博士
榎本博明さん

東京大学教育心理学科卒業後、東芝市場調査課に勤務。その後カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授などを経て現在に至る。心理学を基礎とした企業向けの研修や教育講演を行い、著書に『「上から目線」の構造』『薄っぺらいのに自信満々な人』『「やりたい仕事」病』など多数。

自己効力感が強い部下ほど主体的に行動する

放っておいても主体的に仕事に取り組み、どんどんと仕事の結果を出す部下と、放っておくと担当範囲や依頼されたことしかやらず、プラスアルファの結果を出さない部下。同じ時代、同じような価値観の下で育ってきた両者にはどんな違いが?

「自己効力感の違いが上げられるでしょう。『自分はやればできるのだ!』と思える人ほど思いを行動に移しやすく、難易度の高い課題にも主体性を持って動けるのです」(榎本博明さん、以下同)

では、自己効力感を高めるためには? 榎本さんいわく、これには成功体験が必要となるそう。自分で難しい課題に取り組み、それを成し遂げた。その体験が自信となり、主体性の素となるという。

「ですので、彼らに自己効力感を身につけさせるためには、まずできそうな課題を与え、だんだんと課題の難易度を高くしていくことが必要です」

主体性がない部下を増長する日本の誤った母性原理

だんだんと主体性を持たせるアプローチについては良く分かった。しかし、こうした主体性のない部下が主体性を持つまで地道に育て上げるのは時間がかかる。スピード感のある職場の場合、こうしたマネジメントを行う時間がないということも多そうだ。

厳しい視点だが、こうした部下には負担にならない相応の業務を任せておき、やる気のある部下を育てた方が組織全体が効率化するのではないか…と思うのが上司のホンネだが。

「それはまったくもってそうでしょう。とはいえ、父性原理の欧米社会に対し、日本は母性原理。褒められない人も育てていくことが、ある種の日本流なのですが、主体性のない部下が増える要因にもこの母性原理が大きくかかわっているように思います」

母性原理とは、我が子を包み込み育てていくような考えのこと。母と子の心理的距離が近しいため、言葉で愛情や思いを伝え合わなくとも、気持ちはつながっているという関係性のこと。

対し、父性原理は親と子を切断し、独立した存在として育てていくような考え。この場合は親子の心理的距離は遠いため、言葉で愛情や思いを伝える必要がある。

母性原理が強く働く国では、いちいち褒めたり励まさなくとも良いはずが、いつからか、声に出して褒めて育てることが良いという風潮になってしまった。そのことが、褒められ慣れている若者を増やし、褒められなければ動かない若者も増やしている。主体性がない若者が生まれる背景には、日本の教育原理が影響している。

「褒められると伸びるタイプと自分で明言することは、レベルの低さを伝えているようなものです。主体的に取り組んでいる人は、褒められなくてもやっているでしょう」

部下に主体性を持ってほしければ、過剰に褒める・激励することはかえって逆効果。明確な課題を与え、だんだんとステップアップさせていくこと。地道にじっくり向き合おう。

Text by Daisuke SUZUKI(KOUMUTEN)