鈴木理策(Risaku Suzuki)
- 40男のメモリーズ -

写真を通して世界と出会う

桜や雪景色、熊野の深い森の風景などを撮影した作品で知られる写真家の鈴木理策。意図的で作為的な要素を徹底して取り除き、あるがままの世界を撮影しようと試みる。作品制作の方法論に続くインタビューの第2回では、「見る」行為と写真の関係について話を聞いた。

鈴木「人は普段、何かを見るときに、必要なものだけを手に入れようとします」 例えば山道を歩いていて、一輪の花が目に入ったとしよう。 おそらく多くの人が、「綺麗な花が咲いている」と感じるはずだ。 そのとき、意識は「綺麗な花」のみに向かっていて、「山道の土の表面と背景となる森の緑とのバランスが素敵」と考えることはまずない。 見る行為とは、脳が瞬間的に「綺麗な花」にフォーカスすることでもあるからだ。 鈴木理策(Risaku Suzuki) Étude 10,F-8 (2010) 鈴木理策(Risaku Suzuki) 海と山のあいだ 10,NR-1 (2010) 鈴木「私には、そこに抗いたい気持ちがあります。大きく引き伸ばしたプリントを展覧会で展示するのは、見るためにある程度の時間を費やしてもらいたいと考えているからです。ピントの合っていない部分を敢えて見せられると、落ち着かない気分になりますよね。見えないから。そうすると目線がさまよい、画面の上をなぞります。目がフォーカスの合った場所をとらえると、“見えた”という経験が生まれるわけです」 鈴木理策(Risaku Suzuki) 海と山のあいだ 14,DK-277 (2014) 鈴木理策(Risaku Suzuki) 水鏡 14,WM-72 (2014) 瞬間的に、また主観でとらえている世界だけが、世界ではない。 目で見ている世界と、写真に写る世界とのありようが異なるのは、人間の目が効率的で、情報処理能力が高いことに由来する。 鈴木「見るプロセスは大事なものだと考えています。人は何かを見て、言葉で了解してしまおうとするところがありますが、何かを見て瞬間的に理解し、納得してしまうだけではつまらないですよね。見る行為を通して時間の流れに気づくことができないか、写真にはその可能性があると考えています」 「Sekka」鈴木理策(Risaku Suzuki) 映像作品≪Sekka≫より (2014)

 Text by Ryohei Nakajima

Top Image: SAKURA 14, 4-33 (2014) all images:(C) Risaku Suzuki / Courtesy of Gallery Koyanagi