鈴木理策(Risaku Suzuki)
- 40男のメモリーズ -

移ろう自然を撮影する方法

桜や雪景色、熊野の深い森の風景などを撮影した作品で知られる写真家の鈴木理策。2000年に「写真界の芥川賞」と称される木村伊兵衛写真賞を受賞し、「見る」という行為の本質を考察させる作品が国内外で評価される彼にインタビューを敢行。2回に分けて紹介する。その第1回では、撮影のプロセスを語ってもらった。

和歌山県の熊野で生まれ育った鈴木理策。 山岳信仰の聖地であり、緑深い熊野の風景を20年以上にわたって撮影し続けてきた。 長年通い、熊野の山の神聖さを伝えたいのか。 鈴木が熊野を撮り続ける理由は、そんな単純な話ではない。 鈴木理策(Risaku Suzuki) 海と山のあいだ 14,DK-265 (2014) 鈴木理策(Risaku Suzuki) 海と山のあいだ 14,DK-377 (2014) 鈴木「どこを歩くと何が撮れるか、ということはもちろん熟知しています。しかし、ある瞬間にある場所で見た風景とは、2度と出会うことがない。その瞬間にしかない時間の流れが生まれ、その都度違う経験として、新しい風景として現れてくる」 「自分がその瞬間に向き合っている景色を、隣に置いたカメラに『頼むよ』と言って撮ってもらうような感覚で撮影します。撮影者である自分の視線を消すことで、自分の意思が介在せずに存在しているその風景を写真が見せてくれると考えています」 鈴木理策(Risaku Suzuki) SAKURA 14,4-33 (2014) 鈴木は多くの作品を大判フィルムを用いた大型のカメラで撮影する。 自分が見た風景が収まるように三脚を装着したカメラをポンと置き、さっとピントを合わせ、ファインダーを長く覗き込んで構図を丁寧に作り込むことはしない。 フレームを決めて画面を作り込むことが目的なのではなく、そこにある世界を写真に収めるために撮影をするからだ。 海外での撮影も多く行っているが、日本で何かを撮影するときには、自らが日本に生まれて育まれた感性が反映されているのかもしれないと語る。 鈴木理策(Risaku Suzuki) Étude 14,F-517 (2014) 鈴木「アジア全般に言えることですが、自然が圧倒的に豊かですよね。豊かな自然は、同時に脅威ももたらしますが、四季がある日本は恵み豊かな国だと思います。文化や宗教は、やはり土地の自然観と密接に結びついていて、砂漠のような過酷な環境だと、奇跡も待つでしょうし、神との契約もするかもしれない」 「でも日本の自然観はそうではないですよね。雪は冬が終わると消えてしまいますし、春に咲く桜は、本当に綺麗な姿は半日ぐらいしか続かない。やはり撮影する際には、そうした対象に興味を持ちます。ただ、雪や桜を題材に“こういう画を作ってやろう”とは思わず、雪や桜のある風景と“出会うために”撮影に行く。私にとっての撮影は、ある景色との一期一会のようなものだと言えるかもしれません」 自分が見ている世界と、写真に写る世界とは決して同じではない。 その考え方が、自分の意思を介在させず、世界のありようをそのままに撮影する方法論の模索の原動力となった。 インタビュー第2回目では、「見る」行為と写真の関係について話を聞いた。 鈴木理策(Risaku Suzuki) 水鏡 14,WM-60 (2014) 「火の記憶」鈴木理策(Risaku Suzuki) 映像作品≪火の記憶≫より (2014)

Text by Ryohei Nakajima

Top Image: SAKURA 14, 4-33 (2014) all images:(C) Risaku Suzuki / Courtesy of Gallery Koyanagi