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- 投資対象としての現代アート入門 -

投資対象となる現代アート。購入法や税金などの注意点は?

投資の対象として、世界的に関心が高まっている「アート」。そのなかでも、作品の価格帯や価値が高まる可能性から、個人の投資対象として魅力的とされているのが「現代アート」の領域だ。この記事では、これまでアート作品を購入した経験のないビギナーに向け、現代アート作品の購入法や注意点を紹介する。

まずは多数のギャラリーが出展する「アートフェア」へ足を運んでみよう

日本人にとって、絵画や彫刻といったアート作品は美術館で鑑賞するものというイメージが強いはず。そのため、アート作品を購入すると言っても、どこで、どのように買えばいいのか見当がつかない人も多いのではないだろうか?

「アート作品は、いわゆる『ギャラリー(画廊)』で購入するのが基本となります。銀座や六本木にあるギャラリーの外観から『一見客は入りにくい』、『何か買わないと帰りにくそう』と思ってしまう人が多いかもしれませんが、興味を持ってくれるお客様に対しては、どのギャラリーも歓迎してくれるはずです。アートに触れる勉強も兼ねて、まずは近くのギャラリーに足を運んでみて、できれば積極的に質問してみることをオススメしますよ」

というのは、アートコレクションのコンサルタントとして活躍する三井一弘氏(ミツイ・ファイン・アーツ代表)。それでもギャラリーに入ることに気後れを感じるのであれば、まずは大規模な会場で開催されるアートフェアに出向くと良いともアドバイスする。
「ギャラリーに苦手意識があるなら、まずはアート作品売買の現場を知る意味でも、毎年開催される『アートフェア東京』(メイン写真/2018年は3月9日~11日に東京国際フォーラムで開催)に足を運ぶと良いでしょう。160以上のギャラリーが出展しているので、いまマーケットにどのような現代アートを含めた様々なジャンルのアート作品が出回っており、どれくらいの価格で販売されているのかを知るには絶好の機会です。また会場の雰囲気も良く、ここに訪れるお客さんは初心者の方も多いのでギャラリー側も、とてもフレンドリーに接してくれます」

ここで大事なことは、アート作品を鑑賞しに行くのではなく、買いに行くという視点からアート作品に触れることだと三井氏。

「そうすることで作品を見る目が厳しくなりますから。やがて、ブースを巡っているうちに、自分の好みに合った作品を多く扱っているギャラリーを見つけることができるはず。そのギャラリーのオーナーと話をして意気投合したら、次は実際にその人のギャラリーに行くというように、人とのつながりを作っていくのが、もっとも安心な手順かもしれません。気が合う人であれば、趣味も似ているでしょうから、自分の好みに沿う作品に出逢う確率も増えますし、気持ちよく作品を購入でき、新たな世界が開けると思いますよ」

投資対象としての現代アート作品を選ぶなら「コマーシャルギャラリー」がオススメ

投資対象として現代アートを購入するのであれば、ギャラリーの選び方も重要。三井氏によれば、世界的に注目度の高いアーティストの作品や、その予備軍に位置するアーティストの作品を購入したいなら、海外に向けて広報活動も行っている「コマーシャルギャラリー」に注目すべきという。

「90年代、日本のバブル経済が崩壊して国内の株式、土地、ゴルフ会員券とともに絵画の価値も暴落しました。とはいえ暴落した絵画の多くは、国内では巨匠といわれる作家たちの作品で、マーケットが国内に限られていたため暴落してしまったのです。世界で認められているモネやピカソやウォーホルの作品はたとえ再び日本経済が崩壊しても、その価格は暴落しないでしょう。その教訓から現在、現代アートを取り扱うコマーシャルギャラリーでは、そのような海外で通用する作家を育てるべく活動をしているのです」

なかでも、コマーシャルギャラリーのPRの場として、もっとも大事な機会が年間で100件ほど開催されているアートフェア。ロンドンやニューヨークで開催される『フリーズ』や、パリで開催される『パリ・フォト』、また世界最大級の現代アートフェア『アート・バーゼル』に出店しているようなギャラリーが要チェックだと三井氏は話す。

「村上隆や奈良美智、草間彌生など海外でも評価が高いアーティストは、こうしたギャラリーの広報活動によって名前を知られていったんです。
アート・バーゼル香港の模様(三井氏提供)
日本での現代アートのコマーシャルギャラリーで代表的なところは、スカイ・ザ・バスハウス、タカ・イシイギャラリー、オオタファインアーツ、ワコウ・ワークス・オブ・アート、小山登美夫ギャラリー、マホ・クボタギャラリー、タケ・ニナガワ、MEMのほか、寺田倉庫が手がける『TAC GALLERY SPACE』に入っている山本現代、ユカ・ツルノ・ギャラリー、児玉画廊、URANO、などがあります」
展示風景:ホセ・パルラ “Small Golden Suns”(ユカ・ツルノ・ギャラリー/撮影:加藤健)
ただし、アートを投資対象としてしか考えないような購入の仕方では、結局“損”をしてしまうとも。

「みなさんに質問です。『ダビデ』の作者ミケランジェロが活躍した時代と、『考える人』の作者ロダンが活躍した時代との間で思い浮かぶ彫刻家の名前を何人言えますか? もし5人の名前を挙げることができれば、あなたは立派なアートファンと言えますが、この間は約300年あり、その大多数は淘汰されてきています。たとえば数億円クラスの作品ならともかく、数百万から数千万程度の作品が多い現代アートでは、価値が高まる期待も大きい分、金銭的には期待外れの結果に終わることも十分あるということ。だからこそ、アートに対する関心を高め、まずは自分が『好きだ』と思える作品を選ぶのが重要。愛着がある作品であれば、所持しているだけで幸福が得られるわけですからね。投資対象として考える場合でも『安定した資産価値対象』『価値の上昇が望める投機対象』『趣味として楽しめる対象』を切り分け、バランスよく収集すると良いでしょう。そのためにも、複数のギャラリーやアートディーラーとお付き合いすることをオススメします」

固定資産税が不要な点が魅力。100万未満の作品は減価償却の対象にも

資産の購入や管理といえば、やはり気になるのが税金の問題。また、特殊な商品というイメージがあるアート作品だけに「分割払いは可能?」といった、素朴な疑問を持つ人もいるだろう。そこで、アート作品の購入に関して、覚えておきたい“お金回り”の基礎知識を聞いた。

「決済の方法はギャラリーごとに異なりますが、現金またはクレジットカードの一括払いというところが多いですね。なかにはローンが組めるギャラリーもあるので、購入の前に相談してみると良いでしょう。ギャラリーとの間に信頼関係ができれば、ローン会社を通さない形での分割払いに応じてくれる場合もあります。ただし、この場合には通常、全額支払い終わったところで作品を受け渡すケースが基本なので注意してください。しかし作品が届く間もどこに飾るかウキウキするのも楽しみのひとつですね」
マネキン(平行)12-2(Keisuke Sugimoto,2014) 写真提供:株式会社モーメント / 協力:児玉画廊
購入後に気になるのが税金の問題だ。この点に関しては、不動産に比べ資産としてのメリットが大きいという。

「不動産の場合は不動産所得税のほか、毎年の固定資産税がかかりますよね? しかしアート作品は動産なので購入時に消費税がかかるだけで、固定資産税の対象にはなりません。また、経営者が100万円未満のアート作品を購入した場合、減価償却の対象にできるのもメリットといえるかもしれません。これは、文化庁が若いアーティスト支援を積極的に行っていることに関連する税制。これによって、100万円未満の作品の売れ行きが好調になっているんですよ」

100万円クラスの作品に“ディフェンシブな資産”としての価値を望むことは難しいが、一方で、今後いわゆる“大化け”する可能性を秘めているのも事実。モネもピカソもウォーホルの作品も、初めは数十万円程度の価格から始まっているからだ。節税対策をしながら、若いアーティストの支援ができ、しかも将来大きな利益を生む可能性があるのなら、経営者にとっては耳寄りな話ではないだろうか。

Text by Tamotsu Narita
Edit by Kei Ishii(Seidansha)
Photo by Kazushige Mori
Main photo:(C)Art Tokyo Association

取材協力:ユカ・ツルノ・ギャラリー http://yukatsuruno.com