ビヨンセ(Beyoncé)
- 美しく輝く世界のディーバたち -

音楽の祭典で、美しく輝いたディーヴァたち

白いシースルーのロングドレスを羽織ったビヨンセが、後ろに従えた男たちと共に片手を前に差し出した瞬間、第57回グラミー賞授賞式の会場となったロサンゼルス、ステイプルズ・センターはフィナーレを迎えたかのような歓声に包まれた。

この時、彼女が歌ったのが、彼女の母がオリジナルのマヘリア・ジャクソンの歌をよく聴いていたという「プレシャス・ロード」(Take My Hand, Precious Lord)だ。 この曲は、グラミーが今年のテーマの一つとして掲げた「公民権運動」の父でもあるマーティン・ルーサー・キング牧師の告別式でマヘリアが歌った曲。1965年の「血の日曜日事件」と当時のキング牧師を描いた映画『セルマ』(2015年1月全米公開)では、R&Bシンガーのレディシーが歌って話題となった曲でもある。 ピープル誌によると、同ゴスペルはビヨンセにとってとても印象深い曲だという。 ビヨンセ「初めてこの曲を聴いたのは、まだ子どもの時だった。母が私に歌ってくれたの。目を閉じて歌う彼女は、まるで神様が乗り移ったようだった。神様が彼女を通して話し、歌い、そして癒やしている感じがした。私の祖母はキング牧師と一緒に行進した人。父は、白人だけの学校に初めて通った最初の黒人世代。父は様々な経験によるトラウマを抱えて育ったの」 utahime1 両親への想いを胸に「プレシャス・ロード」を歌ったビヨンセ (C)Frank Micelotta / PictureGroup / ゼータ イメージ 今年のグラミー賞のラストは、ビヨンセの紹介で、『セルマ』の主題歌「Glory」を同世代のジョン・レジェンドとコモンが堂々と歌い上げた。アメリカで公民権法が制定され、法律上での人種差別が撤廃されてから、昨年で50年。新世代の黒人ミュージシャンたちが高らかに歌った自由と勝利のテーマは、世界の人々の胸に沁みた。 このパフォーマンスでも評価を得たビヨンセは、本年度最多の6部門にノミネートされていた賞レースでも、最優秀R&Bパフォーマンス賞、最優秀R&Bソング賞、最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞の3冠を獲得。グラミー史上最多ノミネート女性アーティストとしての貫録を見せつけた。  ビヨンセ(Beyoncé) 3冠を獲得したビヨンセは、今年の主役の一人だった (C) Frank Micelotta / PictureGroup / ゼータ イメージ ただ、ビヨンセだけでなく、今年のグラミー賞は、女性アーティストたちが注目された年だったともいえるだろう。 年間最優秀レコードのノミニー5組(イギー・アゼリア、シーア、テイラー・スウィフト、メーガン・トレイナー、サム・スミス)は、受賞したサム・スミス以外は、全て若い女性ファンを中心に昨年ブームを巻き起こした女性ミュージシャンだった。 授賞式のパフォーマンスでも女性陣は大活躍。MVで注目を浴びた12歳の少女ダンサー、マディー・ジーグラーのダンスのバックで、シーアは壁に向かって客席に背を向けたまま年間最優秀レコード&年間最優秀楽曲のノミネート曲「シャンデリア」を歌い話題に。また、熱いパフォーマンスのラストに大勢の男性ダンサーに崇められながら宙に消えていったマドンナも、その復活を印象づけた。 マディー・ジーグラーとシーア パフォーマンスで観客の視線を釘付けにした。 マディー・ジーグラー(左)とシーア(右) (C)Scott Kirkland / PictureGroup / ゼータ イメージ マドンナ(Madonna) マドンナは歌い終わると宙に消えていった。 (C)Frank Micelotta / PictureGroup / ゼータ イメージ ただ、ビヨンセを除く、女性ミュージシャンが賞レースで、中々結果を残せなかったのも、今年の特徴だ。 大ヒット曲「シェイク・イット・オフ~気にしてなんかいられないっ!!」で主要2部門を含む3部門にノミネートされていたテイラー・スウィフトは無冠に終わり、マイリー・サイラス、アリアナ・グランデ、ケイティ・ペリーと人気女性アーティストが名を連ねた「最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム」も、今年の主役サム・スミスの『イン・ザ・ロンリー・アワー』に当然のごとく奪われる結果となった。 テイラー・スウィフト(Taylor Swift) 音楽界のファッションアイコン、テイラー・スウィフトは受賞を逃した。 (C) Scott Kirkland / PictureGroup / ゼータ イメージ 新進気鋭のR&Bシンガー、サム・スミスが制した、華やかなる音楽の祭典は幕を下ろした。ただ「受賞を逃したディーヴァたちは、今後どのように盛り返していくだろうか?」そんな新しい楽しみも生んだのが、今年のグラミーだった。

Text by Junichi Akiyama

Top Image: 「プレシャス・ロード」熱唱後、ビヨンセは客席に向かって神に導かれるかの如く左手を差し出した。同ゴスペルは、キング牧師が行進でよくマヘリア・ジャクソンに歌ってもらい、人々を勇気づけた曲だった。 (C)CBS / XPOSUREPHOTOS.COM / ゼータ イメージ