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- 相談しにくいセクハラ・パワハラ対策【初級編】 -

“自分に好意がある”は勘違い!「疑似恋愛型セクハラ」に要注意

仕事上の尊敬を恋愛感情と勘違いして、性的な行為を求めてしまうのが「疑似恋愛型セクハラ」。仕事ができる男性ほど陥りがちになるとも言えるだろう。疑似恋愛型セクハラの詳細と注意点を、セクハラ問題に詳しい、山田秀雄弁護士に聞いた。

■今回のアドバイザー
弁護士 山田・尾崎法律事務所(代表)
山田秀雄さん

慶應義塾大学法学部卒・筑波大学大学院経営政策学部企業法学専攻科修終了。第二東京弁護士会会長及び日本弁護士連合会副会長を歴任。専門はリスクマネージメントの観点から、企業法務全般、セクハラ、パワハラ対策、企業対象暴力等々。『セクハラ防止ガイドブック』(日経連出版部編 共著)、『女は男のそれをなぜセクハラと呼ぶか』(KADOKAWA)、『弁護士が教えるセクハラ対策ルールブック』(日本経済新聞出版社 共著)など多数の著書がある。

「上司の思い込み」「断りきれない部下」という齟齬が生む疑似恋愛型セクハラ

職場での「疑似恋愛型セクハラ」が急増しているという。じつは、この言葉は山田弁護士が考案したものだ。具体的にはどのようなセクハラを指すのだろうか?

山田さん「『疑似恋愛型セクハラ』とは、上司が部下に対して一方的な恋愛感情を抱き、地位を利用して性的な誘いかけを行うことです。典型的なのは、部下と2人で食事などに行き、自分に好意があると勘違いした上司がキスや交際を迫ったりするケース。仮に地位を利用する意図がなかったとしても、これはセクハラにあたります。

上司との食事は、部下にとってあくまで『仕事上の付き合い』であり、その誘いを断るには勇気が必要。一方、上司側は、食事の誘いをOKしてくれたり、『また誘ってください』などと曖昧な断られ方をしたりすることで、『自分に好意がある』と勘違いし、さらに親密な関係になろうとする。この双方の気持ちの齟齬が疑似恋愛型セクハラの特徴といえるでしょう」

疑似恋愛型セクハラで人生を台無しにしてしまった北米トヨタ自動車セクハラ事件

そう聞いても「自分は違う」と思うかもしれない。しかし、山田弁護士によれば、現実に多くの上司世代が「疑似恋愛型セクハラ」によって地位や収入を失っているという。

山田さん「代表的なのが、2005年にアメリカで日本人男性が起こした『北米トヨタ自動車セクハラ事件』でしょう。当時の北米トヨタの社長が、社長秘書を務めていた女性に好意を抱き、食事や美術館に何度も誘いました。さらに、女性にキスを求めるなど行動がエスカレート。そこで、たまりかねた女性が日本円にして215億円もの損害賠償を求める訴訟を起こしたのです。結局、男性は北米トヨタの社長を辞任しました。

これは双方の気持ちに齟齬があったケースですが、このほか、最初は合意の上で恋愛や不倫関係にあったのに、破局後に相手からセクハラで訴えられるケースもあります。この場合も、裁判になれば上司側にまず勝ち目はありません。

セクハラで訴訟を起こされると、数十万円から数百万の損害賠償金を求められることになります。特に、表沙汰になることを嫌って示談で解決しようとすると、賠償金がより高くなる傾向が。なかには、加害者の上司が1500万円という示談金を支払ったケースもあるほどです」

会社組織では「上司の誘いに部下が心から同意することはない」と肝に銘じるべし

では、疑似恋愛型セクハラで人生を台無しにしないためにはどうすればいいのか? その点について、山田弁護士は「安易に部下を誘わないほうが無難」と指摘する。

山田さん「ほかのセクハラ訴訟と同様に、いくら上司側が裁判で『同意の上だった』と主張しても、証明することは難しく、上司側は圧倒的に不利です。最も有効なのは、セクハラでトラブルになるような状況を未然に防ぐこと。会社という上下関係のある組織のなかでは、『上司側の誘いに部下が心から同意することはない』と思ったほうが身のためです。

社内恋愛が悪いとは言いません。しかし、セクハラ問題で身を滅ぼさないためには、安易に部下を『恋愛対象』と見ることは避けることをオススメします」

最後にアドバイザーからひと言

「セクハラ訴訟を起こされるなどのトラブルになったときに、身の潔白を証明するのが難しいので、上司は部下を恋愛対象にしないほうが賢明です」

Text by Shogo Fuse(Seidansha)

Edit by Kei Ishii(Seidansha)