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第11回 | マクラーレンの最新車デザイン・性能情報をお届け

蘇る音速の貴公子──マクラーレン セナ、ここに降臨

アイルトン・セナ・ダ・シルバ。1980年代後半から90年代前半に青春時代を送ったカーガイにとって、この名は特別な意味を持つ。彼は、F1レーサーとして162回のレースに出場し、41回の優勝を飾り、3回のタイトルを手中に収めた。F1ブーム当時の日本での通り名は「音速の貴公子」。4つのチームでキャリアを重ね、特に88〜93年のマクラーレン在籍時は絶頂期となった。チームは4度のチャンピオンに輝き、88年には16戦中15勝を記録。その神がかり的な走りはファンを魅了し、後世に強い記憶を残した。悲劇は突然訪れる。94年、34歳の若さで天に召されたのだ。サンマリノGPが開催されたイモラサーキットの高速コーナー「タンブレロ」での悲劇だった。あれから20年以上、一台のクルマの登場が当時の記憶を呼び起こしてくれた。マクラーレン『セナ』である。

究極のサーキット仕様、公道も走行可能なマクラーレン史上最強のロードカー『セナ』

マクラーレン『セナ』。世界最速にして最高のドライバーと称される「アイルトン・セナ」の名を冠したクルマ。かつて、これほど開発に重圧がかかる車名があっただろうか。

しかし、マクラーレンがセナの名を使ったことこそが、究極の一台を生み出せた自信の表れなのかもしれない。

『セナ』は、マクラーレンが展開する3つのラインナップ「スポーツシリーズ」「スーパーシリーズ」「アルティメットシリーズ」のうち、最高峰に位置する「アルティメットシリーズ」の新モデルだ。

究極のサーキット仕様モデルでありながら、公道での走行も可能。いわく「マクラーレン史上最も究極な性能を持つロードカー」だ。

「フォルムは機能に従う」という哲学が生んだマクラーレン『セナ』のエクステリア

スペックを見ずとも、その猛々しい外観からはオーラが漂っている。「このクルマは尋常ではなく速いはずだ」と感じさせる。それは、「フォルムは機能に従う(form follows function)」というマクラーレンのデザイン哲学から生み出された姿だからだろう。

ボディは自然の最も効率的な形状であるティアドロップ型。さらに、エアロダイナミクス性能を最適化するために、ボディの部品はキャビンに「クリップ留め」されたようになっている。

空力へのこだわりはリアにも見られる。LEDテールライトはシングルブレードのデザインにより、エアフローへの干渉を最小化。ダブル・ディフューザーは後輪の車軸下から後部へと上に向かって伸びており、クルマの下部の空気の流れを加速させる。

リアでひと際目を引く巨大なカーボンファイバー製リアウィングは、ダウンフォースとエアロダイナミクスのバランスを最適化するための調整を絶えず行い、ヘビー・ブレーキングの際にはエアブレーキとして機能するという。

手荷物への考慮はいっさいなし、無駄を排して走りに特化した『セナ』のインテリア

車内に乗り込むと、このクルマがサーキットを念頭に開発されたことがよくわかる。まず、F1にインスパイアされたマクラーレンの「ディヘドラル・ドア」を開くこと自体、テンションが上がる。このドアは開口部が広く、ヘルメットやレーススーツを着用していてもコックピットへと簡単に出入りできるようになっている。

コックピット環境は、徹底的に無駄が省かれた。マクラーレンのデザイナーは、助手席を取り外すことまで考えたほどだという。

完成したクルマにはさすがに助手席がついているが、3本スポークのステアリングは、フィードバックを純粋に感覚で受け止められるように、ボタンやスイッチもつけられていない。ドライバーが必要とする情報は、すべて高解像度の折りたたみ式ドライバー用ディスプレイと中央のインフォテインメント・スクリーンに表示される。

ちなみに、余分な手荷物への考慮はなく、収納スペースはシートの後ろのチェンバーのみ。ここは「2人分のヘルメットとレーススーツを入れるには十分な広さ」。サーキットを念頭とした開発が、こんなところにも垣間見える。

マクラーレン『セナ』のパワーウェイトレシオは驚異の688ps/t、圧倒的な動力性能

空力の最適化と軽量化を追求した内外装には、カーボンファイバーが多用されている。そもそも、シャシー、ボディパネルともにカーボンファイバー製だ。

結果として、車両重量1198kgを実現。約1200kgというと、国産車なら日産『ジューク』やトヨタ『カローラフィールダー』などと同等の重量である。

この超軽量ボディに搭載されるエンジンは、4.0Lの V8ツインターボ。ミッドシップで後輪駆動、いわゆるMRである。これは、マクラーレンが生み出してきたなかで最もパワフルなロードカー向けエンジンで、最高出力はじつに800ps(789bhp)。最大トルクは800Nm(590 lbf ft)、驚異的に軽い車重も相まって、パワーウェイトレシオは668ps/tを実現しており、その動力性能は想像を絶する。

しかし、このパワーを余すことなく制御できなければ『セナ』の名を冠することはできない。アイルトン・セナは、1000馬力オーバーで、デジタルデバイス技術も少なかったころのF1マシンを、「セナ足」という独自の技術で操っていたのだから。

『セナ』には「セナ足」というシステムはないが、その代わり、進化した電子制御シャーシシステムが搭載された。使い方としては、街中では「コンフォート」、走りを愉しみたいときには「スポーツ」「トラック」、そして、サーキットの全開走行では「レース」モードを選択するだけである。

『セナ』の価格は約1億円で、500台限定…しかしリリース時点ですべて完売済み

生産台数は500台限定で、価格は67万5000ポンド(約1億円)。残念ながら、プレスリリースが発表された時点ですでに完売していた。

最後の1台はチャリティーオークションに出品され、200万ポンド(約3億1000万円)で落札。これはすべてアイルトン・セナ財団に寄付されたという。

アイルトン・セナは生前、さまざまな名言を残しているが、まさにマクラーレン『セナ』の開発陣に向けたかのような言葉があるので、最後にそれを紹介して結ぼう。

「まったく妥協のないレベルにまで自分を高めるのだ。自分のすべてを、まさにすべてを捧げるのだ」

――アイルトン・セナ・ダ・シルバ

Text by Tsukasa Sasabayashi

Photo by (C) McLaren Automotive

Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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