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- 「離婚」を乗り切るための方法 -

離婚の原因となる「産後クライシス」。その対処法は?

初出産が高齢出産となるケースも多い昨今、年齢を重ねた夫婦でも注意しておきたいのが、出産を機に夫婦の愛情が冷え込む「産後クライシス」だ。正しく理解し向き合わなければ、離婚にもつながる恐れがあるという、産後クライシスの基礎知識と対処法を、カウンセラー行政書士の武石晃一さんに聞いた。

■今回のアドバイザー
カウンセラー行政書士
武石晃一さん

かつて行政書士として離婚や不倫の法的実務を得意とした経験を生かし、現在は夫婦問題の悩み相談を受ける心理カウンセラーに転身。法律のプロとしての視点と、カウンセリングスキルの両方を生かした相談が好評。著書に『「夫婦」はもっと仲良くなれる—「離婚」の前に考えたいこと・できること』(河出書房新社)など多数。

女性の体のしくみ上避けられない「産後クライシス」。気持ちの問題と誤解してはダメ

妻の出産後に訪れるという産後クライシス。今回お話を聞いた武石さんは「出産や育児により、夫婦の愛情が急速に冷え込み、良好な夫婦関係が築けなくなり、最悪の場合離婚にまで至ってしまう現象のこと」と定義している。また、産後クライシスは単に夫婦の絆の問題というわけではなく、妻のホルモンバランスの変化や体調不良、子育てに対する不安など、心身両面における複合的な要因によって引き起こされるという。

武石さん「子どもが反抗期を迎えるのと同じように、『産後クライシス』は起こるべくして起こるものです。特にホルモンバランスの問題は重要。女性の母乳の出をよくするホルモン、プロラクチンは排卵を抑制し、授乳を続けている間は次の子供ができない仕組みとなっています。

このホルモンが分泌されている間、性欲がなくなるのは一般的なことなので、産後の女性が夫に嫌悪感を抱くのは、生物学的にみても当然のことなのです。さらに、母親は赤ちゃんを守らなくてはという意識が強くなり、夫はいわば『外から雑菌を持ち帰ってくる存在』になります。妻が夫に嫌悪感を抱き拒絶するのは愛情が冷めたからではないのです」

産後クライシスについての知識を前もって知っておけば、夫としてもある程度心構えができる。しかし、愛情が無くなってしまったのだと早とちりして誤った行動をしてしまえば、離婚に発展するケースもあるという。

武石さん「私の相談経験から言うと、男性が『妻の愛が冷めた』と早とちりして、寂しさから浮気をしてしまい、離婚に発展するケースが多かったようです。産後に性欲をなくす女性が多いことを夫婦で予め知っておき、男性も赤ちゃんがいる間はある程度我慢することが大切ではないでしょうか」

実際に子どもが小さいときほど、離婚を選択する夫婦は多いとも。

武石さん「夫婦が危機的状況となる期間は、人によって1年や2年など差があります。厚生労働省が平成23年に母子家庭の実態を調査した『全国母子世帯等調査結果報告』 では、離婚時の末の子供の年齢は『0~2歳』が最も多く35.1%を占めています。その次が『3~5歳(20.9%)』となっており、産後クライシスとの因果関係を指摘する専門家もいます」

産後クライシスを乗り越えるために大切なのは妻への“共感力”

では、産後クライシスの時期を夫婦で乗り越えるには具体にはどうしたら良いのだろうか。夫婦の衝突を避けるためには、夫が家事・育児に参加することが大切だとよく言われるが、武石さんはそれ以上に「妻の気持ちをとことん理解し分かってあげること」が重要だという。

武石さん「たとえば、妻が『家事に協力してくれない』と怒りをぶつけてきたとします。その時、家事を手伝わない事実に対しても妻は怒ってはいますが、それ以上に、夫が家事に協力しないことでどれだけ悲しく孤独で怒りがわいたのか、その気持ちを分かって欲しいという思いが強いのです。そのサインを見逃さずに『家事をしないことで悲しい思いをさせてしまったね。ごめんね』と、相手の気持ちを汲んだ言葉をかけることをオススメします。また、産後クライシスで妻がイライラをぶつけてきたときは、夫はじっくり最後まで話を聞くこと。夫が話を遮ったりすると、妻のイライラは倍増してしまいます」

産後クライシスにかぎらず、自分の気持ちを分かってもらえないことへの憤りは人間の喧嘩の根本だという。

「妻は、今まで家事育児をないがしろにされた寂しさをわかってもらえないと、たとえ後から夫が育児を手伝うようになったとしても、『なによ今さらっ!』という気持ちになりがちなもの。浮気にしても、浮気相手と別れれば解決すると思いこむ男性がいますが、女性からすると『浮気によって自分がどんなに傷ついたのか』分かってくれないといつまでたっても許せないんです」

産後クライシスを乗り切るための、基本は妻への共感力。ただ義務的に家事や育児を行うだけでは、不十分なのだという。

円熟した夫婦関係構築のためにも乗り越える価値がある産後クライシス

武石さんは、産後クライシスは「必ずしも夫婦関係が壊れかけていることを意味しているわけではない」という。

武石さん「むしろ産後クライシスのような葛藤を感じるのは結婚という仕組みが機能している証拠とも言えます。夫婦の愛は右肩上がりに一直線に上昇し続けるものではなく、ジグザグを描きながら円熟期を迎え、やがて穏やかで安定した関係を築いていくもの。

産後クライシスというのはいわゆる『幻滅期』にあたり、妻が出産を経験すると、産前の恋人同士のような関係は崩壊しがち。その一方で、いったん下がった恋愛感情は下がりっぱなしではなく、お互いに相手を理解しようと努力することで再び上昇していきます。これが『恋』から『愛』に変わる瞬間なのです」

この幻滅期を乗り越えることで、夫婦は成長し、夫婦の絆のより高いステージに上っていけるという。愛情が冷めたから、即「離婚」というのは尚早だろう。

最後にアドバイザーからひと言

「産後クライシスはふたりがより親密になるために起こるべくして起こっていることです。気を落とさず、妻の気持ちに向かい合ってください」

Text by Mai Matsubara (Seidansha)

Edit by Kei Ishii(Seidansha)