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第98回 | 大人のための最新自動車事情

RYNO──『ドラゴンボール』から生まれた電動一輪車

1人乗りのコンパクトな乗用車両のことを「PM(パーソナル モビリティ)」という。 2001年に登場した電動立ち乗り二輪車『セグウェイ』をイメージしてもらえばわかりやすいだろう。今では国内外のメーカーから電気を動力とする様々なPMが発売されているが、なかでも注目はアメリカのRyno Motors(ライノ モーターズ)が販売する『RYNO』だ。SF感溢れるデザインとユニークなコンセプトを持ち、ほかのPMとは一線を画す電動一輪車である。

『ドラゴンボール』でランチが乗っていた一輪バイクが『RYNO』の誕生のきっかけ

『セグウェイ』によってその存在が注目され始めたPMは、より自由で安全な新しい移動手段として、「人の移動」に変革をもたらそうとしている未来の乗用車両だ。すでに一部の公共施設や観光地はPMを導入しており、テーマパークなどで目にしたことのある人も多いはずである。

最近では、『セグウェイ』以外にも国内外の複数メーカーが電気を動力とする一輪や二輪のPMを発売。たとえば、滋賀県を拠点に10年前に開発がスタートした『ワンホイール i-1』は、最高速度約20km/h、総重量25kg、1時間の充電で15〜30km程度の走行を可能とする優れもののPMだ。2015年にテスト販売され、2017年から販売予約を開始し、2018年に正式リリースされる。

また、トヨタも現在、立ち乗り電動二輪タイプの『Winglet(ウィングレット)』というPMを開発中で、近い将来の実用化を目指している。

こうしたなかでも、異彩を放っているのが、アメリカのオレゴン州ポートランドに本拠地を置くライノ モーターズが2014年から販売する電動一輪車『RYNO(ライノ)』だ。25インチのタイヤにハンドルとシート、キャリアまで装着されたそのSF感溢れるスタイリングは、まるで鳥山明の『ドラゴンボール』で二重人格のランチが乗っていた一輪バイクのようだ。

しかし、それもそのはず。じつはこの『RYNO』、まさに『ドラゴンボール』から生まれた乗り物なのである。あるとき、開発者でエンジニアのクリス・ホフマンの13歳の娘が、ゲーム版『ドラゴンボール』でランチが乗る一輪バイクを目にする。そこでスケッチを描き、父親のクリスに「同じものを作れないか」と尋ねてきたのが開発のきっかけなのだという。

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バイクのようなシートがあり、操作系の装置、荷台まで備える電動一輪車『RYNO』

『RYNO』の操縦の基本となるのは、ほかのPMと同様の「セルフバランシング」や「ジャイロ技術」だ。これは、わずかな体重移動やバランスによって進行方向や速度をコントロールする仕組みである。しかし、基本技術は同じでも、利便性は大きく異なる。

『RYNO』とほかのPMの大きな違いは3つある。まずひとつは、『RYNO』にはバイクのようなシートがあり、そこに着座して操縦することだ。

多くのPMは立ち乗り姿勢で頼りどころがなく、慣れるまでにそれなりの時間がかかる。また、意外と疲れやすいのもマイナスポイントだ。一方、またがってハンドルを握る『RYNO』の乗車姿勢には安心感があり、座っているので疲労が少ない。PMというより、むしろ自転車やバイクに近い感覚なので、ユーザーが受け入れやすいのは間違いないだろう。

次にハンドルバーとそこに付属する操作系の装置があること。ディスプレイにはバッテリー残量やシステム情報などが表示され、もちろんスマホとの接続も可能だ。補機類によって多機能性も与えられているので、実際に乗れば様々なシーンで使い勝手が向上するに違いない。

そして3つ目が、荷物を詰めるラゲッジキャリア(荷台)が備えられていることだ。考えてみれば、日常生活では完全に手ぶら状態で外出することはほとんどない。とはいえ、小さなバッグを肩にかけるだけでも意外と煩わしく、むしろ短距離の移動では、なんらかの荷物も同時に移動させるケースのほうが多い。荷物を積めるか否かで利便性が格段に違ってくるわけだ。

鳥山明が『ドラゴンボール』で描いた未来にようやく現実の乗り物が追いついてきた

電動モビリティとしての基本性能は、6時間のフル充電で約15マイル(約24km)の移動が可能で、最高速度は約16km/h。乾燥重量は72.6kgで、操縦者を含む積載能力は約118kgだ。

また、『RYNO』はバイクやクルマと同様に、LEDヘッドライトとテールランプも備える。価格は5250ドル(約59万円)。

これまで日本の交通関連法では、公道でPMに乗ることはむずかしかったが、モビリティ特区の創設や道路交通法改正などの規制緩和により、その視界は一気に広がってきた感がある。

電動モビリティは出力も最高速度も設定次第で変更できるので、シルバーカーなどと同じ歩行補助車にすることも可能だ。国土交通省ではPMを「搭乗型移動支援ロボット」として分類し、法整備も進めているという。

新しいジャンルのプロダクトが登場すると法規制が開発や市販化の足を引っ張ることが多かったが、規制緩和の波を見る限り、ここにきて産業立国を目指す視点が生まれてきたのかもしれない。鳥山明が『ドラゴンボール』で描いた未来に、ようやく現実が追いつきつつあるのだ。

Text by Koji Okamura

Photo by (C)Ryno Motors

Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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RYNO オフィシャル動画

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