モチモチとした蕎麦は芳しい香り。鴨汁は旨みが凝縮した鴨のダシをベースに、本枯節の厚削りで取ったダシの辛汁を加えて味を調える。鴨肉とネギは鴨脂でサッと炙って香ばしさをプラス
鴨汁1600円
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【おとなの週末】大地香る蕎麦に美味しさのため息 珠玉の「せいろ」はこの店で

「新蕎麦あります」の看板に惹かれ暖簾をくぐれば、香り高くみずみずしい味わいが迎えてくれるこの季節。理想の蕎麦を追求する店主の情熱とこだわりを、直球で受け止めるなら何はともあれせいろに限るだろう。
普段は取材拒否の名店から住宅街の隠れ家まで、すべて本誌初登場の極みのせいろ、とくとご堪能ください。

★江戸流手打ち蕎麦 そばこころ蕎心
根津

「1日中蕎麦のことしか考えてない根っからの蕎麦好き」。店主の浅見さんを、周囲は尊敬の念を込めてこう言う。幼い頃から職人を志し、「池の端藪蕎麦」で基礎を、「神田まつや」で手打ちの技を、さらには包丁技術や製粉も学んで独自のスタイルを追求し、満を持して独立した。蕎麦は季節で産地を選び、現在は群馬や茨城など4種をブレンド。各地の特長を引き出すよう粗挽きや微粉と挽き方を変え、4つの個性をひとつの味にまとめて九一で打つ。細く長く、しなやかなコシの中に秘めた力強さは素晴らしく、滋味深い鴨汁で味わえばこの上ない旨さ。肉厚の鴨は客に合わせて食べやすく盛り付けるなど常に心遣いも忘れない。店名そのまま、蕎麦と客への真心があふれる店だ。
各地の蕎麦の実の個性を研究し、現在は群馬産と福島産を粗挽き、茨城産と北海道産は微粉にして配合。浅見さんは「1本1本が長いことも蕎麦の醍醐味。それに味や香りなど全てが備わったスタイルが理想」と話す。いずれは産地ごとに打って提供したいとも
モチモチとした蕎麦は芳しい香り。鴨汁は旨みが凝縮した鴨のダシをベースに、本枯節の厚削りで取ったダシの辛汁を加えて味を調える。鴨肉とネギは鴨脂でサッと炙って香ばしさをプラス
鴨汁1600円
(画像左)今は無き「池の端藪蕎麦」から受け継ぐ貴重な味。生蕎麦を低めの油でじっくり揚げ、和風ダシの野菜餡をかける
(画像右上)豆乳ベースで仕上げたクリーミーな味
(画像右下)築80年以上の古民家を改装した

●このお店の予算相場

[酒]ビ:生小500円~ 焼:グラス800円、ボトルなし ワ:なし 日:1合650円~ [その他のメニュー]昼夜:もり750円、とろろ900円、天もり1600円、にしん蕎麦1350円など 夜:手作りさつま揚げ300円、自家製鴨ロース600円など

●アクセス

東京都文京区根津2-11-10 ☎03-5842-1433 営:11時~15時(14時半LO)、17時半~21時LO 休:木 席:30席/全席禁煙/平日夜は予約可/カード不可/サなし 交:地下鉄千代田線根津駅2番出口から徒歩1分

★手打ち蕎麦切り 匠
秋葉原

理想は「噛んでしっかり甘みと香りを感じられる蕎麦」。それは思わず噛み締めたくなるようなムチムチとした弾力があり、と同時に芳醇な穀物香が鼻に抜けていく至高の味わい。そのため、特に食感にこだわるという。蕎麦は契約農家から仕入れる「常陸秋そば」を石臼挽きで自家製粉し、丸抜きを微粉で挽く「ざる」と、玄蕎麦を使う「田舎」の2種を十割で提供。加水や粉の温度にも細心の注意を払う店主渾身の逸品だ。さらにこの店では江戸前中心の穴子と才巻エビの天ぷらもぜひ味わってほしい。店内の生け簀から注文ごとに取り出して調理するそれはサクッとふっくら、専門店顔負けの技に惚れる。一つひとつ揚げたてを供してくれる特別感にも、うれしさがこみ上げる。
(画像左)甘みのある「ざる」と香り高い「田舎」の2色盛り。つゆのダシは自家削りの本枯節と真昆布に冬菇を加えて旨みを出す。かえしは小豆島産の2年寝かせた醤油をさらに寝かせたもの
合盛り1000円
(画像中央上)三陸産生牡蠣はぽってりとした見事な大きさ
(画像中央下)活〆の穴子と才巻エビは新鮮そのもの。太白ごま油とノンシリコンのコーン油をブレンドし、薄衣でサクッと揚げる
(画像右)鮮度のいい蕎麦粉で打つよう心掛ける
打ちたての蕎麦はお土産にも

●このお店の予算相場

[酒]ビ:生小450円~ 焼:グラス550円~、ボトル3000円~ ワ:なし 日:1合700円~ [その他のメニュー]昼夜:ざる850円、おろし1050円、つけとろろ1100円、きしめん950円など 夜:鴨わさ770円、自家製厚揚げ680円など

●アクセス

東京都千代田区神田佐久間町3-20-3 1階 ☎03-6240-9988 営:11時半~14時(13時45分LO)、17時~20時半(LO)※土は昼のみ 休:日・祝 席:18席/全席禁煙/夜は予約可(6名以上はコース注文時のみ)/夜はカード可(1万円以上・サ料別)/サなし、夜はお通し300円別 交:JR山手線ほか秋葉原駅昭和通り口から徒歩5分

★手打ちそば 膳
九段下

ずっと前からそこで親しまれてきたかのような安定感のある蕎麦の味。これがまだ開店1年ほどの新店なのだから恐れ入る。十割で打つ蕎麦は基本的に細打ち。けれど店内の石臼で挽くその日の粉の状態によって若干太めにしたり、あえて客が気付くか気付かないぐらいの微妙な変化を付けるという店主の遊び心も楽しい。とりわけ「神経を遣う」と語るのはもり用のつゆの合わせ。本節と亀節で仕込むダシの味の奥行き具合でかえしとみりんの量を変えるため、自らの舌の感覚で調整するその時は緊張が走るそうだ。見事な活〆穴子など主な天種は、名だたる一流天ぷら店にも卸す築地の「山五」から仕入れた極上品。藍色が鮮やかな明治期の骨董の器が、その姿形を引き立てる。
店内の石臼で挽く蕎麦粉は若干粗め。よく練ることできめ細やかに仕上げる。活〆の国産穴子は通常食べやすいようカットして提供するが、要望があれば1本のままでも。油は随時変え、昼も夜も鍋を洗うなど徹底している。天ぷらは夜のつまみでも人気
(画像左)季節メニュー。牡蠣は濃厚な旨みがある岩手の広田湾産
(画像右)鶏肉は築地「鳥藤」から仕入れる。表面を炙った刺身は柔らかくしっとり

●このお店の予算相場

[酒]ビ:生小450円~ 焼:グラス650円~、ボトル4600円~ ワ:グラスなし、ボトル4500円~ 日:1合850円~ [その他のメニュー]昼選べるランチ天もり1300円など 昼夜:もり900円、鴨南蛮2150円など 夜:トマトのおひたし520円、穴子の白焼き1080円、天ちら・梅1500円など

●アクセス

東京都千代田区九段北1-3-9 第二太陽ビル1階 ☎03-6265-6005 営:11時半~14時、18時~21時半(20時45分LO) 休:土・日・祝 席:26席/全席禁煙/予約可/夜はカード可/サなし 交:地下鉄半蔵門線ほか九段下駅番5番出口から徒歩1分