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チームの行動を変えるマネジメント術『結果を出すリーダーほど動かない』

本書の要点

●要点1
壁マネジメントとは、マネージャーが部下の行動に介入し、動かない壁をつくることで、望ましくない行動を止め、成果が出る望ましい行動の継続を促すマネジメント手法である。

●要点2
壁マネジメントのポイントは、「行動ルール」の設定、行動ルールに対して漏れなく介入する「介入ルール」の設定、介入する際の「フィードバック方法」の3つである。ルールの形骸化を防ぐには、好子、嫌子による適切なフィードバックが必要だ。

●要点3
壁マネジメントのPDCAサイクルを回すには、「スコアリングシート」で部下ごとの結果を残す必要がある。

なぜあなたの部下は動かないのか?

部下が指示どおりに動かない2つの理由

JackF/iStock/Thinkstock
仕事をサボっているわけではないのに、リーダーや上司の立場であるあなたの指示に対しては、正しく行動しない。このような状況が生まれる理由として、次の2つが考えられる。

1つ目の理由は、部下たちに動かなくてもいい環境が与えられているからだ。例えば、ある部下が期限までに書類を提出しないとしよう。それは、過去に同じ指示が出されたとき、そのとおり行動しなくても問題ないという体験が繰り返されたためといえる。

2つ目の理由は、部下が自分の判断基準で動いていいという認識をもっているからである。今まで上司の指示より自己都合を優先して問題がなかったために、こうした認識が定着してしまったと考えられる。

このように、「動かない部下」をつくり出した原因は、上司自身の普段の関わり方にある。問題なのは、部下に指示しかしていないという点だ。上司は、指示した内容を部下にやりきらせるところまで管理、サポート、教育をしなければならない。

チームの行動を変える「壁マネジメント」

成果をつくり出すには、行動を変えることが必須となる。ただし、ビジネスにおいて、成果の出る行動は明確ではない。市場や世の中のトレンド、法律、ライバル会社の取り組みなどが変化すれば、成果を出すための行動も変化していく。だからこそ、成果の出る望ましい行動の仮説を立て、それに沿って行動する必要がある。そのうえで、得られた結果が成果につながっているかどうかを検証し、行動を改善して組織のミッションをクリアしていく。これがマネージャーの役割といえる。

著者が提唱するのは、部下の行動を変革するマネジメント手法、壁マネジメントだ。部下が望ましくない行動に流れないように、上司自身が揺るがない壁になる。具体的には、マネージャーが部下の行動に介入することで、望ましくない行動を止め、成果の出る行動を継続できるよう促す。このマネジメント手法は、業種やリーダーの性格を問わず通用するものである。

マネジメントの失敗例

マネジメントのよくある失敗の一例として、「間違った場所に壁をつくっている」というケースが挙げられる。

著者の過去のクライアントの営業部長は、「会議でもっと建設的な意見を出してほしい」と考えていた。しかし、実際に著者が会議を観察していると、発言した部下に対し、部長がこう叱りつけていた。「おまえのアイデアは売上に貢献しない。もっと大きなアイデアを出せ」。

本来、望ましい行動は「全員が積極的に発言すること」である。にもかかわらず、部下がその行動をとると、マネージャーが「認めない」「否定する」「怒る」という状態を続けていた。このままでは、望ましい行動が組織やチームに定着することはまずない。マネージャーは「必要な行動は何か」を見極めて介入する必要がある。

【必読ポイント!】 結果を出す壁マネジメントの実践

①「行動ルール」の設定

AlexanderMas/iStock/Thinkstock
壁マネジメントを運用するには、次の3つを決めなければならない。①「行動ルール」の設定、②行動ルールに対して漏れなく介入する「介入ルール」の設定、③介入する際の「フィードバック方法」である。ここからは、それぞれの具体的なポイントを紹介していく。

まず、①「行動ルール」の設定においては、能動的に行える行動かどうかがポイントとなる。例えば「見積もりを10件とることをルールとする」というのはどうか。これはあくまで目標であり、達成のための方法がわからない人にとっては実行が難しい。

本来なら、部下が能動的に実践でき、その反応として成果が得られる行動をルールにしなければならない。「見積もりを10件とることを目標として、30件のお客さまに見積もり依頼につながる提案をする」といった内容なら、この条件を満たす。行動ルールは、やろうと思えばできる内容であることが原則となる。

部下の現状維持バイアスを外すには?

行動ルールは次の4種類に分けられる。知っていればできる行動、今までの価値観・習慣と違う行動、スキル・技術を習得できればできる行動、そして、時間を確保できればできる行動である。

このうち、今までの価値観・習慣と違う行動をルール化するときは、習慣化できるまで、とても労力がかかる。それは、新しい行動を受け入れることを避け、現状を維持したいという欲求が働くためだ。これを「現状維持バイアス」と呼ぶ。

このバイアスを外すためには、現状維持バイアスにより生まれた不安や恐怖の感情を避けようとする状態に、身を置き続けるしかない。そして、そのインパクト(強度)×回数(頻度)を高めることで、部下にとってその行動が次第に当たり前のものになっていく。

このようにして、現状維持バイアスが外れれば、新しい価値観や習慣を身につけられるようになる。マネージャーは、未来の成果と部下の将来を考えて、多少の反発があっても、必要な行動を受け入れさせるようにすべきだ。

②行動ルールをやりきらせる「介入ルール」の設定

壁マネジメントで行動ルールを決めたら、次は、②行動ルールに対して漏れなく介入する「介入ルール」を設定する。設定した行動を部下にやりきらせるには、その行動が正しく実践されているかどうかを、マネージャーが漏れなく確認することが欠かせない。行動ルールと介入ルールをセットで運用してはじめて、壁マネジメントが機能する。

マネージャーがとるべき3つの介入方法

マネージャーが介入する方法は3種類あり、これらを組み合わせて駆使することが求められる。

1つ目の方法は「リマインド型の介入」である。これは、部下が行動する前の段階で、設定した行動をとる準備ができているかについて介入することを意味する。行動すべきタイミングの少し前に介入することで、やるべきときに行動しないという状態を防ぐことができる。

2つ目は、行動後に結果を確認する「アフター型の介入」だ。行動をやりきらせるのに効果的なのは、リマインド型介入で確認した内容を再度、アフター型介入で確認する方法である。

3つ目は、過去の行動や介入のデータを振り返って、行動ルールが守られてきたかをチェックし、漏れなく介入するという「累積型の介入」である。これにより、日々の介入の漏れをリカバリーできる。

マネージャーには、これら3つの介入をスケジュールに落とし込み、欠かさず運用していくことが求められる。

③介入する際のフィードバック方法

AntonioGuillem/iStock/Thinkstock
部下が正しく行動ルールを守っていたら、それを継続するよう、マネージャーが促す必要がある。そこで有効なのが、行動分析学を応用したフィードバックだ。行動分析学とは、傾向に当てはまらない行動を分析して、行動変容につながる策を導き出す学問である。動物のトレーニングや発達障害の方の教育現場でも活用されている。

フィードバックのキーワードとなるのが、好子(こうし)と嫌子(けんし)である。好子とは、行動の直後に出現すると、その行動が起きる頻度を上げる刺激、できごと、条件を指す。つまり、正しい行動のご褒美にあたるものだ。マネージャーが部下に好子となるフィードバックを与えることで、部下はその行動をくり返すようになる。これを「強化」という。

一方、嫌子とは、行動の直後に出現すると、その行動が将来起きる頻度を下げる刺激、できごと、条件を表す。つまり、ペナルティや罰のことである。部下に嫌子となるフィードバックを与えることで、部下がその行動をくり返さなくなることを、「弱化」と呼ぶ。

ルールの形骸化を防ぐためのフィードバックのコツ

壁マネジメントでは、ルールの形骸化を防ぐために、ルールが守れていたら好子を、守れていなかったら嫌子を発生させるフィードバックを必須としている。

もし部下がルールを守ったのに、マネージャーが好子を出現させないと、部下は望ましい行動をとらないようになってしまう。一方、部下がルールを守らなかったにもかかわらず、嫌子を消失させると、望ましくない行動を強化することになり、ルールを破ることが増えてしまう。よって、好子、嫌子による適切なフィードバックは、壁マネジメントの効果に大きな影響を及ぼすといえる。

もちろん、成果を出すための行動は常に変化していく。そのため、ビジネスの背景がどれだけ変わっても、成果の出る行動を導き出し、それを部下に継続的にやりきらせることがマネージャーの役割といえよう。

壁マネジメントのスコアリング手法

マネジメントの状態を「見える化」する

ninuns/iStock/Thinkstock
壁マネジメントにおいて、マネージャーの感覚に頼るのはご法度といってよい。行動ルールをやりきれているか、好子・嫌子のフィードバックが効いているかどうか。これらを的確に判断し、PDCAサイクルを回すために、著者は「スコアリングシート」でデータを書きとめていくことを必須としている。

具体的には、行動ルールの実行状態と介入状態、中間成果を含む成果との連動性について、各項目の達成状況を、○か×かで残していく。その後、蓄積したデータからマネジメントの問題点を見える化し、改善をはかる。スコアリングシートを正しくつけていけば、どの介入やフィードバックによって部下の行動が変わったのかを明らかにしやすい。

スコアリングシートを設計する際のポイント

スコアリングシートの設計のポイントは、行動ルールの実行データ、中間成果の結果データ、介入ルールの実行データ、フィードバックの実行データを必ずセットで確認できるようにすることである。これらのデータを時系列で同時に一覧できないと、問題のある箇所を見つけづらいからだ。また、中間成果の設定が行動ルールとかけ離れていると、スコア上で行動と中間成果の関連が確認できなくなってしまうので注意したい。

壁マネジメントで成果を出すには、部下と個別に向き合い、それぞれに合ったアプローチを用いることが重要だ。個別のスコアをつけていくスコアリングシートは、強力なツールとなってくれるだろう。

一読のすすめ

本書の素晴らしさは、なんといっても、壁マネジメントを「実践に活かせるかどうか」にこだわっている点だ。壁マネジメントがうまくいっていないときの「ケース別改善法」や、業種ごとのスコアリングの事例、壁マネジメントを後任のマネージャーに任せる際の注意点など、じっくりお読みいただきたい内容ばかりである。

本書の成功事例を読めば、営業組織の新規開拓、工場の生産性向上、新入社員の教育の改善による退職率ゼロの実現など、壁マネジメントの応用範囲と可能性の広がりを実感することだろう。マネジメントをアップデートさせる「実践の書」として日々活用していただきたい
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