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- 40歳 会社員を辞める生き方 -

中小企業診断士が語る アーリーリタイヤで開業・独立・起業の危ないパターン

会社を辞めて一念発起。40代でアーリーリタイアすると同時に開業・独立しようと息巻く友人がいる。せっかくやる気になっているところ、水を差すようなことを言うのも申し訳ないため口には出さないが、やはり本音は「本当に大丈夫?」と不安がよぎる。アーリーリタイア後に成功・失敗する開業ケースに兆候やパターンはあるものだろうか。中小企業診断士の西條由貴男さんに、話をうかがった。

■今回のアドバイザー
中小企業診断士
西條由貴男さん

2010年に講師を志しアーリーリタイアして独立開業。合同会社Finescopeを立ち上げ、現在は、岡山と東京の行政機関にて、アーリーリタイヤして起業を目指す人の支援を行う。著書に『起業のツボとコツがゼッタイにわかる本』『独身★40代で会社を辞めましたが、何が?』など。

アーリーリタイアからの独立危険パターン「未経験業種への挑戦」

まずは本題。アーリーリタイアと同時に、開業や独立・起業をしない方が良い人に見られる、危険な兆候やパターンは?

「開業・独立・起業で始めるビジネスが、過去の延長線上にないケースですね。独立・起業には会社員時代よりも大きいリスクが伴いますが、会社員として飲食業歴20年の人が飲食店で開業するのであれば、そのリスクを低く抑えることができます。しかし、飲食業経験ゼロのITプログラマーがいきなり飲食店で開業するのは、もはやリスクではなくデンジャーです。そもそも、そんな独立・起業をする人はいないだろうと思うかもしれませんが、筆者の経験則では3割程度いらっしゃいます」(西條さん、以下同)

中小企業庁が発表する『小規模企業白書2017年版』、日本企業の開・廃業実績によれば、2009年から2014年までの5年間で、開業した企業は66万者。対し、廃業した企業は113万者。2009年から2012年までの廃業者は62万者、2012年から2014年にかけての廃業者は51万者と、廃業は減少傾向にありつつはあるものの、開業と同じくらい廃業数は多いという現実がわかる。様々な思いをもって開業・独立・起業するが、思いだけではどうしようもできない厳しさがあり、リスクを軽視することは、西條さんが話すようにやはりデンジャーなのだ。

アーリーリタイアで過去を捨てて生まれ変わることは難しい

冒頭私の友人のように、アーリーリタイアするのだから、これまでのすべてを捨てて新しい人生にチャレンジしたいと考える人はやはり多いと西條さん。そして、次のように話す。

「その昔、離職者対象のキャリアプランニングセミナーをしていた時、『どうしてそんなに過去にこだわるのですか! 私は過去を捨てて生まれ変わりたいのです!』と言われた40代後半の受講者がおられました。私も会社員時代の終盤は悪い思い出しかなく、この気持ちもわかるのですが、現実問題として40代から過去を捨てて生まれ変わるのは、社会が認めてくれないことがほとんどです」

アーリーリタイアして、働き方が変わっても、生き続けなければならないことに変わりはない。生きるためにはある程度のお金が必要であり、お金を得られる価値を生み出すためには、社会的な信用が欠かせない。まったく経験のない新たな仕事を通じて他者と信頼関係を構築し、そこからお金を生み出せるようになるまでは莫大な時間がかかるのだ。

しかし、過去を活かして独立・起業で生まれ変わることはそれに比べれば簡単。西條さんは「アーリーリタイアして独立・起業をするのであれば、ビジネスに転用できそうな自分の知識や経験、人脈、資格などを発掘することから始めると良いでしょう」と、スキルの棚卸しを進める。

アーリーリタイアは辞めることではなく、新しく始まること。自分を俯瞰する冷静さが必要だ。

Text by Daisuke Suzuki(KOUMUTEN)

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