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世界的建築家、過去最大規模の展覧会「安藤忠雄展 ―挑戦―」

世界的に活躍する建築家・安藤忠雄。その足跡を辿り、さらに未来へと続く挑戦を展示する「安藤忠雄展 ―挑戦―」が、2007年に開館した国立新美術館開館10周年記念の展覧会として2017年12月18日まで開催されている。

プロボクサーから転身、独学で建築を学んだ異色の経歴を持つ安藤忠雄

安藤忠雄は1941年大阪生まれ。プロボクサーから転身して世界を放浪、独学で建築を学んだという異色の経歴の持ち主だ。1979年には大阪市の木造長屋をコンクリートで建て直した「住吉の長屋」で日本建築学会賞を受賞。この時点ですでに「打ち放しコンクリート」「単純な幾何学的造形」「自然との共生」という安藤建築の原型を表現していたという。
ポートレイト(撮影:荒木経惟)
その後は「東急東横線渋谷駅」「表参道ヒルズ」「司馬遼太郎記念館」といった巨大プロジェクトも手がけ、現在は東京大学特別名誉教授、カリフォルニア大学バークレー校の客員教授なども務めている。そんな安藤がそれまでになかった新たな建築に挑戦し続ける姿を垣間見られるのが「安藤忠雄展 ―挑戦―」だ。

安藤の軌跡を巡る6つのセクションで構成。「建築というのは、体験せなあかん」

「安藤忠雄展」は安藤の軌跡を巡る6つのセクションで構成されている。もちろん会場内のデザインも安藤の手によるもので、向こう側が見えるスリットなども配置され、安藤建築のエッセンスを感じられる。
大淀のアトリエⅡ(大阪市) 模型
プロローグでは安藤が独学時代に放浪した世界地図や、アトリエの模型とその一部が原寸大で再現されていて、元ボクサーらしくグローブとシューズもディスプレイされている。書棚に並ぶ蔵書にも注目したい。

続くセクション1は「原点/住まい」だ。「住吉の長屋」の模型を始め「小篠邸」(ファッションデザイナー、コシノヒロコの住宅兼アトリエ)や海辺に建つ「4×4」など、安藤が手掛けた住宅のドローイング、模型、設計図、実際の住宅の映像、住人によるコメントなどが紹介されている。
小篠邸,1981/1984年,兵庫県芦屋市 (撮影:新建築社 写真部)
セクション2では大阪の茨城市にある「光の教会」をなんと実物大で再現(野外展示場)。打ち放しのコンクリートで作られた幾何学的造形の建物のスリットから溢れ出す光は、見る人を圧倒することだろう。また「水の教会」や「ユネスコ瞑想空間」などのデザインも展示される。
光の教会,1989年,大阪府茨木市 (撮影:松岡満男)
続くセクション3「余白の空間」、4「場所を読む」、5「あるものを生かしてないものをつくる」はメインとなる広いスペースにエリアごとに展示されており、日本国内での活躍に加え、中国「上海保利大劇院」やイタリア「プンタ・デラ・ドガーナ」、アメリカ「フォートワース現代美術館」など、世界的に活躍する安藤建築の代表的な様々なプロジェクトの模型や設計図、ドローイングが紹介されている。また安藤による手書きのコメントも見逃せないポイントだ。

その会場の中心には「アートの島」としてその名を知られる、瀬戸内海に浮かぶ直島における一連のプロジェクトが、大きな円形状の展示でインスタレーションを行っている。大型の模型と映像、光の演出を堪能してもらいたい。
直島 ベネッセハウス,1992/1995年,香川県直島町 (撮影:松岡満男)
最後のセクション6は「育てる」だ。安藤は、建物とは作りっ放しではなく、メンテナンスをしてずっと付き合っていくものだと語っている。ここではそうした思いが溢れるプロジェクトや、ドキュメンタリーを見ることができる。

安藤は本展開催にあたってのギャラリートークで「人々の記憶の中に“あってよかった”と思ってもらえるようなものを作りたい」と語り、「建築というのは、体験せなあかん」と話していた。ぜひ「安藤忠雄展 ―挑戦―」で、安藤建築の真髄を“体験”してもらいたい。

Text by Tamotsu Narita

※トップ写真クレジット:水の教会,1988年,北海道勇払郡 (撮影:白鳥美雄)