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マクラーレン720S――必然で生まれた究極ロードカー

2017年3月に開催された第87回ジュネーブモーターショー。ここでマクラーレンが世界初公開したのが『720S』だ。驚いたのは、この発表からわずか24時間程度で日本でも公開され、3338万3000円(税込)という価格まで発表、7月からのデリバリーも決定したこと。異例ともいえる対応だが、それもさもありなん。『720S』は、ある意味、マクラーレンの歴史に残る一台なのだ。

“フェラーリの真のライバル”が中核モデル『720S』に採用した新世代のモノコック

スーパースポーツのアイコン的存在であるフェラーリ。そのライバルといえば、真っ先に思い浮かぶのはランボルギーニだろう。しかし、10代から20代のころにF1ブームを経験した大人のカーガイにとって、これは少しだけ納得がいかないところはないか。モータースポーツの頂きで研鑽された技術をロードカーにフィードバックしたスーパースポーツという観点では、フェラーリの真のライバルはマクラーレンといってもいい。そのマクラーレンの核をなすライナップが、「スーパーシリーズ」だ。今回紹介する『720S』は、その「スーパーシリーズ」の第2世代となる。

「スーパーシリーズ」は、2011年にデビューした『MP4 12C』が原点。『MP4 12C』の生産終了後は『650S』、そのデチューンモデルである『625C』へと進化してきた。そして、『650S』の後継であり、新世代のマクラーレンを象徴する一台として、これまでの「スーパーシリーズ」を大幅にリニューアルしたのが『720S』だ。

新世代モデルであることを顕著に象徴しているのは、新しいモノコックの採用である。マクラーレンは1993年にデビューした『McLaren F1』以来、すべてのロードカーにカーボンファイバー製シャシーを採用しており、もちろん『720S』もその伝統を踏襲している。

しかし、『720S』は新世代だけにひと味異なる。基板(下部)である「タブ」にカーボンファイバーを用いるだけではなく、上部構造にも従来の金属製アッパ構造に代わってカーボンファイバーを採用することで、シングルボディシェル「モノケージⅡ」を形成した。

「モノケージⅡ」は、スーパースポーツカーの理想である軽量な基本構造(重量は1283kgと『650S』を下回る)と、優れた強度、剛性を持つ。さらに、上部の軽量化で車両の重心が下がることで、走行ダイナミクスも強化。ほかにも、ピラーがよりスリムになったことで、全方位の視界の良さがクラス最高となり、ドライバーのコントロール感が高まって車内も明るく広々とした印象になるなど、さまざまな点に進化をもたらしている。

ひと目で「マクラーレンのDNA」を受け継ぐモデルとわかる『720S』のエクステリア

骨格を包み込むエクステリアは、ひと目でそれがマクラーレンのDNAを受け継ぐ存在だと感じさせる。ほかのどの自動車ブランドとも似ていない、唯一無二の佇まいだ。いわく「マクラーレンのデザイン言語とエアロダイナミクスへのこだわりを大胆に再解釈し、傑出した性能を求めるマクラーレンのDNAを具現化」したものだという。

特色のひとつは、車体の横にあるラジエーター・インテークを省いたことだ。代わりの役目を果たすのは、ドアに装備された「ダブルスキン」というボディ形状。これは簡単にいえば、ボディにあたる風を効率的に、後方にあるミッドシップ・マウントのエンジンを冷却する高温ラジエーターに送る仕組みだ。まさに、機能がデザインに強く影響した「機能美」という表現がぴったりである。

ちなみに、この「ダブルスキン」が施されたドアは、マクラーレンのアイコンである「ディヘドラル・ドア」。いわゆる「ガルウイング」を継承している。

『720S』の最高速度341km/h、鍛え抜かれたアスリートを想起させるデザインや性能

搭載されているエンジンの排気量は4Lで、マクラーレンおなじみのツインターボV8エンジン・シリーズの流れを組んだ新型だ。従来の「スーパースポーツ」に搭載されていた3.8Lからは、41%の部品が取り替えられている。

最高出力は720ps、最大トルクは770Nm。最大561ps/tのパワーウェイト・レシオを誇り、時速100kmまで2.9秒、時速200kmまで7.8秒で加速し、最高速度は341km/hに達する。言わずもがなではあるが、『720S』の車名は、この最高出力が由来である。
パワーを路面に伝える足回りには、サスペンション、電動油圧式パワー・ステアリングが一体となって機能する新世代の「プロアクティブ・シャシー・コントロールⅡ」を採用。アップライトとダンパーに配置された多数のセンサーが、ダンパー内の圧力とともにホイールの加速も測定し、即時に力をかけてダイナミクスのバランスを取り、高いダイナミクスを実現する。

走りへのこだわりは、コックピットにも現れている。ドライバーインターフェースには、折りたたみ式のドライバー用ディスプレーを採用。折りたたむと必要最小限の情報だけが表示されるので、サーキット走行などではドライビングに集中できそうだ。操作系は、キャビン中央のインフォテイメント・スクリーンで一括管理している。
マクラーレンの設計哲学は、非常にシンプルだ。それは「すべてに理由を求める」こと。『720S』の設計や設備も細部にわたり、必然的な理由が存在する。走りを純粋に突き詰めるその姿勢は、まさに鍛え抜かれたアスリートを想起させる。究極のロードカーの究極の走りを、一度は体験してみたいものだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi