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第3回 | ハーレーダビッドソンの最新車デザイン・性能情報をお届け

ハーレーの生き残り戦略──なんと小型電動モデルが登場

ハーレーダビッドソンがブランド初の電動バイク、『LiveWire』のコンセプトモデルを公開してファンを驚かせたのは、約5年前の2014年6月のことである。しかし、いまから思うと、これは序章にすぎなかった。今年1月、ついにハーレーは『LiveWire』の市販モデルの予約受付を開始。同時に、新たに2タイプの電動バイクを公開した。いずれもハーレーのイメージとかけ離れたモペットのような小型モデルだ。そこには、電動化によって新たな足場を築いていくという、企業としての生き残りをかけた戦略が見えてくる。

ハーレーダビッドソンといえども、電動化を考えなければ生き残ることはできない

ハーレーダビッドソンは今年1月初め、ラスベガスで開催されたCES 2019で新たな電動モデルを発表した。CESは、かつてコンシューマ・エレクトロニクス・ショーと呼ばれていた見本市だ。そう、自動車やオートバイではなく、家電の見本市で発表したのだ。

ハーレーは2014年に『LiveWire(ライブワイヤー)』という初の電動バイクのコンセプトモデルを公開し、昨年11月には市販バージョンを発表(下の写真)。今年1月からは、いよいよアメリカで予約受付をスタートした。しかし、今回発表されたのはそれではなく、まるでモペットのような、2タイプの電動小型車のコンセプトだ。もっとも、公表されたのは10点に満たない写真とわずかな資料のみで、詳細は何も明かされていない。

したがって2モデルについては想像するしかないが、そもそもハーレーがホビーにも近い小型車を手がけること自体、社会的にも企業的にも大きな時代のうねりを感じさせる。

じつは、ハーレーは1960年代にバイクも生産していたイタリアの航空機メーカー、アエルマッキの大株主となり、小型バイク市場に参入しようとしたことがあった。結果的に、利益率の問題やユーザーからの強い反発があってこの計画は断念したが、そんな経験をもちながら、もはや電動化を考えなければ生き残れないとの判断があったのは間違いない。

それゆえに、この轟音を放たない2タイプの電動モペットは──ハーレーのブランドイメージにどのように影響するかはともかく──極めて戦略的だと感じてしまうのだ。

リアサスペンションが存在しない。都市部での通勤を考えた手軽で軽量なモビリティ

2タイプの電動モデルには、それぞれシティコミューターとなる「ENGINEERED FOR THE CITY(都市型の技術)」と、クロスバイク的な「ENGINEERED FOR ANYWHERE(場所を選ばない技術)」というコンセプトタイトルが与えられている。なにしろ開発ネームすら明かされていないので、ここでは便宜上「シティ」「クロス」と呼ぶことにしよう。

車格的にはどちらもガソリン車でいう小排気量(150ccから250cc)クラスになり、ヨーロッパの電動小型車(Light Electric Vehicle)の規格に準拠するように設計されている。もし市販化されれば、免許なしで運転することのできる国(地域)が誕生するわけだ。

「シティ」はリアサスペンションが見当たらず、シンプルな独特のフレーム形状をもっている。中心部分のポッカリと空いたスペースは、バッテリーを搭載するためのもの。実際にバッテリーが収まると外観上の印象は変わるかもしれない。電動モデルにとって最重要となるバッテリーを公開しなかったのは、単純に開発が発表日に間に合わなかったのか、それとも技術的にまだ隠しておきたいことがあるのか、そのあたりは定かではない。

ハーレーは「シティ」について、「都市利用を想定して設計し、誰でも簡単に乗れるようになっている。クラッチもシフトもなく、軽量で、バイクの免許がなくても乗れるようにしたい。バッテリーは交換可能かつ片手で持ち運べるものになるはずだ」とコメントしている。

さらに「ハーレーのデザイン性を損なわないように設計した」ともいうのだが、なるほど、グレーを基調にフレームの内側などに効果的にオレンジをあしらっており、なかなか上品な仕上がりだ。総重量は100kg未満、最高速度は45km/h未満に抑えているという。

ビギナーでもトライアル的なライディングを愉しむことのできるオフロードスポーツ

「クロス」は足の長い前後サスペンションを備えており、見るからにオフロードモデルだ。MTB(マウンテンバイク)とオフロードバイクの中間に位置することになるだろう。

搭載されるバッテリーは、メインフレーム下の空いたスペースを考えると20〜25Ah程度と思われる。軽量のボディをもつことは想像に難くなく、前後ともに21インチ以上はありそうな大径タイヤを装着。ラフロードでのライディングはかつてない走破性を得ている可能性がありそうだ。低回転から太いトルクを発生する電気モーターの特性を考えると、ビギナーでもトライアルレースのような走りを愉しめるのではないだろうか。

「シティ」があくまでコミューター(通勤用)なら、「クロス」はファンライディングを目的としたオフロードスポーツモデルと解釈すればいい。2モデルともに最終減速比はコグドベルト(歯付ベルト)によるものだが、これはおそらく電動モデルならではの静粛性を生かすのと同時に、メンテナンスの負担をより軽くするための選択だったに違いない。

ハーレーは「このEVは、どこのどんな地形にも対応できるように設計している。都市での通勤にも使え、なおかつオフロード体験にもつながるコンセプトだ」としている。

アジアの新興国では小型バイクや電動モデルが成長。ハーレーが見据える企業の未来

ハーレーは2018年度の販売台数が大幅に減少し、2018年10月〜12月期決算の純利益に限ると、なんと前年同月比94%減となっている。これをアメリカのトランプ大統領が仕掛けた貿易摩擦の影響と考える人もいるかもしれないが、それよりもっと深刻なのはヨーロッパをはじめとする若者の二輪離れだ。ハーレーの顧客は中高年層が中心だが、この層が縮小しているうえ、若者のユーザーでその穴を埋めることもできていない。

このままでは、かりにアメリカ大統領がトランプから誰かに交代しても、ハーレーの販売台数が上向くことはないだろう。事実、ハーレーの販売台数は2018年までに4年連続で減少している。アメリカやヨーロッパの若者の二輪離れは、ハーレーのように画一的なブランドイメージをもつオートバイメーカーにとって、とりわけ根本的な問題なのだ。

その一方、アジアの新興国や開発途上国では小型車の販売台数が伸びており、とくに環境性能に優れた電動モデルの成長は著しい。そういう意味では、ハーレーの電動化への注力はまったく正しいものだ。開発段階から市場に対して入念にアピールしておけば、ユーザーにとっても大きな安心材料になり、また信頼感にもつながっていくことだろう。

予約受付が始まった初の電動モデル『LiveWire』は、ハーレーにとって、またビッグVツインに乗り続けたいと考えているファンにとっても、重要な指針になるはずだ。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Harley-Davidson, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Harley-Davidson LiveWire オフィシャル動画
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