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第122回 | 大人のための最新自動車事情

6X6シビリアン・キャリア──6輪駆動のディフェンダー

アフザル・カーン率いるカーン・デザインは、悪路を走るオフロードモデルを都会的なスポーツヴィークルへと生まれ変わらせることで名高いビルダーだ。とりわけヨーロッパで非常に高い評価を得ており、いまなお支持層を広げている。そのアフザル・カーンが3月のジュネーブモーターショーで、ランドローバー『ディフェンダー』をベースにした6X6(シックス・バイ・シックス)、つまり6輪駆動車を披露した。セレブのファミリー向けに製作されたコンプリートカーだが、その迫力はまるで軍用車両のようなのである。

全長5500mm、最大9名の乗員。『6X6シビリアン・キャリア』はすべてがケタ違い

アフザル・カーンが製作責任者をつとめた6輪駆動車の『Flying Huntsman 6X6 Civilian Carrier(フライングハンツマン6X6シビリアンキャリア)』は、煌びやかなスーパーカーが数多く並ぶジュネーブモーターショーのなかにあって、異彩かつ圧倒的な存在感を示していた。9名が乗車可能な全長5500mmの巨体もさることながら、仕上げの美しさや先進的な装備、贅沢な内装を備えており、単なるショーカーではないことは明らかだ。

6輪駆動のSUVというと、2014年にわずか5台のみが生産されたメルセデスAMG『G63 6×6』(価格は約8000万円!)を思い浮かべる。また、ピックアップトラックでは、シボレー『シルバラード Trail Boss』をベースにテキサス州のビルダーがカスタムしたヘネシーパフォーマンス『Goliath(ゴリアテ)6×6』などがあった。しかし、9人乗りハードトップの6輪駆動モデルとなると、もしかすると史上初のことかもしれない。

製作したのは、Jeepと提携して『ラングラー』のフルコンバージョンなどを手がけているイギリスのチェルシー・トラック・カンパニー(Chelsea Truck Company)。カスタムカービルダーとして著名なアフザル・カーンがCEOを務めるグループ企業のひとつだ。

6輪駆動SUVの開発者は、世界的に有名なカスタムカービルダーのアフザル・カーン

アフザル・カーンが1998年に創業したカーン・デザインは、もともとオリジナル・ホイールを製造販売する企業だった。とりわけホイールのスポークがリムの縁まで延びた独特のデザインを生み出したことで知られる。その後、高級オフロード車の内外装を独自のセンスでカスタムするビスポークモデルの製作にビジネスを拡大。チェルシー・トラック・カンパニーも、そうしたカーン・デザインの事業拡大のなかで設立された企業である。

チェルシー・トラックはJeep『ラングラー』、メルセデス・ベンツ『Gクラス』などをベースにした高級感あふれるカスタム車両を製作していて、価格帯の中心は5万ユーロ(約622万円)から8万ユーロ(約995万円)。なかでも、ランドローバー『ディフェンダー』をベースにしたコンプリートカーはチェルシー・トラックの代表作といってもいい。

『フライングハンツマン6X6シビリアン・キャリア』も、ベースとなったのは『ディフェンダー110』だ。じつは、チェルシー・トラックは2015年にSUT(スポーツ・ユーティリティー・トラック)として『フライングハンツマン110WB 6×6』を製造販売しているのだが、その思わぬ人気ぶりを受けてSUVへと進化させたのが今回のモデルなのだ。

車両価格は約3600万円。パワーユニットは最高出力436馬力のGM製V8エンジン

コンセプトは「大自然で一緒に過ごす大家族」。悪路走破性の高さに加えて、セレブレティが快適かつ優雅に過ごすことのできるキャビン空間を実現している。ドライブアクスルを追加してベース車両から880mm伸長した広い室内は、最大9名の乗員まで対応。ファブリックインサートの入ったキルティングレザーの大型シートは密度の異なる数種類のフォームを使用しており、ルーフ全体にわたるパノラミックルーフが開放感を与える。

そのほか、乗り降りに便利な折りたたみ式のサイドステップを備える気遣いもあり、またシートレイアウトを変更すればサーフボードなどの長尺の荷物を積むことも可能だ。

パワーユニットは3タイプが用意された。『ディフェンダー』に搭載される2.2Lターボディーゼルエンジン、5.5LのV8エンジン、最高出力436ps を発揮するGM製の6.3L V8エンジンから選ぶことができる。ハイ・ローレシオのドライブシステムとデフロックを搭載し、トランスミッションは6速MT。ホイールはレッドのストライプがあしらわれたレトロ調の18インチアロイホイール、タイヤはクーパーLTZ 275/55を装着する。

6輪駆動はタイヤが1本ぐらいバーストしても問題なく走ることができ、その走破性は特別なものだ。このクルマの本国であるイギリスの人々にとって、アフリカ大陸はフェリーで渡ることのできる距離にある。家族でアドベンチャー旅行に行くのも夢ではないだろう。ただし、『フライングハンツマン6X6シビリアン・キャリア』の車両価格は約25万ポンド(約3600万円)と、メルセデスAMG『G63 6×6』には及ばないにせよ、かなり高価だ。現実的はひと握りの超富裕層が顧客になるのではないか。中東の王族が欲しがりそうだ。

ファミリー向けカスタムカーなのに、なぜ軍用車両のように攻撃的なルックスなのか

少々疑問に感じるのは、ファミリー向けのコンセプトにそぐわない、攻撃的でいかつい外観だ。緻密な加工技術は見事なのだが、その威圧感はまるで軍用車両のようでもある。ボディカラーも装甲車ライクなダークグレーで統一され、整然とした印象のサイドパネルも軍用車両がもつ合理性や機能性を感じさせる。それらを含めて新しいスタイリングパッケージに仕上げているとすれば、このルックスもチャレンジポイントなのかもしれない。

「われわれはカスタムカーを作っているとは思っていない。独自の企画力とそれを実現する技術、そして世界に通用する品質をもって独創的な車両を生み出している。まだまだアイデアは尽きないし、これから作る未来のクルマにワクワクしている」。これは製作責任者のアフザル・カーンの言葉だ。この先もさらに途轍もないクルマが登場するのだろう。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Chelsea Truck Company
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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