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第11回 | 美しく輝く世界のディーバたち

カミラ・カベロ──キューバ美女は若き移民イノベーター

アメリカの政府機関は、年末から2月中旬までひと月以上も一部閉鎖されていた。原因は不法移民対策をめぐる与野党の対立。移民をめぐる問題は今、それぐらいアメリカを大きく揺るがしているのだ。そうしたなかで、移民としてのアイデンティティを強く打ち出して支持を集める美しいディーバがいる。それがキューバ出身のカミラ・カベロだ。

経済誌『フォーブス』が選ぶ「若き移民30名」に名を連ねた21歳の美しいディーバ

グラミー賞はアメリカ随一の音楽の祭典だが、同時に世界でもっとも権威のある音楽賞でもある。映画のアカデミー賞、テレビのエミー賞と同列のアワードと考えていい。

今年2月10日に授賞式が行われた第61回グラミー賞は、人種差別、男女平等、性的指向の平等、そして政治的な対立と、現在のアメリカが抱える諸問題が透けて見えるようなイベントとなった。この授賞式でオープニングアクトを飾ったのが、自身のアルバム『カミラ』がベストポップボーカルアルバム部門にノミネートされたカミラ・カベロである。

ヒット曲『ハバナ』では、プエルトリコ出身のリッキー・マーティンもパフォーマンスに加わり、豪華なコラボレーションが実現。カミラは自身のルーツを掘り下げた活動により、アメリカに生活するヒスパニック系のアイコン的存在になっている。経済誌『フォーブス』の「目覚ましい業績を上げた30歳未満の移民30名」のひとりにも選ばれたほどだ。

(C) PA Photos/amanaimages

超人気グループ「フィフス・ハーモニー」を脱退してまでラティーノ・ポップを追求

故郷への愛を歌った代表曲のタイトルが示すとおり、カミラはカリブ海域最大の都市であるキューバの首都ハバナの出身だ。1997年にメキシコ出身の父とキューバ人の母のあいだに生まれ、6歳のときにバックパックひとつで母とともにフロリダ州マイアミへ移住してきた。彼女自身もまた、アメリカを揺るがす「移民」のひとりなのである。

キューバ系移民のカミラを成功へと導いたのは、2012年にボーイズバンドのワン・ダイレクションを輩出したことで知られるイギリスのオーディション番組、『Xファクター』アメリカ版への出演だった。カミラは、この番組の出身者で結成された5人組のガールズグループ、フィフス・ハーモニーのメンバーとなり、2013年にデビューをはたす。

フィフス・ハーモニーはクリスマスにホワイトハウスでパフォーマンスを行うなど注目を集め、15年2月にファーストアルバム『リフレクション』をリリース。『ビルボード』誌の年間最優秀女性グループ賞に輝くなど実力派ガールズグループとして高く評価され、アメリカ版『Xファクター』出身者としてもっとも成功を収めたアーティストとなった。

もっとも、カミラはこれを成功と捉えていなかったのかもしれない。もともと彼女はソロ活動にも積極的で、2015年にはカナダ出身のシンガーソングライター、ショーン・メンデスのシングルにフューチャリングされるなど、独自の音楽活動を展開。そして2016年12月に突然発表されたのが、カミラのフィフス・ハーモニー脱退だった。

この電撃的な脱退劇には、メンバー間に確執があったこと、アイドルグループとして過度に性的なアピールを強いられたことなど、さまざまな噂がささやかれた。しかし、脱退の大きな理由のひとつに純粋な音楽的欲求、もっといえばラティーノ・ポップの追求があったことは間違いないだろう。そこにあるのはヒスパニックとしてのアイデンティティだ。

2017年5月に初のソロシングル『クライング・イン・ザ・クラブ』を発表し、同年9月にはラテンテイストが色濃く漂う『ハバナ』をリリース。この『ハバナ』と2018年1月に発表したファーストアルバム『カミラ』は、ともに全米チャート1位を記録する大ヒットとなった。ルーツであるキューバの音楽、そしてラテンのリズムを取り入れた楽曲は多くのファンに受け入れられ、カミラは世界的なブレイクスルーをはたすのである。

(C) Sipa USA/amanaimages

グラミー賞授賞式のステージでカミラ・カベロがスピーチした「ドリーマー」とは?

いまやカミラの存在は、トランプ政権下でそのアイデンティティを問われているヒスパニック系移民のアイコンとなっている。彼女はグラミー賞の授賞式で、アイルランド出身の大物ロックバンドU2を紹介する際に、こうスピーチを始めた。「私は今夜、“ドリーマー”のおかげでこのステージに立っています」。カミラが口にした「ドリーマー」とは、幼少時に両親とともにアメリカへ不法入国した若い移民たちのことを意味する。

さらに移民として苦労を重ねてきた両親に感謝すると、「私はキューバ・メキシコ系移民であることを誇りに思うし、ハバナに生まれたこと、そしていまニューヨークのグラミー賞のステージに立てたことを誇りに思います」と述べ、会場から大きな拍手を受けた。こうした移民としての発信がアメリカの各界から注目を集め、彼女は『フォーブス』から「目覚ましい業績をあげた30歳未満の移民30名」のひとりに選出されたわけだ。

グラミー賞でカミラが『ハバナ』を歌っていたとき、ステージ上の出演者が読んでいた新聞には大きな文字で「Build Bridges No Wall(壁ではなく橋を作ろう)」と書かれていた。ここでいう「壁」とは、むろんトランプ大統領が公約に掲げたメキシコ国境につくる壁のことだ。アメリカ政府機関の一部閉鎖も、この壁の建設予算をめぐる対立に起因する。

自らのルーツを誇り、家族を敬い、何よりも最高の音楽を通してメッセージを発信しつづけているカミラ・カベロは、まさに時代を代表するアーティストになろうとしている。

Text by Kiyoshiro Somari
Photo by (C) Pacific Coast News/amanaimages(main)
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Camila Cabello – Havana オフィシャル動画
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