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第2回 | 【業界動向】急成長中のインバウンド領域での商機とは?

MATCHAが注目する、インバウンド領域における長期滞在ニーズとは

昨今のインバウンドブームを受け、さまざまな分野で多彩なプレイヤーたちが凌ぎを削っているが、メディアもまた同様である。世界最大の訪日観光プラットフォームを目指す『MATCHA』は、外国籍の編集スタッフを起用するなど、外国人観光客視点での情報発信を徹底し、今では月間238万UU 、539万PVにまで成長。では、そんなメディアの側からは、今後のインバウンド市場の可能性はどう見えているのか? 代表取締役の青木優氏を直撃した。

「地域」が持つ知られざるパワーに着目

――まずは『MATCHA』というメディアを立ち上げようと考えた経緯から教えてください。

僕はもともと明治大学の国際日本学部という、ちょっと変わった学部に在籍していたんです。これは日本の文化を学問として学び、世界に向けて発信することを目的とした学部です。そこで先生がよく、「日本のアニメや漫画、ファッションは世界でも流行っているが、日本人はそこでビジネスをやれていない」と、何度も繰り返し語っていたことが、『MATCHA』を立ち上げる1つのきっかけになっています。もともと起業を考えていたので、この分野にはチャンスがありそうだな、と。

――在学中には世界一周旅行も経験されていますね。

休学して、7カ月かけて18カ国ほどまわってきたのですが、これは日本の文化が世界でどう見られているのかを知る、非常にいい機会でした。同時に、日本や東京のことをうまく説明できない自分に気づかされたことも、こうした日本を発信するメディアをやろうという動機につながっています。

――それは、日本の特徴を捉えきれていなかったということでしょうか?

そうですね。海外の人に「東京って何があるの?」と聞かれても、意外とすぐに答えられないんですよ。これはバックパッカー経験のある人が、わりと共通して口にすることでもあります。そこで世界一周から戻ってすぐに、今度は日本を重点的に見て回ろうと決めたんです。

例えば先日も香川県へ行ってきたばかりなのですが、向こうでは新しいうどん屋さんができたことで、ファーストフード店が撤退を余儀なくされたりするんです。地域の産業に外資を追い払ってしまうほどのパワーがあるのはとても面白い事実ですし、僕たちはもっとこうした地域の魅力を知っておかなければならないと感じています。

――そこで着目されたのが、Webメディアであったわけですね。

最初は映像による発信をイメージしていて、大学を卒業したあとは、いったん映像制作会社に入りました。そこで半年ほど経験を積んでから独立し、起業したのが2013年12月。『MATCHA』のローンチが翌2014年の2月です。

外国人ユーザーにもわかりやすい構成を

――訪日外国人が対象とあり、『MATCHA』は英語や中国語、スペイン語など、多数の言語に対応しています。あえて日本語モードが用意されているのは?

日本人に向けた情報発信を目的とするのはもちろん、日本人ユーザーの方が海外にいる友人に向けて記事を紹介するような使い方も想定しています。また、「日本語」のほかに「やさしい日本語」というモードを用意していて、こちらは日本語を学びたいコアな外国人観光客に向けたものです。

――外国人を対象とすることで、記事の構成などで配慮している点は?

たとえば「これは江戸時代の建物です」と書いても、それがいつの時代なのか外国の人にはわかりません。そこで西暦で記すようにしたり、用語の解説ページへのリンクを貼ったり、できるだけわかりやすい記事づくりを徹底しているつもりです。

また、当たり前のことですが、知られていない地域の情報は検索されません。そのため、まだ知名度の低い地域を取り上げる際は、付近のメジャーなスポットと合わせて紹介するなど、記事にたどりついてもらうための工夫は常に考えています。

――現在、世界244の国と地域からアクセスを集めているという『MATCHA』。アクセス上位はやはりアジア圏ですか?

そうですね。ランキングでは、1位が台湾、2位がタイ、そして3位が香港となっています。このあたりは物理的な距離が近く、旅行先として日本を考えている人が多いため、我々も今はそうしたアジア圏を意識した情報発信を行なっています。もちろん将来的には、人口の多い欧米圏も有力な市場になるでしょう。

今後は中長期滞在向けのコンテンツづくりが急務

――『MATCHA』の記事を拝読していると、日本人でも興味深い観光情報がたくさんありますね。

結局、自分たちにとって当たり前になっていることって、それがどれほど面白いことでも気づけないんですよね。以前、コンビニのおにぎりの開け方を、絵解きで解説しただけの記事をつくったところ、かなりのアクセスを集めました。僕らにとっては日常的なものであっても、外国の方にはまるでパズルのような仕組みで、簡単に開けられないわけです。

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――そうした読者傾向を分析していく中で、近年、日本のインバウンド市場にどのような変化を感じていますか。

観光はこれまで、観たり触れたりすることがメインでしたが、今後はそれが一歩進んで、“習得”することに発展するのではないかと僕は考えています。1泊2日で終わりではなく、1週間、2週間といった長期の滞在によって、その後の人生に残る体験が求められていくのではないかと。いわば滞在学習型の観光ですね。

先ほど香川県へ行ってきた話をしましたが、主な目的は「うどんハウス」(三豊市)という取り組みを視察することでした。これは国内外の観光客がうどんを打って食べて泊まれることをテーマにした宿泊施設で、まさに僕がイメージしている滞在学習型の取り組みの1つです。

――今後は中長期滞在がカギになる。これは非常に興味深い視点です。

僕が中長期滞在に注目したのは、昨年の夏、星野リゾートの星野佳路社長と一緒にニュージーランドを訪れたことがきっかけなんです。ニュージーランドが面白いのは、3~4日滞在する人よりも、1カ月くらいの長期で滞在する人が多い点です。星野さん自身もそうです。

これは実は日本人には欠けている視点で、欧米には年の始めにまず、休暇から設定する人もいるほどです。しかし、日本人は基本的に長期休暇をとった経験が薄いため、中長期滞在向けのコンテンツを考えられる人があまりいないんですね。

では、中長期滞在の観光客には何が求められるかというと、僕は学びだと考えています。星野さんはニュージーランドで主にスキーをやっていましたが、日々、前進や上達を実感できる何かがあれば、中長期滞在のニーズに応えることができるはずなんですよ。

――そのためにはまず、サービスを提供する側の意識改革が必要ですね。

そうですね。そこでまずは、星野さんのように自ら長期休暇を体験することだって必要だと思いますし。

受け入れ側の体制というのはやはり重要で、たとえば日本の旅館の多くは、2~3泊くらいまでしか想定されていないため、それ以上の連泊になると料理のバリエーションが足りなくなることがあります。これでは長期滞在を望むお客さんを満足させることなどできません。

つまりはいま欠けているものをいかに補うか。これからさらにインバウンド市場を盛り上げるために、『MATCHA』でも引き続きこうした課題を訴えていきたいですね。

Text by Satoshi Tomokiyo
Photo by Rikako Kanazawa

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