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第1回 | 【業界動向】急成長中のインバウンド領域での商機とは?

トリップアドバイザーに見る、インバウンドの最新トレンド

訪日外国人が3000万人を突破し、活況が続くインバウンド市場。しかし、すでに多くの事業者が参入するこの分野において、新たな成長領域を見出すのは簡単ではない。そこで、世界最大の旅行サイト「トリップアドバイザー」を直撃し、近年のアクセス傾向から、訪日外国人が求めるものや今後に向けた課題を読み解こうというのが本稿の目的。日本支社代表取締役、牧野友衛氏に話を聞いた。

インバウンド市場で「東京」と競合する都市は?

――トリップアドバイザーを利用する訪日外国人の動向には、近年どのような傾向が見られますか。

トリップアドバイザーはもともと2000年にアメリカで設立された企業で、欧米からアジア圏に広がってきた経緯があります。そのためアクセス元としては長らくアメリカがトップでしたが、昨今の訪日外国人の8割以上がアジアからの旅行客であるように、ここ1年で中国からのアクセスが急増しています。

――見方を変えれば、アクセス数ほどにはまだまだ欧米から観光客を呼べていない現状があるわけですね。

そうですね。これはトリップアドバイザーの使われ方にも理由があって、ユーザーは必ずしも行き先を決めた上でアクセスしているわけではありません。次の長期休暇に向けて、アジアならアジアと、おおよそのエリアを絞ってトリップアドバイザーをチェックし始めるユーザーが多数なんです。そのため、アメリカから多くのアクセスがあったとしても、結果的に行き先が日本になるとは限らないわけです。

ちなみにデータを見てみると、東京をチェックしているユーザーの多くは、同じアジア圏の都市よりも、パリやロンドン、バルセロナといった大都市を合わせてチェックしていることがわかります。つまり、日本が目的地なのではなく、世界の代表的な都市を旅したいというニーズですね。

――なるほど。東京の競合は、必ずしも大阪や京都ではないということですね。

例えば同じ英語圏であっても、アメリカ、イギリス、オーストラリアでは、それぞれ見られている地域が異なります。唯一、ベスト10に兵庫県が入っているのがアメリカで、これは世界遺産の姫路城に対する関心と見てとれます。やはり世界遺産の注目度は高く、同様に京都や岐阜、広島なども人気です。イギリスとオーストラリアは共に長野がランクインしますが、これはスキー目的と考えられます。

体験型アクティビティのニーズが伸びている

――ほんの1~2年前までは、中国人旅行者による爆買いが話題を集めていました。インバウンド需要の最新トレンドには、どのような変化が見られるでしょうか。

トリップアドバイザーのアクセスが上がっている理由の1つに、体験型のアクティビティへの伸びが見られます。

トリップアドバイザーは大まかに、「ホテル」「レストラン」「観光」という3つのカテゴリーに分類できます。「観光」の中には景勝地や寺社仏閣、体験型のツアーなどが含まれているのですが、クチコミを分析してみると、とりわけ体験型のアクティビティに対する興味がここ1~2年で急速に上昇していることがわかります。

――アクティビティが伸びている理由を、どのように分析されますか。

これは実は、日本だけでなく世界的な傾向でもあるんです。その原因を特定するのは難しいですが、個人的には他の分野と比べ、最もオンライン化が遅れたことに理由があるのではないかと推測しています。ホテル予約やレストラン予約は、早い段階からオンライン対応が進んでいましたが、アクティビティがオンラインで予約できるようになったのはわりと最近のことです。

また、ミレニアル世代のモノよりコトへの消費の移行も、理由の1つかもしれません。それと、リピーターが増えたことにより、行程にアクティビティを取り入れる時間のゆとりが生まれたことも考えられるでしょう。

――では、現在とくに人気の高い日本のアクティビティは?

最近は街歩き系のアクティビティに関心が集まっています。徒歩や自転車、あるいはタクシーなど、手段は様々であっても「街を見て回りたい」というニーズは間違いなく増しています。

2020年をゴールとせず、最大の宣伝の場とすべき

――訪日外国人にとって大きな旅の指標となる、トリップアドバイザーのランキング。これはどのように生成されているのでしょうか。

トリップアドバイザーの仕組みは非常にシンプルで、投稿されたクチコミの数と評価を元にランキングが生成されます。誰しも土地勘のない国を旅する際は、人気の高いスポットを中心にまずチェックしますから、どうしてもランキング上位のスポットは注目されやすく、有利であるのは事実です。

しかしその反面、長らくランキング上位につけているスポットは、それだけ期待値も高くなりますから、実際に行ってみてガッカリしてしまうユーザーも出てきます。そのためランキングは定期的に入れ替わる傾向があり、ユーザーの評価に基づくオーガニックな結果が反映されていると言えます。


――これからさらに増えることが予想される訪日観光客。迎える日本の各事業者にとって、現状の課題は何でしょうか。

成長領域である体験型アクティビティの分野においては、プレイヤーがまだ不足している印象です。弊社でも国内向け、海外向けを問わず、アクティビティを提供する事業者とユーザーを繋ぐ仕組みづくりを進めている最中です。

――アクティビティ提供が進まないのは、英語圏ではない弱みの表れでしょうか。

私はそうは思いません。ガイドする人は英語が堪能であるに越したことはないでしょうが、必ずしも流暢な会話を求められているわけではなく、必要な言葉さえ覚えれば対応可能なはず。むしろ英語を話せることより、もてなそうとする姿勢、お客さんの要求にできるだけ応えようとする姿勢こそが大切で、それはたとえ言葉がカタコトであっても必ず伝わるものだと思います。

――なるほど。それはアクティビティのみならず、飲食店などにも言えることですね。

そうですね。昨今、インバウンドに関する課題は、言葉の問題やWi-Fiスポットの不足など、わかりやすい点ばかりがピックアップされがちです。しかし、それらを理由に訪日を避ける外国人がいるかというと、実際はそうではありません。観光地としての魅力が高ければ、人はそうした問題を乗り越えるものです。

その上で、それぞれの事業者の実務的な課題をあぶり出すには、トリップアドバイザーで厳しい評価のついている同業者をチェックするのが手っ取り早いのではないでしょうか。評価されない店舗は、どのような点が批判されているのか、何ができていないのかが、非常にわかりやすくまとまっていますからね。

――訪日外国人「2030年に6000万人」という政府目標に向け、まだまだやるべきことはたくさんありそうですね。

過去の例を見ても、オリンピック開催後はどの都市でもインバウンド需要は伸びる傾向があります。その意味で、2020年をゴールと捉えるのではなく、世界に向けた壮大な宣伝の場と考えるべきでしょう。旅先としての魅力を伝えられれば、世界中からやってきた人々が、それぞれの国に戻ってそれをクチコミで広げてくれるわけですから、新たな訪日観光客を呼び込むチャンスに繋がるはずです。日本のインバウンド市場には、まだまだ大きな伸びしろがあると感じています。

Text by Satoshi Tomokiyo
Photo by Rikako Kanazawa

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