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第54回 | 大人ライダー向けのバイク

ランブレッタ復活──さらば青春の光に憧れた大人たちへ

いまの大人たちが生まれたころ、あるいは生まれる前、イギリスで「モッズ」というムーブメントが流行した。モッズ(MODS)はモダーンズ(MODERNS)の略。音楽やファッションをベースとしたライフスタイルを指す。往時を知らなくても、冬になるとモッズコートを愛用し、映画『さらば青春の光』でモッズに触れた人も多いだろう。この映画で主人公のジミーが跨っていたのがイタリアンスクーターの「ランブレッタ」だ。長らく生産が途絶えていたが、昨年のミラノショーでニューモデルが発表され、国内でも4月から販売が始まっている。

ヨーロッパのシニカルな若者たちは、あえてベスパではなくランブレッタを選んだ

ランブレッタはベスパと並ぶイタリアンスクーターの代名詞だ。革靴を汚す心配のない便利なモビリティとして若者や女性に人気を集め、スクーターの存在を世界中に知らしめた。

1960年代にイギリスで流行したモッズの愛車がランブレッタだったこともあり、かつてヨーロッパにはシニカルな若者はベスパではなくランブレッタに乗るという図式があった。『さらば青春の光』を見た人ならご存じのとおり、髪はリーゼントではなく前に流したモッズヘア。アイビーリーグ風の細身スーツにナロータイをつけ、そこへM-51(米軍のミリタリーパーカー)を引っかけてランブレッタに跨る、というのがモッズファッションの基本だったのだ。

彼らがロッカーズ(同時期にイギリスで流行した若者カルチャー)のようにカフェレーサーに乗らず、スクーターを好んだのは、むろんスーツを汚さないようにするためである。

ランブレッタの最盛期はモッズが流行する前の1950年代にさかのぼる。製造元はイタリアのイノチェンティ。第二次世界大戦後の復興のなかで、動力付きの移動手段としては廉価だったことで広く普及し、一時期は世界各国でライセンス生産されるほど市場を広げた。

しかし、経済成長にとともに人々の移動手段はクルマへと移行し、結果、ランブレッタは1971年に生産を終えることとなる。それでもライセンス契約を結んだメーカーが残った部品を使って生産を続けたが、これも1990年代には終了。以降、「Lambretta」のブランドを受け継ぐスクーターは途絶えたままとなっていたのだ。今回の復活は、じつに47年ぶりとなる。

新生ランブレッタが発表した3モデル。47年ぶりの復活劇に日本のファンも驚いた

ブランド復活の狼煙は昨年のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)で上げられた。販売元はイノチェンティとオーストリアのKSRグループが共同設立したLambretta GmbH(ランブレッタ有限会社)。発表されたのは、『V50』『V125』『V200』の3モデルだ。

そのあとの東京モーターサイクルショーでも3モデルが披露されたが、このとき初めてブランド復活を知ったユーザーがランブレッタブースを見つけて凝視する姿が多く見られた。うれしいのと同時に半信半疑でもあったのだろう。それだけ驚きのニュースだったのだ。

さて、新生ランブレッタだが、スタイリングは現代的で洗練されたデザインに生まれ変わった。それでいて固定式のフロントフェンダー(可動式も選べる)や独特のテールランプ周りには往時のイメージも残す。フロントブレーキはディスクだが、ドラムブレーキ風にデザインされたホイールハブなど、“クラシック・ランブレッタ”を強く意識した工夫も見受けられる。

デザインはイタリアの得意分野と思うかもしれないが、スタイリングを担当したのは意外にもオーストリアの「KISKA Design(キスカ デザイン)」。KTMやハスクバーナといったブランドのデザインも担当するデザイン会社だが、それらの攻撃的なスタイリングと違い、スクーターとしての、またランブレッタとしてのカタチはしっかり配慮されているようだ。

新生ランブレッタのモデルラインナップは「50cc」「125cc」「200cc」の3種類

エンジンは時代の要請に合わせて4ストロークの電子制御インジェクションを採用(『V50』を除く)。モデル名でわかるとおり、50cc、125cc、200ccの3種類をラインナップする。

各モデルのスペックは、『V50 Special』が最高出力2.6kW(3.5ps)/7500rpm。この50ccモデルのみ燃料供給方式にキャブレターを採用する。『V125 Special』の最高出力は7.5kW(10.1ps)/8500rpm。こちらには前後連動ブレーキシステムが盛り込まれた。最大排気量モデルの『V200 Special』の最高出力は8.9kW(12.1ps)/7500rpm。125ccモデルと基本的な仕様は変わらないが、200ccモデルにはボッシュ製のABSが標準装備される。

メカニズム的にもっとも注目したいのは、伝統的なスチール製モノコックフレームを継承していることだ。ステアリングからエンジン周りにいたる強度メンバーは鋼管で構成し、レッグシールドやシート下の外骨格などはプレス鋼板。これにより樹脂パーツでは得られない質感と走行時の安心感を得られるわけだが、カスタムベースにしやすいことも見逃せない。

ライト類はいずれのモデルもLEDを採用。シート下にはフルフェイスヘルメットも収納可能なラゲッジスペースを持つ。さらにラゲッジフック、グローブボックス、USBアウトレットなども装備し、スクーターらしく日常使いの実用性にも十分な配慮がされている。

価格は38万円から45万円まで。田園調布にランブレッタ東京ショールームもオープン

ボディカラーは全8色を展開。排気量、そしてFix Fender(固定式)とFlex Fender(可動式)の2つのフェンダータイプの組み合わせによってラインナップが構成される。

カラーと価格は次のとおりだ。『V50 Special』は38万円で、Fix Fenderがマットグレー、オレンジの2色、Flex Fenderはレッド、ブルー、ホワイト、ブラックの4色。『V125 Special』は40万円で、カラーラインナップは50ccモデルと同じ。『V200 Special』は45万円で、Fix Fenderがオレンジ、シルバーブルーの2色、Flex Fenderがブルー、ホワイト、ブラック、ブラウンの4色を展開する。価格はいずれも税込みだ。

ブランド復活にともない、日本ではサインハウスが正規ディーラーとなり、すでに田園調布の環状八号線沿いに瀟洒なショールームをオープンしている。すぐにでも入手が可能だ。

『さらば青春の光』でモッズカルチャーに憧れた若者たちは、いまや大人の男となった。彼らが新生ランブレッタを受け入れるかどうかはわからない。しかし、スーツも似合うこのスクーターには、日本製にはないイタリアンな“エッセンス”があることは間違いない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) KSR Group GmbH,
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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