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第12回 | 世間を騒がせるゴージャスセレブ

『クレイジー・リッチ!』を成功に導いた3つのサプライズ

「慣例・前例への追従」「マジョリティへの迎合」といった圧力はどの業界にも存在する。ビジネスパーソンなら一度は経験したことがあるはずだ。しかし、その力に屈しているかぎり、サプライズを起こすことはできない。それを教えてくれたのが全米で大ヒットした『クレイジー・リッチ!』である。この映画の背景には、大人の男が学ぶべき要素が詰まっている。

ホワイトウォッシュを拒否し、アジア人キャストを貫いた『クレイジー・リッチ!』

『クレイジー・リッチ!』は、いわゆる「ロマンティック・コメディ」に属する作品だ。ニューヨークで生まれ育った中国系アメリカ人のレイチェルはアラサー女子。恋人のニックとともに彼の故郷であるシンガポールを訪ねると、恋人の家が想像以上の大金持ちで、その家族や友人はまさにクレイジーでリッチなセレブ揃いだった…。こんなストーリーの映画である。

ところが、この一見なんの変哲もなさそうなロマコメがなぜか全米でサプライズヒット。その評判は日本を含め、いまや世界中に広がっている。なぜ『クレイジー・リッチ!』は成功することができたのか。そこにはいくつもの「サプライズ」が重なり合っていたのだ。

最初のサプライズは、主要キャストをすべてアジア系俳優にしたことだ。

『クレイジー・リッチ!』は、アメリカに帰化したシンガポール人作家のケヴィン・クワンが2013年に発表した小説、『クレイジー・リッチ・アジアンズ』を原作としている。アメリカの映画界では、こういう場合、キャストを白人に変更するのが常だった。事実、本作でも配給会社などがそう提案してきたという。近年問題視されている「ホワイトウォッシュ」だ。

しかし、製作総指揮のケヴィン・クワンをはじめ、現場の製作陣はこのホワイトウォッシュをはねのけ、あくまでもアジア人キャストにこだわってクランクインにこぎつけたのである。

(C) Capital Pictures/amanaimages

そこに問題や課題が山積しても、エンターテインメント力で乗り越えることができる

次のサプライズは、アジア人キャストにこだわったことにより、マネーメイキングスターがいっさい出演しなかったことだ。

ニックの母親役のミシェル・ヨーは、1997年の『007トゥモロー・ネバー・ダイ』でボンドガールを演じたこともあるベテラン女優だが、知名度があるのは彼女ぐらい。ヒロインのレイチェルを演じたコンスタンス・ウーはABCのコメディドラマへの出演でブレイクしたが、映画スターとしては未知数だ。ニック役のヘンリー・ゴールディングも、その嫌味のないイケメンぶりから現在引く手あまたとなっているが、製作時はアメリカで無名の存在だった。

そして最大のサプライズが、全米公開とともに興行収入1位を記録し、そのまま3週連続でナンバーワンをキープする大ヒットとなったことである。

普通の女の子が王子様に見初められ、結ばれる。いってみれば普遍的なシンデレラストーリーだが、そこへ笑いと涙、アジア人のリアルな姿や心情まで盛り込んでいる。結果、批評家に絶賛され、あらゆる観客を楽しませることに成功した。早くも続編が進行しているほどだ。

ハリウッドでは近年、ホワイトウォッシュだけではなく、セクハラ、人種差別、中国資本の流入など、さまざまな問題が表面化している。『クレイジー・リッチ!』は、こうした問題に意識的でありながらも、作品自体の面白さで映画業界と観客からの評価を勝ち取った。

そこに問題や課題が山積していても、エンターテインメントの力で乗り越えることができる。それを証明したのが『クレイジー・リッチ!』の一番のサプライズだったのかもしれない。

Text by Kiyoshiro Somari
Photo by (C) Everett Collection/amanaimages(main)
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
映画『クレイジー・リッチ!』トレイラー

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