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第3回 | 今さら聞けない「宇宙ビジネス」の基礎知識

宇宙を市場に変えた男「イーロン・マスク」の野望とは?

世界を動かす巨大なIT企業たちが今、先を争って「未開の市場」というべき宇宙へ向かっている。この宇宙ビジネスを切り拓いた先駆者は、間違いなくイーロン・マスクだ。そう、ZOZOTOWNの前澤友作氏を月旅行の最初の乗客に迎えると発表して話題となったあの人物である。彼が目論む最終的な計画は、なんと「火星への移住」。全4回でお届けする<今さら聞けない「宇宙ビジネス」の基礎知識>。イーロン・マスクの目に映る宇宙ビジネスの可能性とは?

イーロン・マスクは世界の自動車業界を変えただけではなく宇宙ビジネスをも変えた

エディトゥール読者にとって、イーロン・マスクは宇宙ビジネスの最前線にいるプレイヤーというより、高級EVブランド「テスラ」のCEOとしてなじみ深いかもしれない。

しかし、オンライン決済システム「ペイパル」の共同設立者である彼が、その株式を売却した資金で最初に立ち上げたのは宇宙開発ベンチャーの「スペースX」だった。イーロン・マスクは「世界の自動車業界を変えた男」だが、同時に「宇宙ビジネスを変えた男」でもあるのだ。

宇宙ビジネスコンサルタントとして欧米の宇宙プロジェクトに参画してきた大貫美鈴氏の『宇宙ビジネスの衝撃──21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』(ダイヤモンド社)には、イーロン・マスクと彼が行っている宇宙ビジネスについて詳しく書かれている。

本書によれば、イーロン・マスクの野望は2つあるという。ひとつは地球環境を守るための持続可能な新エネルギーを実現すること。そしてもうひとつが「宇宙への移住」だ。

スペースXがロケット市場でシェアを伸ばす最大の要因は「ロケットの価格破壊」

イーロン・マスクの宇宙ビジネスの主力は宇宙輸送を担うロケット事業だ。地上の輸送にトラックがあるように、宇宙にも物資を運ぶ手段、つまりロケットが必要となる。イーロン・マスクが率いるスペースXは、この宇宙輸送の市場でシェアを急速に伸ばしているという。

たとえば、衛星放送の「スカパー!」を運営するスカパーJASTの通信衛星「JCSAT-16」を打ち上げたのはスペースXだ。国際宇宙ステーション(ISS)にNASA(アメリカ航空宇宙局)から物資を補給する際には、スペースXのロケット「ファルコン9」が使用されている。

ボーイングやロッキードといった超巨大メーカーがひしめくロケット市場で、なぜ新興企業であるスペースXがシェアを伸ばすことができたのか。その理由は「低コスト」にある。ほかのメーカーは、エンジン、コンポーネント、パーツなどを他社から仕入れるが、スペースXはすべて自社で開発しているという。これが大幅なコストダウンにつながっているのだ。

事実、大型ロケットの打ち上げには通常100億円から200億円の費用がかかるが、スペースXの打ち上げ費用は60億円余り。しかも、ロケットの再利用によって、さらに30%のコストダウンを予定しているという。まさに「ロケットの価格破壊」。そこには、ロケットの製造工程を分析してより効率化をはかるといった「IT企業ならではの視点」も生かされている。

もはやSFじゃない。イーロン・マスクが最終的に目指しているのは「火星への移住」

さらにイーロン・マスクは独自の衛星ネットワークにも挑戦する予定だ。世界中を高速インターネットによって切れ目なくつなぎ、地球上のすべてのコネクティビティを実現するという極めて大規模な衛星ネットワークの運用計画である。発表時には世界中が度肝を抜かれた。

しかし、本書によると、ダイナミックで新しい取り組みもあるが、イーロン・マスクが最終的に目指しているものは当初から変わっていないという。それが「火星移住」だ。しかもハッタリで大きなことを言っている「夢物語」ではなく、これはあくまで「計画」なのである。

イーロン・マスクの行動を見ていると、もはや火星への移住がSFの世界ではなくなりつつあると思えてくる。とはいえ、人類は本当に火星に移り住むことができるのだろうか?

Text by Kiyoshi Nanamori
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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