メディア個別 魚と大動脈瘤の関係。魚を食べないと死亡リスクが高まる | editeur エディトゥール

editeur

検索
第26回 | エディトゥールPRIME

魚と大動脈瘤の関係。魚を食べないと死亡リスクが高まる

日本は四方を海に囲まれた島国で、周辺の海から多くの魚が水揚げされる。古くから日本人の生活に魚は切っても切り離せないものだった。しかし1990年代後半から魚の需要が減り、2006年には初めて肉類の摂取量が魚介類を上回った。かつては40代以上になると肉よりも魚を食べる頻度が増える傾向があったが、いまや全世代で“魚離れ”が進んでいる。結果、顕在化しつつあるのが「健康リスク」だ。国立がん研究センターと筑波大学のグループが発表した研究結果によると、魚をほとんど食べない人は大動脈瘤などで死亡するリスクが高まるという。

近年死亡数が増加している大動脈瘤と大動脈解離。重要なのは何よりも「予防」

大動脈とは、心臓から送り出された血液が最初に通る、人体でもっとも太い血管のこと。樹木のように幹から枝へと細かく枝分かれしながら、体のすみずみまで血液を運んでくれる。

この大動脈瘤がこぶのように病的に膨らんだ状態を「大動脈瘤」という。その大きさは30mmから40mm。できた場所によって胸部大動脈瘤などと呼ばれる。一方、内膜、中膜、外膜の3層に分かれた大動脈のうち、中膜がなんらかの原因で裂け、もともと大動脈の「壁」だった部分に血液が流れ込んで大動脈内にふたつの通り道ができてしまうのが「大動脈解離」だ。

これらの大動脈疾患の死亡率は、以前の日本ではそれほど高くなかったという。しかし、近年は高齢化にともなって死亡数が増加。大動脈瘤が破裂したり、大動脈が裂けたりすると、医療が進んだ現代でも一気に死にいたることが多いのだ。そのため何よりも予防が重要となる。

ではどうやって予防すればいいのか。大動脈疾患の大きな要因に動脈硬化があり、魚を食べることで予防につながるというのが定説だ。魚に含まれる脂肪酸「EPA」は血液をサラサラにしてくれる。とはいえ、じつはそこに科学的エビデンスはほとんどなかった。そこで国立がん研究センターなどの研究グループが明らかにしたのが「魚と大動脈疾患の深い関係」だ

魚を食べない人は週1~2回食べる人に比べて大動脈疾患の死亡リスクが2倍に増す

本研究はじつに大規模なものだ。ベースとなったのは生活習慣と病気との関連を調べた国内8つの追跡研究。国立がん研究センターなどのグループは、そのうち食習慣に関する膨大なアンケート結果を解析し、40歳以上、計36万6000人のデータをもとに調査を行った。

調査はアンケート結果を「魚を食べる回数」で5つのグループに分類。「ほとんど食べない」「月1~2回」「週1~2回」「週3~4回」「ほとんど毎日」の5つだ。その結果わかったのが「魚を食べないと大動脈疾患による死亡リスクが高くなる」という恐るべき事実である。

5つのグループのうち、魚を食べる頻度が「週1~2回」の人たちに比べ、「ほとんど食べない」という人たちは大動脈瘤や大動脈解離で死亡するリスクが1.9倍も高かったのだ。これは統計学的にも有意な違いなので、魚を食べない人は十分に気をつけたほうがよさそうだ。

その一方、魚を食べる頻度が「月1~2回」「週1~2回」「週3~4回」「ほとんど毎日」の人たちを比べると、そこに有意な差はほとんど見られなかったという。つまり、最低でも魚を「月1~2回」以上食べていれば、それだけで大動脈疾患の予防につながるということだ。

魚をより多く食べると、急性心筋梗塞など循環器のすべての病気の予防につながる

研究グループによれば、魚をより多く食べることは大動脈疾患だけではなく、心筋梗塞のリスクも低下させてくれるという。急性心筋梗塞もほとんどの原因に動脈硬化が関係している。

急性心筋梗塞は、心臓を養う血管である冠状動脈の急激な狭窄や閉塞によって、心臓の筋肉に血液が流れなくなってしまうこと。時間の経過とともに心筋が壊死していくため生命にかかわる疾患だ。緊急入院して仮に命が助かっても、心不全や不整脈などの後遺症を残す。

魚を食べることは、循環器(心臓・血管・リンパ管)のすべての病気の予防につながるわけである。「肉のほうが好き」という人の気持ちもわからないでもないが、40代ならできれば「月1~2回」といわず、より多く魚を食べたほうが健康リスクを低減することができそうだ。

Text by Kiyoshi Nanamori
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

editeur

検索