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第1回 | 今さら聞けない「宇宙ビジネス」の基礎知識

狙いは21世紀の黄金。大金持ちが宇宙を目指す本当の理由

ZOZOTOWNの前澤友作氏が月旅行計画を発表したのは9月中旬のこと。高級EVブランド「テスラ」のCEOとして知られるイーロン・マスクが手がける宇宙開発ベンチャー企業、「スペースX」が打ち上げる超大型ロケットの初の搭乗者となり、2023年に月へ行くのだという。宇宙開発に巨額の投資をするのは彼らだけではない。アマゾン、グーグル、フェイスブック、アップル、マイクロソフト、さらには孫正義氏率いるソフトバンクも宇宙ビジネスに大きな関心を寄せている。なぜ今、宇宙に熱視線が注がれているのか。全4回でお届けする<今さら聞けない「宇宙ビジネス」の基礎知識>。そもそも巨大テック企業が宇宙を目指す理由とは?

アマゾン、グループ、フェイスブック、アップルらが「宇宙ビジネス」に続々と参入

宇宙開発と聞くと、誰もが思い浮かべるのはNASA(アメリカ航空宇宙局)の存在だろう。日本にもJAXA(宇宙航空研究開発機構)がある。これらの組織に代表されるように、これまで宇宙開発は各国の政府が国家事業としてやっているものと考えられてきた。

しかし、それはもはやひと昔前の認識にすぎない。じつは、この10年余りの間に民間企業による「宇宙ビジネス」が急激に進んでいるのだ。宇宙ビジネスコンサルタントとして欧米の宇宙プロジェクトに参画してきた大貫美鈴氏の『宇宙ビジネスの衝撃──21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』(ダイヤモンド社)には、その実態が詳しく書かれている、

イーロン・マスクの「スペースX」はNASAに代わって大型ロケットの打ち上げを事業化しており、地球の軌道上にある国際宇宙ステーション(ISS)へのアメリカの補給便サービスまで行っている。また、アマゾン・ドット・コムの創業者、ジェフ・ベゾスも宇宙開発ベンチャー企業の「ブルーオリジン」を設立し、年間1000億円(!)を大型ロケットの開発などに投資。すでに試験機による宇宙空間への飛行実験にも何度か成功しているという。

さらにはグーグル、フェイスブック、アップル、マイクロソフト…。ビル・ゲイツやソフトバンク・グループを率いる孫正義氏も宇宙ビジネスに巨額の投資をするひとりだ。

宇宙ビジネスに巨大企業やビリオネアが注目する最大の理由は「地球のビッグデータ」

なぜ巨大企業やビリオネアの資金が宇宙に集まっているのか。それは宇宙にネットワークを張りめぐらせることによって、「地球のビッグデータ」を手に入れようとしているからだ。

たとえば、高性能な小型衛星の撮影機能を使えば、コンステレーション(複数の人工衛星を連携させる運用法)によって連続的に地球を周回し、刻一刻と変わる地球上の変化を知ることが可能になるという。ショッピングモールの駐車場に停まっているクルマの台数を時系列で分析したり、作物の生育状況を宇宙から把握したり、魚群探知機の精度を高めたりもできる。

さらに、大気のビッグデータを集めれば天気予報の精度もより向上し、衛星写真を使ってイベント会場などの局所的な天気予報も可能になる。ネットがつながらないエリアもカバーできるようになり、地図情報と組み合わせてクルマの自動運転に役立てることもできるだろう。

宇宙開発で得られるこれらのビッグデータや通信環境は、IoTの進化と結びつき、製造、サービス、流通、医療、金融、エンターテイメント、教育、農業、漁業、防災などのあり方を激変させるという。つまり、我々の生活を大きく変える可能性を秘めているわけだ。本書は、このビッグデータを「第4次産業革命を駆動させる大きなビースになる」と指摘している。

2005年に17兆円だった宇宙ビジネスの世界市場が2016年には33兆円にまで拡大

巨大企業やビリオネアが宇宙ビジネスに投資する背景には、2005年のアメリカ政府による政策変更があるという。スペースシャトル後継機の開発を民間に委ね、NASAは顧客として民間から打ち上げサービスを購入する…。官民連携で宇宙開発の商業化を進める大転換だ。

その結果、2005年に17兆円だった宇宙ビジネスの世界市場規模は2016年に33兆円にまで拡大。10年余りでほぼ2倍に伸びている計算だ。しかも、投資が急激に拡大する一方、この33兆円に占める各国の宇宙予算の割合は4分の1以下に減ってきているという。

宇宙ビジネスとは、とてつもなく大きな可能性を秘めた「21世紀のゴールドラッシュ」なのである。もはや「宇宙」は映画のなかだけに存在する世界ではなくなりつつあるわけだ。

Text by Kiyoshi Nanamori
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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