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第7回 | フォードの最新車デザイン・性能情報をお届け

英国空軍色のマスタングGT──甦ったスピットファイア

フォード『Mustang(マスタング)』は、日本には正規輸入されていないものの、いまなおアメリカを代表するスポーツモデルのひとつとして多くのファンを持つ。1964年の登場以来、54年間に行われたフルモデルチェンジは7回。近年はメーカー公認のチューナーによる派生モデルが次々と作られ、カーガイを喜ばせている。とりわけグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2018で披露された一台は、戦闘機マニアも泣いて喜ぶ仕様だった。

第二次世界大戦で活躍したイギリス空軍の戦闘機『スピットファイア』を再現

モデル名は『Eagle Squadron Mustang GT(イーグル・スコードロン・マスタングGT)』。デザインテーマは「Spitfire(スピットファイア)」。そう、2017年に公開された映画『ダンケルク』を見た人ならピンときたことだろう。『スピットファイア』とは、第二次世界大戦中にドイツ空軍との戦いで大活躍した楕円翼が特徴的なイギリス王立空軍の戦闘機のことだ。

その迷彩塗装を2018年型『マスタングGT』のボディに再現し、イギリスのラウンド国旗と部隊コードを側面に描き込んだのが『イーグル・スコードロン・マスタングGT』である。

開発したのは、フォーミュラDのチャンピオンであり、トップドリフターのヴァン・ギッティンJrとフォードによるチューニングブランド「RTRビークルズ」。RTRは以前にも、世界初の四輪駆動車である1965年型『マスタング』に845馬力という爆発的なパワーを発揮する特別仕様のV8エンジンを搭載し、マスタング・マニアの度肝を抜いたことがあった。

それにしても、なぜアメリカのクルマである『マスタングGT』が、イギリス空軍の戦闘機『スピットファイア』をデザインモチーフにしてリスペクトするのだろうか。

バトル・オブ・ブリテンに参加したアメリカ人義勇兵を称えるマスタングGT

じつは、第二次世界大戦中にイギリス空軍がドイツ空軍と繰り広げた死闘「バトル・オブ・ブリテン」には、14カ国からなる多国籍軍の一員として、7名のアメリカ人パイロットが義勇兵として参加していた。このとき彼らが操ったのが『スピットファイア』だ。

車名にある「イーグル・スコードロン」とは、アメリカ人義勇兵で編成された3個戦闘機中隊のこと。その別名はイーグル飛行中隊。つまり、これはアメリカ人義勇兵を称えるクルマなのである。また、2018年はイギリス空軍が設立されてからちょうど100周年にあたる。その絶妙のタイミングで企画されたモデルでもあったようだ。

さて、『イーグル・スコードロン・マスタングGT』だが、特徴的なのは『スピットファイア』をイメージした塗装だけではない。ボディには「RTR」仕様のカーボンファイバーワイドボディ(オーバーフェンダー)キットが組み込まれ、加えてフロントチンスポイラー、パフォーマンスパックのリアスポイラーには特注のL字型整流板も付けられている。

オーバーフェンダーの装着には、戦闘機のリベット(片側にやや直径の大きい頭がついた円柱状の部品)に似せたパーツを用い、「イーグル・スコードロン」の紋章をつける凝りようだ。

ステルス戦闘機の金属板に「イーグル飛行中隊」の紋章を刻印したシフトノブ

残念ながらエンジンは『スピットファイア』のようなロールス・ロイス製ではない。搭載するのはフォード・パフォーマンス・スーパーチャージャー・キットを装着した5.0LのV8エンジン。最高出力700ps、最大トルク84.3kgmを発揮するモンスター級の動力性能を持つ。

この性能を的確に路面に伝えるサスペンションは、車内で調整可能な最新世代のMagneRide(マグネティックライド)ショックアブソーバーに、ローダウン・スプリングを組み合わせた特別仕様である。俗な言い方をすると、やはり相当にお金がかけられているようだ。

インテリアにはレザースキンを採用。レカロ製レーシングシートには「Eagle Squadron」の刺繍をあしらわれ、ダッシュボードには本物の『スピットファイア』の金属部分で制作された記念のアルミニウム製プレートが飾られている。

さらにすごいのはシフトノブだ。素材はステルス戦闘機『F-35ライトニング』の機体から出た金属板で、それを磨き上げ、「イーグル・スコードロン」の紋章を刻印したプレートで覆っているのだ。これはクルマ好き、飛行機好きの双方を満足させるディテールだろう。

次はアメリカ空軍の戦闘機『P51ムスタング』仕様のマスタングGTを企画中?

これだけ凝ったクルマとなると、いったいどれくらいの価格になるのか想像もつかない。もっとも、『イーグル・スコードロン・マスタングGT』はワンオフモデル。グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでお披露目された後にアメリカ本国に戻り、エクスペリメンタル航空機協会(EAA)主催の航空ショーを経てチャリティーオークションに出品された。

落札価格は公表されていないが、その売り上げはフォード・モーターが長年サポートしているEAAの若者育成プログラム「ヤング・イーグルス」の資金に充てられるそうだ。

『スピットファイア』モデルの『マスタングGT』を作ったのだから、次は当然、ノースアメリカン社の『P51 ムスタング』モデルを企画していると思われる。『P51 ムスタング』は、やはり第二次世界大戦中に活躍したアメリカ空軍の戦闘機だ。

ジュラルミン製のボディに「=★=」のマークがついた『マスタングGT』。こんなクルマが登場すると想像するだけで、カーガイも戦闘機マニアもニヤけてしまうのではないだろうか。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) Ford Motor Company
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Eagle Squadron Mustang GT オフィシャル動画

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