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伝統の「ミス・アメリカ」から水着審査がなくなる理由

「ミスセブンティーン」「ミス慶応」「ミス日本」。世界に目を向ければ「ミス・ユニバース」「ミス・ワールド」「ミス・インターナショナル」──。世の中にはじつに多くのミス・コンテストが存在する。共通するのは、独身女性が美を競う、つまり容姿を基準に優劣を決めるイベントであること。しかし今、その基準に疑問を投げかけて世界中の注目を集めているミスコンがある。100年近くの歴史と伝統を持つ「ミス・アメリカ」が水着審査を廃止すると発表したのだ。

「ミス・アメリカ」から水着審査がなくなるのは「#Me Too」運動の影響?

ミス・アメリカは、その名称でもわかるように、アメリカを代表するミス・コンテストだ。第1回大会が開催されたのは1921年(大正10年)。以来、戦時下でも同時多発テロ事件の直後でも中止されることなく、97年間にわたって開催されてきたビッグイベントである。

ステージに立つことができるのは、地区予選、各州代表大会を勝ち抜いた17歳から24歳の選ばれし52名の独身美女たち。コンテストの模様は全米にテレビで生中継される。

そのミス・アメリカが今、大きな注目を集めている。9月9日に開催される2019年度のミス・アメリカ大会から「水着審査」が廃止されることになったからだ。ミス・アメリカ機構のグレッチェン・カールソン会長は「今後は出場者を容姿で審査しない」と明言し、水着に加えてイブニングドレス審査の廃止も決定。出場者には自分らしさを表現する心地良い衣装を求めた。

このミス・アメリカの歴史的転換の背景に、世界中で吹き荒れる「#Me Too」運動、「Time's Up」運動が影響を与えているのは間違いないだろう。

じつは、ミス・アメリカの運営団体では2017年に幹部たちによる参加者へのセクハラ行為が発覚し、会長や事務局長が軒並み辞任する騒ぎが起きている。新たに団体の幹部になったのは全員女性で、このとき会長に就任したのがグレッチェル・カールソン氏だ。

カールソン氏自身、1989年度のミス・アメリカの栄冠に輝いた実績を持つ女性で、FOXニュースではキャスターをつとめていた。そのFOXニュースでは、2016年に最高経営責任者に対してセクハラ訴訟を起こし、セクハラの被害者支援活動にも関わっている。つまり、カールソン氏は「#Me Too」運動の先頭に立ってきた女性なのである。
(C) UPI/amanaimages

全米中継されるのに、「ショーとしての側面」から逃れることが可能なのか?

カールソン氏は「(ミス・アメリカは)これからはもうショーではない。コンテストです」と断言する。では、水着に代わり、出場者はいったい何で競うのだろうか。

「出場者にインタビューし、情熱の対象や知性、ミス・アメリカとしての役割について質問をする」というのがカールソン氏の主張だ。「審査の対象となるのは、社会的に影響を与える取り組みについて、自分の言葉で何を語るかというものになります」。

この方針転換は、ある意味でミス・アメリカの原点を捉えているともいえる。ミス・アメリカの出場資格は「米国籍を有する17歳から24歳の独身女性」。そして「優勝者に5万ドル、2位に2万5000ドル、3位に2万ドル、また各入賞者にも奨学金を与える」とされている。

つまり、ミス・アメリカの賞金は本来「奨学金」だったのだ。実際、2017年度のミス・アメリカを獲得したカーラ・マントも「ミス・アメリカは奨学金の運営団体。奨学金を得るために水着を着る必要なんてないんです」と語っている。

ミス・アメリカは「女性たちによる、女性たちのためのコンテスト」として生まれ変わろうとしている。しかし、全米にテレビで生中継される以上、そこには視聴率という判断基準も生まれることとなる。「ショーとしての側面」から逃れるのは容易なことではなさそうだ。

水着審査廃止をめぐる賛否両論は収まりそうにないが、2018年度のミス・アメリカでは、多様性が尊重される今という時代を象徴する女性がその座につくことだけは間違いないだろう。

Text by Kiyoshiro Somari
Photo by (C) UPI/amanaimages(main)
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)