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公的保険だけで大丈夫? 民間介護保険の上手な選びかた

する側、される側を問わず、介護の必要が生じた際にもっとも心配なのがお金の問題。公的介護保険が用意されていることは知っていても「それだけで足りるのだろうか?」という不安を抱いている人は多いはずだ。そこで気になるのが、民間介護保険の存在。選び方のポイントはあるのだろうか? 「保険相談室」代表の、後田亨さんに聞いた。

今回のアドバイザー

後田亨さん

オフィスバトン「保険相談室」代表

長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。2005年、複数の保険会社の商品を扱う代理店へ転職。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』ほか、著書多数。執筆・講演・セミナー講師と保険相談を主な業務内容として、売手の都合から離れた情報発信を継続中。

“健康祝い金”など目先の特典だけで選ぶのは危険。まずは条件を吟味しよう

公的保険だけでは不安を感じる人のための、将来設計の選択肢となる民間介護保険。要介護状態になった場合に一時金や年金など受け取れるものをはじめ、様々なタイプがある。

「マネー誌・ビジネス誌などのランキングでは、一生涯の死亡保障とセットになっているタイプの介護保険が人気上位となっていますね。その中には、“健康祝い金”が支払われるものもあります」(後田さん、以下同)

民間介護保険は、死亡保険とセットなるケースが少なくない。また、健康祝い金のような付加価値にひかれる消費者もいるようだが、「保険を検討する際に“もらえるお金”にフォーカスして考えるのは疑問」と後田氏は忠告する。

「そもそも『保険金=保険料-保険会社の経費』ですから、加入者全体の収支はマイナスになるはずです。『お金を失いやすい仕組み』なのです。そこで、利用しやすい保険料で多額の保障を得るには、『稀に起こる重大な事態』に保険の対象を絞る必要があります。ところが『保険金が受け取りやすい』ことを重視すると、相対的に軽微な事態まで保険の対象を広げてしまい、お金の心配をしながら、お金を失いやすいしくみに使うお金を増やすようなことになるのです」

つまり、「保険金が受け取りやすいから良い保険」とは一概に言えないわけだ。保険選びの大原則は、小さなお金で大きな保障が得られること。民間介護保険を選ぶ際にも、このルールを忘れずに検討を進める必要がある。

そもそも民間介護保険を検討する前に、公的保険の保障範囲を理解すべき

民間介護保険を検討する際には、そもそも「公的保険だけで大丈夫なのか?」という不安が頭にあるのは当然のこと。とはいえ、不安ばかりが先立ってしまうと、つい冷静な判断力を失うことも多い。後田氏は、民間介護保険選びでも、冷静なコスト計算を念頭に置くべきとアドバイスする。

「まずは、公的介護保険についてしっかりと勉強して、その範囲で介護のどれくらいをカバーできるのか知ってから、民間介護保険の検討を始めるのがセオリーだと思います。もちろん親御さんに、自分で自分の面倒を見るための資産がどれくらいあるのかを把握しておくことも重要でしょう。『介護のため』という気持ちが先に立つのはわかりますが、だからこそ冷静にお金の使い方を判断すべきなのではないでしょうか」

それでも介護保険を検討するのであれば◯◯が妥当

上記の心構えを踏まえ、最後に後田さんの意見として、推奨できる民間介護保険の例を聞いた。

「保険全般に言えることですが、確率から見込める保険金給付額に対し、どれだけの保険料を払うのか。そして、保険料から保険会社や代理店などの運営費に回る費用がいくら引かれるのか。検討する際には、この2点がもっとも重要です。ところが、この2点がクリアになっている民間介護保険は、私が知る限りでは見当たりません」

また、40代男性が、自分自身の将来を考えて民間介護保険を検討した場合には、20〜30数年後の過不足ない保障を想定するのは難しいとも。

「こうした課題を踏まえた上で、敢えてオススメの民間介護保険を選ぶとするなら、『コープの介護保険』が良いかもしれませんね。人気が高い終身保障ではありませんが、だからこそ、安い掛け金で、それなりに手厚い保障を受けることができますよ」

ケースバイケースとはいえ、気軽に“オススメ”できる商品が少ないという民間介護保険。賢く活用するためには、まずは介護にまつわるお金のしくみを自分でちゃんと勉強していくことが先決といえそうだ。

最後にアドバイザーから一言

「民間の介護保険を合理的に利用するには、たとえば、一生涯、要介護1から保障する保険より、70代までといった期間限定で要介護2以上を保障の対象とするものを評価するような視点が必要でしょう」

Text by Shimano Miho(Seidansha) Edit by Kei Ishii(Seidansha)