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第6回 | エディトゥールPRIME

話題のサマータイム。メリットとデメリットは? 3つのポイント

お盆休みも終わり、秋の気配が漂い始めたのに、「夏」をめぐる議論がヒートアップしている。そう、サマータイムの導入案だ。サマータイムとは、日照時間が長い夏の一定期間に限り、時刻を1〜2時間早めること。2020年に開催される東京オリンピックの暑さ対策として安倍首相が自民党に導入検討を指示したのだが、これに各方面から異論や困惑の声が続出しているのである。サマータイムを「メリット」「デメリット」「欧州諸国のケース」の3つから見てみよう。

メリットは「東京五輪の暑さ対策」「CO2削減効果」「個人消費が増える」

サマータイムには、おもに次のメリットがあるとされている。「東京オリンピックの競技開始時間を前倒しできる」「省エネやCO2削減効果」「余暇が増えて個人消費が増える」の3つだ。

2020年夏の東京オリンピックでは、選手や観客の暑さ対策が大会の大きな課題となっている。個人消費に関しても、朝が早まればその分活動的な時間が増えるので、飲食店が仕事帰りのビジネスマンなどで夕刻前から賑わい、レジャーや交通機関の利用増加が見込めるという。

当然、電気やガスの利用は減少するが、全体として経済にもプラスに作用するというのが賛成派の主張だ。ある試算ではサマータイムは年間7000億円の経済効果があるとしている。

デメリットは「労働時間の増加」「「切り替え時の混乱」「健康面への悪影響」

その一方、デメリットとされているのが「労働時間が増える」「夏時間に切り替えるときに混乱が生じる」「健康面に悪影響を及ぼす」の3つである。

サマータイムで仕事のスタート時間が早まっても、残業するのが当たり前となっている日本の労働環境では終業時間が繰り上がる可能性は低い。早く出勤した分だけ労働時間が増えてしまうことになる。また、サマータイムを導入するなら、交通機関のダイヤ、株式市場の取引時間など、日付や時刻に関するすべてのコンピュータプログラムを変更しなければならない。

エンジニアが睡眠時間を削って対応せざるを得なくなり、そうなると政府の働き方改革にも逆行する。実際、「2000年問題」のときには多くのエンジニアが泊まり込みで作業にあたった。

ヨーロッパでは「健康面に悪影響がある」としてサマータイム廃止論が浮上

「健康面への悪影響」ではヨーロッパのケースが参考になる。ヨーロッパでは1970年代から80年代にかけて本格的に導入する国が相次ぎ、現在はEUに加盟する28カ国が共通の夏時間の「DST(デイライト・セービング・タイム)」を導入済みだ。

しかし、近年はそのヨーロッパでもサマータイム廃止を求める声が増している。日本経済新聞によると、その理由は導入当初にメリットとされた「レジャー活動の活発化」「夜間のエネルギー消費を減らす効果」を疑問視する声が広がってきたためだという。

最大の問題は健康への悪影響だ。欧州議会が2017年にまとめたリポートは、注意不足による事故、心臓発作のリスクを高めるなど、サマータイムが健康被害につながるとする研究報告を紹介している。同年のドイツの世論調査では74%が「廃止が望ましい」と答え、フランスでも2015年の世論調査で半数以上が「反対」と回答。廃止に向けて動き始めている国もあるという。

菅官房長官は「日常生活に大きな影響が生じる」とサマータイムに慎重姿勢

実際のところ、サマータイムは日本に導入されるのだろうか。現状ではかなり不透明な情勢に見える。政府のスポークスマンをつとめる菅官房長官も、サマータイムについて「ひとつの提案として受け止めるが、日常生活にも大きな影響が生じる」と微妙な言い回しをしている。

じつは、日本でも終戦直後にサマータイムが一度導入されたが、メリットよりもデメリットのほうが大きいとして廃止された経緯がある。東日本大震災後にも導入が検討されたが、結局は実現しなかった。夏の終わりとともにサマータイム導入案にも秋風が吹くのかもしれない。

Text by Kiyoshi Nanamori
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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