サヴォア邸(サボア邸; Villa Savoye)
- 40男のメモリーズ -

コルビュジエが完璧な形で具現化させた住宅建築「サヴォア邸」を紹介

本企画「When Legend is Made」では世紀の傑作が生まれた時を追い、それぞれのマスターピースが時代や社会に与えた影響を解き明かしていく。第1回目は、西洋の重厚な伝統建築の方法論と決別し、モダニズム建築を推進した天才建築家ル・コルビュジエ(1887〜1965)、彼の革新的な名建築「サヴォア邸」を2回に渡って紹介する。

1923年に上梓した著書『建築をめざして』が複数の言語に翻訳され、ル・コルビュジエは20年代後半には世界的な注目を集めていた。 住宅を自動車に重ね合わせ、機能をすべてコンパクトな形にすることを目指す「住宅は住むための機械である」という言葉が、装飾的で重厚なものを当然とする従来の建築観を一変させたのだ。 石やレンガを積み上げた分厚い壁で屋根を支える従来の工法から脱却するために、鉄筋コンクリートによるスラブ(床構造)、柱、階段を基本とする「ドミノシステム」を考案。空間表現の自由を獲得した。 建築家 ル・コルビュジエ(ル・コルビジェ) ル・コルビュジエ(Le Corbusier) 気鋭の建築家による革命的な方法論を高く評価し、パリから西へ電車で30分ほどのポワシーに建設する週末用別荘の設計を依頼したのが、ピエール・サヴォアという保険会社の経営者だった。 豊かな森に囲まれた広い緑の草地を自由な建築表現のキャンバスとして提供したのだ。 サヴォア邸のコンセプトイメージ サヴォア邸のコンセプトイメージ その期待に応えるべく、コルビュジエは26年に発表した「近代建築の5原則」を完璧な形で具現化しようと試みる。 白い箱を柱によって空中に浮かばせる「ピロティ」の採用。 平らな屋根をテラスとして利用する「屋上庭園」。 重厚な仕切り壁が不要になることで可能となった「自由な間取り」。 建物を支える役割から解放された「自由なファサード」。 広い開口部を確保して自然光をふんだんに取り入れる「横長の連続窓」。 1928年にスタートしたこのプロジェクトが、「5原則」のすべてをクリアし1931年に竣工すると、瞬く間に建築界で話題となった。 サヴォア邸の中庭 サヴォア邸のリビングから眺める中庭 建物に入り、スロープやらせん階段でつながったフロアを移動する。 大きな窓に行き当たると、リビングからは隣接した中庭へ。 建物の内部を歩き回り体験できる「建築的プロムナード(=散歩道)」をこの邸宅に実現することも、ル・コルビュジエにとっては重要な課題だった。 屋内にいながら多様な建築体験ができるこの邸宅で、サヴォア家は充実した休暇の時間を過ごしていたに違いない。 しかし、やがてフランスを襲う歴史的な悲劇が、一家をこの邸宅から引き離してしまうのだった。

Text by Ryohei Nakajima

⇒サヴォア邸の運命は……