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第30回 | 【腕時計】人気&話題のブランド

クォーツ・ショックから生まれたアンティーク・ウォッチの“歴史”

余裕ある大人の男性にとって、自分の品格をさりげなく示す存在にもなる腕時計。なかでも、年々注目度が高まっているジャンルが、個性的かつ希少性も高い「アンティーク・ウォッチ」だ。とはいえ、新品のレギュラーモデルと比べてコンディションの見極めやメンテナンス方法など、特別な注意が必要なイメージがあるため、その世界へ足を踏み入れることをためらっている人も多いはず。そこでこのシリーズでは、アンティーク・ウォッチのビギナーに向け、必要なノウハウを伝授したい。まずは基礎知識として、アンティーク・ウォッチの定義やブームの現状について紹介しよう。

大量生産による腕時計のチープ化で、1970年代以前のモデルが再評価

個性を際立たせるファッションアイテムとしての魅力はもちろん、大人のホビーとしても人気が高いアンティーク・ウォッチ。一説によれば19世紀後期から始まったとされる腕時計の歴史を考えれば、ひと口に“アンティーク”といっても、200年近い幅があることになるのだが、現在一般的にアンティーク・ウォッチとして人気が高いのは、具体的にどのあたりの年代のモデルなのだろうか?

「一般的に“アンティーク”という言葉は、100年以上前の製品を指す場合が多いのですが、時計業界で“アンティーク・ウォッチ”といえば、いわゆる『クォーツ・ショック』を基準に、それ以前の腕時計を指す言葉となっていますね」

と教えてくれたのは、アンティーク・ウォッチ界の草分け的存在である専門店『SWEETROAD(スイートロード)』店長の平野拓生さんだ。具体的には1970年代以前のモデルを“アンティーク・ウォッチ”と呼ぶのが主流だという。

「『クォーツ・ショック』とは、セイコーが発売した安価で正確なクォーツ腕時計の普及により、それまでの主流だった自動巻きや手巻き式の腕時計を扱っていたメーカーが壊滅的な打撃を受けた、1970年代中旬の時流を指す言葉です。このクォーツ・ショックをきっかけに、機械式時計専門のメーカーの多くが倒産してしまったほか、生き残ったメーカーも80年代中旬までは、対抗策として中身が簡素化された安価な製品に注力せざるを得なくなったのです」(平野さん、以下同)

70年代に突如押し寄せた大量生産の波が腕時計の「チープ化」を招き、皮肉にもその反動でクォーツ・ショック以前のモデルに注目が集まるようになった。これが、現在のアンティーク・ウォッチブームの発端というわけだ。

日本でのブームは90年代以降。人気モデルの価格はうなぎのぼりの傾向に

平野さんによれば、そんなアンティーク・ウォッチの魅力が、日本でも認知されるようになったのは90年代以降のこと。アンティーク蒐集の例にもれず、ブームの当初はブランド品でも安価に入手することができたという。

「今でこそアンティーク・ウォッチは、新モデルと同価値か、それ以上の価値を認められています。しかし90年代当初は、同じモデルでも現在の半額くらいで購入できたんですよね。当時は、一般的にもアンティーク・ウォッチに対する認知が低かったため、言わば付加価値のない『ただの中古品』という扱いをされることが多かったんです」

と、平野さんが見せてくれたのが、ご自身が愛用している、60年代に製造された「ロレックス サブマリーナ」である。

このモデルの現在の参考価格は185万円というが、購入当時は、その半分以下の価格だったとのこと。

「90年代からのコレクターのなかには『当時買っておいて良かった』、『今ではとても買えない』とおっしゃる方が多いですね。製造中止から何年も経つ製品だけに、年々市場に出回る数も減り、増々手に入りにくくなっていきます。手に入りにくい物ほど“欲しい”と思うのは人情として当然。一方で供給数が増えないのですから、その価値はどんどん高まっていくわけです」

そのため、単なるコレクション目的ではなく、投資的な観点でアンティーク・ウォッチを集める人も、年々増えているのだとか。ファッションアイテムとしての魅力に加え、いわゆる“レアもの”という、男心をくすぐる要素も兼ね備えたアンティーク・ウォッチ。躊躇しているうちに、どんどん高値になってしまうのであれば、いよいよ手を出してみたくなるのではないだろうか?

「SWEETROAD」平野さんがオススメする、人気のアンティーク・ウォッチ(1)

オメガ「スピードマスター・プロフェッショナル(5th)/Ref.145.022.68.ST」
1968年に製造された希少な「オメガ/スピードマスター5th /最初期型」。文字盤は僅かだがブラウンに褪色しており、太陽光に照らされた時の雰囲気はバツグン。ケースには小傷や使用感はあるが、オリジナリティの高いグッドコンディション。98万円(税込)

「アンティーク・ウォッチでも人気が高いブランドは、やはりオメガやロレックス。オメガの場合、特にファンが多いモデルといえば。この『スピードマスター』でしょう」

※価格は取材当時のもの。同じモデルでもコンディションにより価格が異なる場合があります。
※在庫の有無については、店舗に直接ご確認ください。

Text by Arata Homma
Photo by Kazushige Mori
Edit by Kei Ishii(Seidansha)

アドバイザープロフィール
平野拓生
ロレックスやオメガ、グランドセイコーといった国内外のブランドを幅広く取揃える、日本のアンティーク・ウォッチシーンの草分け的専門店「SWEETROAD(スイートロード)」店長。主に50~70年代のアンティーク・ウォッチが充実する他、ヴィンテージカレッジリング&ジッポなども取扱う。
店舗情報
スイートロード
神奈川県川崎市 幸区南幸町2丁目 21番地 シノックスプラザ1F
電話 044-544-8177
営業時間 11時~20時(月曜定休)

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