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- 直面する前に知っておきたい。介護の保険・費用・対策 -

法律面から考える。そもそも「介護」は義務なのか?

年齢を重ねるごとに“現実”として迫ってくる親の介護の問題。家庭によっては、介護離職をせざるを得ないケースもあるというから、自分の生活を考え、極力親の介護は避けたいと思ってしまう人もいのでは? そこで気になるのが、そもそも親の介護を「しなければならないのか」という素朴な疑問だ。たとえば法律で、介護が義務付けられていることはあるのか。詳しい話を介護や福祉問題に詳しい弁護士の外岡潤さんに聞いた。

今回のアドバイザー

外岡潤

介護・福祉系法律事務所 おかげさま代表 弁護士

第二東京弁護士会所属、ホームヘルパー2級。東京大学法学部卒業後、企業法務事務所を経て、2009年に「介護・福祉系法律事務所おかげさま」を開設。遺言・相続、後見制度、介護トラブルなど、高齢者および障害者が直面する問題全般を扱う。セミナー・講演などで専門的な話をわかりやすく、楽しく説明することが得意。

民法で義務付けられている“扶養”の義務。介護との関係は?

自分の親の介護をするのは“当然”。そう考える人は少なくないが、法律的な観点から見た場合、はたして親の介護は義務付けられているのだろうか?

「介護には、原則として法的義務があるといえます。民法877条で『直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある』と定められており、親が独力で生活できない場合、子が親を扶養することを法律で義務づけているのです」(外岡さん、以下同)

とはいえ、外岡さんによれば、民法では「扶養と介護の関係」についてまでは、詳しく規定されていないという。

「本来“扶養”とは『生計の立たない者に対して、最低限の生活を保障する義務』とされるのですが、一般的に子が直接親の介護をすることまでは義務付けていないのが実状。なので、たとえば親が老人ホームに入ることになり、年金だけでは賄いきれない事情が生じると、その足りない金額を援助する程度でも、“扶養”の義務を果たしたものと解釈することができるわけですね」

状況次第で刑法218条保護責任者遺棄罪に問われる可能性も

それでは、子どもが親の介護をしなかった場合、罪に問われることはあり得るのだろうか。

「状況によりますが、可能性として刑法218条の保護責任者遺棄罪に問われる可能性があります。寝たきりの親をほったらかしにして何日も家に帰らなかったり、急病なのにもかかわらず、救護を行わなかったりなどが例として挙げられます」

外岡さんによれば、実際の刑事裁判のケースとして、被告人の子が同居していた実母に必要な医療措置を受けさせず、自宅に放置し、死亡させた事件が過去にあったそう。その事案では、被告人が事件まで長い間実母の面倒を見てきたことや、自身が離婚して3人の未成年の子どもを養育する必要性に駆られていたことなど、情状酌量の余地があり、懲役3年、執行猶予5年の判決が下されたという。

親が元気なうちに大まかな計画を立てておくことが大事

親の介護は原則義務ということだが、気持ちの面でどのように取り組んでいけば良いのか。最後に外岡さんに教えてもらった。

「一番大事なことは無理をしないこと。なぜなら認知症や身体機能の衰えが治ることはありえないからです。その基本的な部分を誤解し、『自分が元気にしてやる』と意気込んで仕事を辞め、付きっきりで親の介護に没頭する人がいますが、それはもっともやってはいけないこと。まずは自分の仕事と生活を優先し、心身の健康を保つことが重要です」

理想的なのは、介護が本格的に始まる前の段階で、親と将来について話し合うことだが、重たいテーマなため避けてしまいがち。外岡さんは「いつ始まってもいいように家族全員で役割分担や大まかでいいので計画を決めておくのがオススメ」ともアドバイスしてくれた。法的にも、やはり怠ってはいけない介護。とはいえ気負わず、できる範囲で行う気構えが必要なのだ。

最後にアドバイザーからひと言

「介護は親と最後に向き合うチャンスです。唯一無二の親と手をつなぎ、沈み行く夕日を見届ける気持ちで介護に取り組んでみてください」

Text by Akihiro Fukuda(Seidansha)
Edit by Kei Ishii(Seidansha)