男の嗜み見聞録/松任谷正隆が考える「カジュアルの定義」とは
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松任谷正隆が考える「カジュアルの定義」とは

著書「僕の散財日記」を読むと、松任谷正隆さんがいかに買い物好きの洒落者であるかがよくわかる。地球の反対側からマフラーを取り寄せようとしたり、一目惚れしたシャツを何枚も衝動買い、というか衝動買いするためにロンドンの街を歩いてみたり。そんな松任谷さんが日々の装いで大切にしていることを聞いた。

70年代からの服好き。80年代のTシャツもある

「僕は本当に洋服持ちで、15歳くらいから着ているものがあったりするんですよ。だから20年とか30年選手なんか、家にもうごろごろある」
たとえばこの日持ってきてもらったTシャツは、1985年に作られたヴィンテージ。こうかくとまるでワインのようだが、あたかもワイン通のように、愛情を持って服を語る。

「これは僕の大好きなブルース・ウェーバーという写真家が撮ったものなんです。70年代からアメリカの『GQ』を読んでいて、それでファッションも好きになったので、ルーツみたいなものかな」

「手放している」といいつつ、アイテムは増えていく

そして温故知新。

「自分の中で白がブームで、白Tはいっぱい買いましたね。とくに僕の中の王道である『ブルックス・ブラザーズ』。ネットで海外から直接買いましたね。もう1ダースくらい持っています」

折りしも無地がトレンドだけに、そのへんもしっかり踏まえているのかと思いきや、「そうなの?」と無関心。松任谷さんは自分の気分で、好きなアイテムをどんどん増やしているのだ。たとえば冒頭の写真にもあるお気に入りの白シャツも、最近買った「マッシモアルバ」のものだけど。
「アメカジからフレンチトラッドで育ったので、ヨーロピアントラッド要素がとても大事なんです。イタリアンカジュアルは嫌いなんですけど、これはイタリアントラッド。だから好きなんです」

ちなみに白シャツは「死ぬほど持ってる」とか。

「個人的にはブロードのうんと細い番手のやつが好きですね。でもそれは5~6枚ですが」

それらを収納する松任谷さんの自宅クローゼットはかなり広い。「でも定期的に手放しているんですよ」といいつつも、日々アイテムが増えていくのだ。

カジュアルとは、自分の着こなしを楽しむこと

取材したこの日は、舞台『靑い種子は太陽のなかにある』の立ち稽古の日。生誕80年を迎える寺山修司の戯曲を、今年80歳を迎える蜷川幸雄が演出する注目作だ。蜷川さん、主演の亀梨和也さんらに交じって、音楽を担当する松任谷さんも相当な気合いが入っているようだが、装いはいたってラフ。

「目に付いたものを着ている感覚ですけどね。それでも最低限の組み合わせは考えています」

いわばカジュアル。だけど松任谷流のカジュアルは、最近の雑誌に載っているカジュアルとは趣旨が違うらしい。

「だってカジュアルって自分で楽しむ着こなしであって、誰かに教わるものでしょ。フォーマルな着こなしだったら作法を教わる意味があるけど、あくまでカジュアルは創意工夫するものですからね」

言い換えれば、楽しむということ。

「服が増えていくと、どうしても着やすい服とそうじゃない服が出てくるじゃないですか。そこでまんべんなく着てあげるためには、創意工夫が必要となる。うまくいくと気分がいい。だから考えるときは朝10分くらい使ってますよ。そうすると遅刻しますけどね」
ちなみにこの日のバックパックは「イーストパック」と「ジャン・ポール・ゴルチエ」のコラボモデル。「最近よく使っているんですよ。そういえばバックパックが流行っているらしいですね」と松任谷さん。

Text by Masayuki Kisyu

Photographs by Kazuya Hayashi