偏愛の逸品/純国産・線香花火で夏の男の粋を究める
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純国産・線香花火で夏の男の粋を究める

日本の夏の代名詞的存在でありながら、安価な海外産の台頭で、国産のものが一時は消滅する恐れもあったという線香花火。現在はその危機を乗り越え、3社が上質な線香花火を世に送り出している。そのなかのひとつ、福岡県みやま市の筒井時正玩具花火製造所は国内で唯一「スボ手牡丹」(写真下左)と「長手牡丹」(写真下右)、2種類の線香花火を製造している。

細やかな手作業がもたらす四変化が特色

西日本で親しまれている藁を用いたスボ手牡丹と、藁の代わりに紙を用い、関東から全国に広まった長手牡丹の2種類がある線香花火。筒井時正玩具花火製造所では、どちらも製造しており、特に線香花火の原型でもあるスボ手牡丹に関しては、国内唯一の製造所でもある。

同社はもともと、子ども向けの玩具花火を80年以上製造してきた。線香花火を手がけるようになったのは21世紀に入ってから。県内にあった線香花火の製造所が廃業する前に、3代目の筒井良太さんが修行し、国産線香花火の貴重な技術が受け継がれた。
同社の筒井今日子さんによると、国産の線香花火は、海外産より火玉が大きく、火花も遠くまで飛ぶのだとか。そして、何よりの特色が、火玉が落ちにくく、蕾、牡丹、松葉、散り菊と称される4つの表情を楽しめること。その美しさは細かい職人技の賜物で、火薬の量や紙の縒り方が非常に重要だそうだ。なお、線香花火は熟成させると火薬がなじみ、火花が安定するそう。夏が終わるからといって使い切る必要はなく、保存しておくのがよいという。

素材にとことんこだわった高級花火

同社では、東西の線香花火に加え、新感覚の線香花火「筒井時正」を開発し、話題を呼んでいる。分類的には長手牡丹にあたるこの花火、こだわりがすごい。火薬には、伐採してから30年以上寝かせた油分豊富な宮崎産の松の根で作った松煙を使用。紙には火のまわりがスムーズな福岡・八女市の手漉き和紙を用い、それを草木染めで淡い色合いに仕上げている。

「線香花火は火薬に薬品を使わず、自然のものを使っていて、火花の色は自然の色です。それに合わせて他の素材も自然のものにこだわり、特に地元福岡や九州のものを使っているのが特徴です」と今日子さん。

シリーズでもっとも高価な「花々」(税別1万円)は、花火40本と和蠟燭、蝋燭立てのセット。持ち手部分が1枚の花びらのように仕上げられ、それを10本束ねることで、4輪の花が咲いたかのような姿で桐箱に収めている。花火以外もこだわり抜かれ、同社と同じみやま市でつくられる和蝋燭には、九州産のハゼの実を使用。山桜を用いた蝋燭立ては、家具の名産地として知られる福岡・大川市の職人の手によるものだ。
花火の締めに使うことが多い線香花火だが、「花々」は結びの一番に登場する横綱のような存在感。極上の美しさと儚さで夏を彩ってくれることだろう。ちなみに、贈答用としてのニーズも高く、特にお中元で人気なのだとか。自分で楽しむのもよし、お世話になった人に楽しんでもらうもよし。こだわりの花火を日本のどこかで咲かせてみてはいかがだろうか。

Text by Fumio Miyata