大人のための最新自動車事情/未来を先取りするプレミアムEV。テスラ『Model S』
- 大人のための最新自動車事情 -

未来を先取りするプレミアムEV。テスラ『Model S』

テスラは、シリコンバレーに本社を構える電気自動車(EV)のベンチャー企業。同社のEVは長距離走行が可能で、ITとの親和性も高く、次世代自動車を担う一角と目されている。フラッグシップモデルは、世界初のプレミアムEVセダンである『Model S』だ。

マラソンランナーのように研ぎ澄まされたエクステリア

『Model S』のラインナップは、駆動方式やリチウムイオン電池容量が異なる4種類。ベースグレードである『70D』は、70kWhのバッテリーを搭載した全輪駆動だ。航続距離は442km(NEDC:新欧州ドライビングサイクル)と、ガソリン車と比較しても遜色ない。超急速充電器「スーパーチャージャーステーション」を使用すれば、20分でバッテリーの約半分まで、30分で270kmの走行距離分を充電することができる。

『Model S』に乗り込むときには、まずドアノブに驚かされるだろう。出っ張りがなく、キーを持って近づくと自動的にせり出す仕組みになっている。未来感の演出かと思ってしまうが、本来の目的は徹底した空気抵抗の削減だ。他にも、速度が上がるとスマートエアサスペンションにより車高が下がり前面面積が小さくなるといった工夫もある。いわく「マラソンランナーの持久力」をイメージしたエクステリア。全くもって無駄のない美しさだ。

室内に乗り込むと、17インチのタッチスクリーンが存在感を主張する。車のほとんどの機能をコントロールでき、ガラス製パノラミックルーフやオートエアコン、オーディオ、マップ、電話などの操作はもちろんのこと、デジタル計器クラスター、ステアリングホイールコントロール、車輌データなど車両情報も統合されており、それらが、スマートフォンのように指先ひとつで操作できる。これらの機能は、ソフトウェアアップデートにより進化するのだが、このあたりもITとの親和性の高さ故だ。

一方で内装自体は、高級車らしく上質感に満ちている。ドアハンドルは手磨きの亜鉛。レザートリムには高級ナパレザーを使い、デコール用木材の加工は最小限に抑えて自然の風合いを残す。長距離輸送による環境への負荷を低減するため、材料は可能な限りテスラのカリフォルニア工場近くから集められるのも、こだわりのひとつだろう。

スーパースポーツにも引けを取らない動力性能

『Model S』の動力はモーターなので、エンジンの振動や音がない。その乗り心地は、車の概念を覆すだろう。しかし、本当の実力を知るのは、アクセルを踏み込んだその瞬間だ。最上級グレードである『P85D』は、3.3秒で100kmまで加速。最高時速は250kmに達する。

これだけの動力性能を持ちながら、安定した運転が可能なのは、全輪駆動の特徴にある。モーターはフロントとリアの各車軸に1つずつ割り当てられ、各モーターに電流を正確に配分することで、かかるトルクを独立的にデジタル制御する。結果、いかなる状況下でも安定したトラクションコントロールを発揮してくれるのだ。

ドライビングプレジャーを十分に享受させてくれる『Model S』だが、テスラ社のイーロン・マスクCEOは、自動運転車が人の運転よりも安全な時代が来る、とも語っている。実際、既に、周囲の車の流れに合わせてスピードを調整しながら、道路をカーブに沿って自動的に走る機能や駐車スペースを見つけるのを手伝い、そのスペースに自動的に駐車する機能などを備えている。

ベースグレードである『70D』の価格は937万円(税込み)。最上級グレードである『P85D』は1294万2000円(税込み)。まさに高級車と呼ぶに相応しい金額だが、少し先の未来を先取りできると考えると、いわゆる一般的な高級車と並列で比較するのは、少し野暮かもしれない。

Text by Tsukasa Sasabayashi