茶道裏千家
- 40男のメモリーズ -

和みの時間を共有する茶の湯の席

茶道の精神を紹介するために、裏千家の拠点である京都の今日庵に取材した2回連載の第2回。本来は「濃茶(こいちゃ)」の席を経るのが正式な茶事の流れだが、「薄茶」の席だけを体験しても、そこにはお茶の精神が息づいている。今日庵内の茶室にて、奈良宗久業躰(ぎょうてい)に「薄茶」のお点前を披露してもらった。

奈良業躰「まず茶道口から入り、主客がともにお辞儀をする総礼から始まります。1から10まですべてを説明することなく、少しの言葉、空気、間合いなどを感じ合いながら進みます。亭主と客がお互いの領域に踏み込まず、楽しさと緊張感というものが両立しているのがお茶席です」 茶道裏千家 茶道口で挨拶をすると、水指(みずさし)など一つ一つ道具を茶室に運び入れ、正しく配置する。 お茶の点前には、三要素といわれるものがある。位置の決定、順序、動作の三つだ。点前をするときに座る位置、立つ位置、道具を置く位置というのは厳密に決められている。 正しい位置関係に配置されていないと、動作に無駄が生まれ、点前が進むうちに綻びが生じてしまう。余計な演出はなく、無駄を削ぎ落とすことによって優美な動きが生まれる。 奈良業躰「お点前に使うものをすべて茶室に運び入れ、終わるとすべて無くして空間を無にする。それが『侘茶』の運び点前です。静かな部屋で、無言でやり取りをしていると、外の鳥の鳴き声や竹林が風に吹かれる音が聞こえてきて、自然に対して敏感になります。静かな空間で季節感を共有することができるのです」 茶道裏千家 茶道裏千家 道具を運び入れると、帛紗(ふくさ)という裂(きれ)をさばき、すべての道具を清める。 道具の一つ一つを帛紗で清め、その様子を客も目で認める。 帛紗をさばき直しながら、棗(なつめ=抹茶が入った茶器)、茶杓(ちゃしゃく=抹茶をすくうさじ)を清める。そして次に、釜に湧いた湯で、茶筅(ちゃせん=湯を加えた抹茶をかき回し茶を点てる道具)を温めて柔らかくし、また先のほつれがないか確認をする茶筅通しを行う。 もちろん、すべてが清潔な道具だ。この一連の動作には、使用する直前の最終的な確認の意味もあるが、美味しいお茶を客のために点てようという心の表れである側面のほうが大きい。この時間を亭主と客が共有し、場の空気がひとつに包まれていく。 茶道裏千家 抹茶の粉を入れた茶碗に釜から湯を注ぎ、茶筅でお茶を点てる。細かな泡がふわりとたつのが薄茶の特徴だ。 (注)11月から4月までは「炉(ろ)」で湯を沸かす。 奈良業躰「お点前というのは、型の連続です。型にある動作を淀みなくつなげるためには、型をひたすら繰り返して体にどんどん染み込ませていく必要があります。体に染み込ませることで、初めて何かあったときに対処ができる。そこで寂然不動に達するわけです。今の時代は極度の情報社会なので、なんでも調べると知識が手に入り、経験したような錯覚を得ることも多いですよね。形や知識を頭ばかりで追いかけてしまう傾向が生まれています。そうではなく、お茶の道では、物事を続けることの大事さを実感することができます。型をひたすら繰り返し、総合芸術として、焼物や掛け物、お花、禅などを幅広く学ぶ必要があります。本当に終わりがないと思っています」 茶道裏千家 右手で茶碗を釜の蓋の横に出すと、主客が取りに出て、戻り「お点前ちょうだいいたします」と茶碗を手にする。 茶道裏千家 道具の拝見などが済むと、棗、茶杓を持って亭主は茶道口へ。最後に主客総礼をし、茶道口を閉めて茶会が終了する。 茶の湯を深く学ぶことで、主客がともに豊かな時間を過ごす茶事の流れ。移ろう季節を愛で、独りよがりにならずに客をもてなす精神が、茶道の長い歴史を裏付けている。

Text by Ryohei Nakajima