旅館 花屋
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大正ロマンを満喫する長野・別所温泉の春

今年、長野県は善光寺の御開帳に北陸新幹線の開通と、賑わいの春を見せている。長野方面に出かけるのであれば、信州最古の温泉地といわれる別所温泉で泊まることをお薦めする。その温泉地には、訪れるべき大正ロマン建築の宿「旅館 花屋」があるからだ。

別所温泉駅から北向観音に向かう坂道をすこし上がると左手に橋が見える。「はなや橋」という小さな橋だ。橋を渡ると、白い外壁に囲まれた旅館 花屋が佇む。 旅館 花屋 橋を渡ると見えてくるお城のような外観に、期待が膨らむ 建物は白壁のお城のような蔵が目に入るのだが、玄関に足を踏み入れると、一変して外観とはかけ離れた和洋折衷のハイカラな空間が広がっている。 ロビーラウンジ家具も大正時代のものを使用する ロビーラウンジ家具も大正時代のものを使用する 客室は本館と離れをあわせて42室ある。しかし、6500坪もの敷地があるからか、そんなに部屋数があるとは思えない広々とした雰囲気だ。本館から広大な敷地内に点在する離れへ向かう時には、何本にも分かれる細い回廊から四季折々の草花や池を有する庭を鑑賞することが出来る。 栂(つが)で作られた渡り廊下は庭と一体感をなす 栂(つが)で作られた渡り廊下は庭と一体感をなす 敷地内を巡る回廊 白熱灯が温かい雰囲気だ 敷地内を巡る回廊 白熱灯が温かい雰囲気だ 全ての客室が趣を異にしており、一刀彫の柱や天井など凝った造りである。元々、寺院が多数点在する場所柄、多くの宮大工が生活していたという。その宮大工が集まり、技術を駆使し合い、大正6年に創業した旅館が花屋なのである。現在もメンテナンスは宮大工が手掛けているとのことだ。調度品も当時の物が使用されており、宿全体が、まるで大正時代にタイムスリップしたかのようだ。殆どの部屋が登録有形文化財に指定されているのもうなずける。 廊下や部屋に使用されるランプも大正時代のもの 廊下や部屋に使用される照明も大正時代のもの 部屋から眺める春の庭も美しい 部屋から眺める春の庭も美しい お薦めの部屋は本館にある21番の部屋だ。新潟県上越市の遊郭を移築した部屋であり、色あせていない天井画の蒔絵が素晴らしい。 21番の部屋 天井画が素晴らしい 21番の部屋 天井画が素晴らしい 宿周辺の神社仏閣を散策した後は、宿に戻りゆっくりと、地産の旬の食材が多分に使用された会席料理をいただく。また、飼育数が非常に少なく、めったに口にすることができない飯田産の千代幻豚を使ったしゃぶしゃぶや天ぷらも用意されている。ぜひ注文して、肉のきめが細かく甘みのある食感を楽しんでもらいたい。 春の月見草懐石 手前白皿が、しゃぶしゃぶ用の千代幻豚 春の月見草懐石 手前白皿が、しゃぶしゃぶ用の千代幻豚 そして、なにより別所温泉は弱アルカリ性の湯が素晴らしい。花屋も、3種類ある風呂や離れ客室のお風呂が、全て源泉掛け流しの温泉だ。なかなか湯冷めせず、渡り廊下を通り部屋に戻る間も、吹き抜ける春の風が火照った身体に心地良い。中でも大理石造りの風呂場は、天井がドーム状になっているからか開放感がありつい長湯をしてしまう。 大正ロマンを感じるデザインの大理石造りの風呂 大正ロマンを感じるデザインの大理石造りの風呂 ステンドガラスを抜けてやさしく差し込む光を、湯気越しにぼんやりと眺めていると、その昔に感じた事のある、ノスタルジックな感情がこみ上げてくるのだ。

Text by Junko Kurita

Top Image:庭の花々が美しい花屋の渡り廊下