ポルシェ911 RS
- スーパーカーブランド【ポルシェ】 -

いつの時代も究極のポルシェ911はRS

特別な意味のあるアルファベットの組み合わせというのが自動車の世界にはいくつかある。例えばイタリアのメーカーが”GT”の後ろに付けるアルファベットは、フェラーリのGT”O”(Omologato=GT競技規則適合)やアルファロメオのGT”A”(Alleggerita=軽量化された)など、メーカーの歴史における特別な活躍から伝説にすらなるほどだ。そしてポルシェにとっても、その歴史から特別なアルファベットがある。それがドイツ語でRenn Sport(=レーシングスポーツ)を意味する「RS」という2文字だ。

ポルシェ911 RS RSはもともと、その名のとおりスポーツカータイプのレーシングモデルに与えられた名前だった。空冷4気筒エンジンをミドシップに搭載した50年代の「550 RS スパイダー」やその発展型の「718RS」がその初期の例で、近年プロトタイプレースへ復帰するために作られた純レーシングカーの「RSスパイダー」もその本来の意味でのRSが使われた例といえる。 一方でポルシェは1973年、このRSの文字にもうひとつの意味を持たせたエポック・メイキングなモデルを発表する。それが、公道モデルの911にレーシングカー並の性能を与えた特別なモデル「911 カレラRS」。そのデビュー年と組み合わせて「ナナサンカレラ」の通称で呼ばれているモデルだ。以来、公道モデルの911で特別な性能を与えられたモデルにはRSの2文字が与えられ、今日まで伝統として残っている。 ポルシェ911 RS さて、現行の991世代になったポルシェ911は、通常のカレラに加えてターボやタルガといった仕様を増やしモデルレンジを拡大してきたが、今回満を持して送り出されたのが「911 GT3 RS」である。この911を”最も刺激的な公道用911″とポルシェはアナウンスしているが、はたしてRSを名乗ったこの911はいかなる性能を持ってデビューしてきたのだろうか。 ポルシェ911 RS 911 GT3 RSを一言で表すならば、「公道のレーシングカー」が最も妥当な言葉になるだろう。そういわしめるテクノロジーと性能が、エンジンにもシャシーにも与えられている。水平対向6気筒エンジンは4リッターまで排気量が拡大され、ターボを備えない自然吸気エンジンながら500馬力を生み出す。これは市販911世代に与えられた最も大きな排気量であり、最も高い馬力だ。 この大パワーを受けるシャシーは、必要な剛性を確保した上で徹底的な軽量化が施されている。ルーフには初めてマグネシウムが採用され、エンジンフードとボンネットにはカーボン素材が使われている。またフロントバンパー下端の形状やフロントフェンダー上のエアアウトレット、リアウィングなど、実践的な空力処理も施されている。 このエンジンとシャシーに緻密に開発され電子制御デヴァイスが組み合わされ、911 GT3 RSはこれまでにない圧倒的なパフォーマンスを得ている。それを証明するのが、7分20秒というノルドシュライフェ(=ニュルブルグリンク北サーキット)のラップタイムで、これはあのカレラGTをなんと9秒も上回っているのだ。 ポルシェ911 RS 911は、ひとつのモデルでありながら、911の後ろにつづく名前ごとにそれぞれの物語がある。以前紹介したタルガの由来の他にも、カレラにはメキシコで開催されていた伝説の公道レースの物語が、ターボには1974年に世界に衝撃を与えつつデビューした930ターボの物語があり、それらは「モデルレンジ」という名で横一列に並べられるものではない。そしてRSというこの2文字のアルファベットもまた、ポルシェにとって特別な意味を持つ2文字なのである。

Text by Koyo Ono