アカデミーで4冠を獲得した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
- 40男が嗜む逸品 -

映画の未来を示す、4つのアカデミー受賞作

保守的だったハリウッドが外国人や若手に光を当て、新時代の映画の潮流を提示した“2015年アカデミー賞”。ここでは、そんな“開かれたアカデミー賞”を象徴する4本の受賞作品を受賞結果と共に紹介する。どれもがこれから日本で公開される見逃せない傑作ばかりだ。

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞受賞) 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 かつて『バードマン』というスーパー・ヒーロー大作でスターとなったリーガン・トムソンは、最近ではヒット作に恵まれない落ち目の俳優だ。60代となり、家庭も崩壊してしまった彼は、レイモンド・カーヴァーの短編小説「愛について語るときに我々の語ること」を題材に、自ら主演・演出、ブロードウェイで再起を計る……。 まず、イニャリトゥ自身も加わっている脚本家チームが練り上げた脚本が素晴らしい。中年の危機、家族の崩壊、薬物依存症の娘との関係など普遍的な人間ドラマを盛り込みながら、表現者として生きる主人公の葛藤をブラックユーモアを交えて、見事に描き出す。 演劇界、映画界に対する痛烈な風刺も多く、米国映画界で生き延びてきたメキシコ出身のイニャリトゥのジレンマをも感じさせる。リメイクや原作ものに頼りがちな米国映画界において、これだけのオリジナリティを感じさせる脚本はそうそうない。 また、ファンタジックな語り口、主演のマイケル・キートンを始めとする俳優たちの演技、音楽、長回しにこだわったカメラワークなどすべてにおいて完成度の高さも圧倒的だ。 アカデミー賞では最多9部門にノミネートされ、作品賞を含む4部門で受賞した。 監督/アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 出演/マイケル・キートン、エドワード・ノートン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ   『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』(脚色賞受賞) 『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』(脚色賞受賞) 英国の知るひとぞ知る歴史的人物を北欧の監督、モルテン・ティルドゥムが見事に映画化した。第二次世界大戦下、英国政府はナチスドイツの暗号エニグマを解読するために、天才数学者アラン・チューリングら精鋭を集める。だが、チューリングは天才故の独創性が仇となって孤立していくが、女性メンバーのジョーだけが、そんな彼のよき理解者だった。 エニグマの解読の中心となり、コンピュータの原型をつくったチューリングの半生に迫る伝記映画。常識に囚われない天才というハマり役を演じたベネディクト・カンバーバッチほか英国の演技派が結集した歴史ヒューマンドラマ。 作品賞、主演男優賞など8部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した。 監督/モルテン・ティルドゥム 出演/ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、マーク・ストロング   『博士と彼女のセオリー』(主演男優賞受賞) 『博士と彼女のセオリー』(主演男優賞受賞) ケンブリッジ大学の物理学専攻の学生スティーヴンは、文学部の学生ジェーン・ワイルドと恋に落ちるが、まもなく彼は難病に侵される。ジェーンは、余命を宣告された彼とともに人生を歩むことを選択する……。 現代の宇宙理論に多大な影響を当てた理論物理学者スティーヴン・ホーキング博士の伝記映画。元妻のジェーン・ホーキングの自叙伝をベースにしているため、博士の偉大なる研究よりも、博士とジューンとの関係にフォーカスが当てられていて、心温まるラブストーリーとなっている。 車椅子の天才としても有名なホーキング博士だが、『レ・ミゼラブル』のマリウス役でも人気となったエディ・レッドメインは、半年に渡り彼の所作を研究し、特徴を捉えて見事に演じきった。 作品賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞、作曲賞の5部門でノミネートされ、主演男優賞を受賞した。 監督/ジェームス・マーシュ 出演/エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ、チャーリー・コックス   『セッション』(助演男優賞(J・K・シモンズ)、録音賞、編集賞受賞) 『セッション』(助演男優賞(J・K・シモンズ)、録音賞、編集賞受賞) 19歳のジャズ・ドラマー、アンドリュー・ネイマンは、一流の音楽学校へと進学。最高の指導者として名高いフレッシャーのバンドの一員となったが、自尊心を叩きのめされるほどの容赦のないフレッシャーの指導に、次第に追いつめられていく。一途な学生の鬼教授による壮絶な心理戦を描いたサスペンスフルな人間ドラマ。 1985年生まれの新人、デイミアン・チャゼルが監督し昨年のサンダンス映画祭でグランプリ&観客賞を受賞した作品でもある。 作品賞、助演男優賞、脚色賞、録音賞、編集種尾の5部門でノミネートされ、助演男優賞、録音賞、編集賞の3部門で受賞した。 監督/デイミアン・チャゼル 出演/マイルズ・テラー、J・K・シモンズ

Text by Astuko Tatsuta

Top Image: アカデミーで4冠を獲得した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 4つの受賞作の公開スケジュール 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 2015年4月10日 TOHOシネマズ シャンテほか 全国ロードショー (C)2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved. 『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』 2015年3月13日 TOHOシネマズ みゆき座ほか 全国ロードショー (C)2014 BBP IMITATION, LLC 『博士と彼女のセオリー』 2015年3月13日 TOHOシネマズ シャンテほか 全国ロードショー (C)UNIVERSAL PICTURES 『セッション』 2015年4月17日 TOHOシネマズ新宿ほか 全国順次ロードショー (C)Sony Pictures Classics / Landmark Media / ゼータ イメージ