グラミー賞におけるメアリー・J.ブライジとの「スティ・ウイズ・ミー」のパフォーマンス
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“報われない想い”が世界を制した理由

シングルヒット曲『スティ・ウイズ・ミー~そばにいてほしい』が年間最優秀レコード、年間最優秀楽曲を受賞。他にも、最優秀新人賞と大ヒットアルバム『イン・ザ・ロンリー・アワー』が最優秀ポップアルバムを受賞し主要3部門を含む4冠。本年度のグラミーは、まさにサム・スミスの年だった。彼のインタビュー3回連載の最終回では、それらの作品のコンセプトとなった“報われない想い”というテーマ。そして、それを切なく歌いあげる歌声が人々に共鳴した理由とは。

「ラッチ」「ラ・ラ・ラ」とヒットを連発し英国の音楽業界に名前を刻み続けたサム・スミスが、2014年の5月に世に放った自身のデビューフルアルバムが『イン・ザ・ロンリー・アワー』だった。そして、その発売と時期を同じくして、彼は、自らがゲイであること世間に公表する。 サム・スミス「このアルバムは“報われない想い”というテーマを持ったコンセプトアルバムだったんだ。僕はこのアルバムを作った時まで、誰かと付き合ったことがなかった。これまでずっと音楽を聴き続けてきて、恋愛関係についての歌を聴いてきたけど、自分のことのようには感じられていなかったんだよ。誰とも付き合ったことがないんだからね。だから僕は、自分が子どもだった時に出会えなかったアルバムを作りたいと思ったんだ」 彼のこの言葉には、ゲイとして生きてきた、その人生に何度も降りかかってきた切なく悲しい体験の数々を垣間見る事ができる。 サム・スミス「このアルバムの曲はすべて、僕を傷つけた実際の出来事についての細かい説明だ。いくつかの曲はあまりに個人的だから、僕は家族と一緒に聴くことさえできないほどだ。アーティストがすごくいい歌詞を書くためには、悲しくて嫌な瞬間を待たなくてはならないということなんだ」 グラミー授賞式で「僕の心を粉々に砕いてくれたあなたへありがとう。おかげで4つもグラミー賞がとれたよ」と彼が語ったように、彼が想いを寄せていた元マネージャーのエルヴィン・スミスとの関係の影響もこのアルバムにはあるのかもしれない。 「『自分を愛してくれない相手のことを愛することはもうしない』。そんな教訓を刻みつけるためにこのアルバムを作ったんだよ」以前、彼はそう語ったこともある。 サムが“報われない想い”のコンセプトにこだわった大ヒットアルバム『イン・ザ・ロンリー・アワー』 サムが“報われない想い”のコンセプトにこだわった大ヒットアルバム『イン・ザ・ロンリー・アワー』 同時に赤裸々な自分の作品に関して、彼はこのようにも語る。 サム・スミス「この作品が感情的な部分で人々とつながってくれるとうれしい。このアルバムは心を込めて作ったんだ。曲を聴くことでリスナーがそれに気づいてくれて、彼らに影響を与えられたらいいなと思う」 そんな彼の想いは、美しいメロディーと繊細かつ見事な彼の歌声によって、世界の人々の心に広がって行った。 ライブパフォーマンスでも評価の高いサム・スミス。写真は、ロンドン、サマセット・ハウスでの音楽イベント「サマーシリーズ」でのライブ風景 ライブパフォーマンスでも評価の高いサム・スミス。写真は、ロンドン、サマセット・ハウスでの音楽イベント「サマーシリーズ」でのライブ風景 (C)WENN.com / ゼータ イメージ アデル、レディー・ガガ、テイラー・スウィフト等数多くの有名ミュージシャンやマスコミからその歌声は絶賛を浴び、同時にアルバムも数々の賞を受賞していくこととなる。 『イン・ザ・ロンリー・アワー』は全世界で600万枚以上を売り上げ、全英、全米ともに1位を記録。彼の存在をグラミーの本命と目される立場に引き上げて行った。 そして、第57回グラミー賞でサム・スミスは年間最優秀レコード、年間最優秀楽曲、最優秀新人賞の主要3部門を含む4冠を獲得。彼の“報われなかった想い”が昇華され“大いに報われた”瞬間でもあった。 新人賞のプレゼンターを務めたテイラー・スウィフトも受賞を祝福する。 新人賞のプレゼンターを務めたテイラー・スウィフトも受賞を祝福する。 (C)PGFM / MediaPunch / Face to Face / Photoshot / ゼータ イメージ グラミー賞授賞式で、メアリー・J.ブライジと共に見事なパフォーマンスを見せたのが代表曲の『スティ・ウイズ・ミー』だ。サムはこの曲についてグラミー受賞後のインタビューでこう答えている。 サム・スミス「今晩受賞できた『スティ・ウイズ・ミー』は、誰もが共感できる曲だと思うんだ。みんな、ワン・ナイト・スタンド(一夜限りの関係)をたくさん経験したことがあると思うからね。この曲は、ぼくの正直な気持ちを歌った歌だよ。ぼくの音楽にとって正直さと真実はとても重要なことなんだ」 グラミー賞でのメアリー・J.ブライジとのパフォーマンス。 曲のラストに手を取り合う二人の姿が印象的だった。 グラミー賞でのメアリー・J.ブライジとのパフォーマンス。 曲のラストに手を取り合う二人の姿が印象的だった。 (C)PGFM / MediaPunch / Face to Face / Photoshot / ゼータ イメージ グラミー4冠を果たす直前の1月には、昨年できた初めての恋人、ジョナサン・ジーゼル(サムのPVに出演した若手俳優)と交際2か月でスピード破局。ただ、今年になって目まぐるしく彼に起こった出来事も、次の作品のインスピレーションになるという。 グラミーで4冠を獲得したサム・スミス グラミーで4冠を獲得したサム・スミス (C)Phil McCarten / UPI / ゼータ イメージ サム・スミス「新しい作品は、すでに書き始めているよ。あるコンセプトにしたがってね。今まさにそういう時間を過ごしているから、できるだけ多くの人にキスをしようと思っているよ。そうすることでいい曲が書ける。今、とても誇りに思える曲を書いているんだ。そして、その曲は、これまでぼくが書いてきた曲の中で一番正直な気持ちを歌ったものだよ」

Text by Daisuke Honma

Top Image:グラミー賞におけるメアリー・J.ブライジとの「スティ・ウイズ・ミー」のパフォーマンス (C)PGFM / MediaPunch / Face to Face / Photoshot / ゼータ イメージ