ポルシェ(Porsche 911)
- スーパーカーブランド【ポルシェ】 -

オープンカーの代名詞 ポルシェ911タルガの魅力を綴る

「Speed Graphics」は毎月1枚の写真からストーリーを紡ぐ連載。そのクルマが生まれた国、時代背景、歩んだ歴史などの大人の男なら知っておきたい名車の魅力を綴る。その第2回目は、オープンカーの代名詞でもあるポルシェ911タルガを紹介する。

ポルシェ(Porsche 911) いまでは広く定着した、屋根の一部が外れる「タルガトップ」という言葉が生まれたのは、1966年のことだった。それまでにも、似たようにルーフの一部のみを取り外すクルマはあった。例えば日本のトヨタも1965年に発表したスポーツ800で同様のルーフを採用しているが、タルガトップという呼び方はされていない。では1966年に何があったのかというと、ポルシェの「911タルガ」がデビューしたのだ。 1970年代に入ると、タルガトップの存在を一般化するもうひとつの出来事があった。アメリカの合衆国運輸省(DOT)が、横転時の乗員の安全性を理由に、大きく屋根の開くコンバーティブルモデルの販売を禁止にしたのだ。オープンスポーツカーの一大マーケットであった北米におけるこの規制の影響は非常に大きいものだったが、その解決策として注目されたのが911タルガであった。それはタルガの構造上、オープンの状態で横転しても、残っている屋根の一部がロールバーとして機能し乗員の安全性を確保できたため、DOTの規制を回避できたからだった。こうしてタルガトップは安全なオープンカーとして一気に認知され、同じような構造をしたオープンカーの代名詞となったのだった。 では、その「タルガ」とはどこからきた言葉なのか? タルガの由来は、イタリア南部の島シチリアで開催されていた公道サーキットレース「タルガ・フローリオ」に由来する。このレースは1906年に第1回が開催された歴史あるレースで、シチリアの大富豪、フローリオ家の次男ヴィンチェンツォが始めたレースだ。「タルガ」はイタリア語で「プレート」を意味していて、優勝者に栄誉を称えて授与されるカップや盾と同じ意味合いのもので、それが主催者のフローリオ家から送られるから「タルガ・フローリオ」なのである。ポルシェはこのタルガ・フローリオの常連で、1906年から1978年まで61回開催された中で総合優勝を11回も獲得している。これはアルファロメオの10勝やフェラーリの8勝をも凌ぐタルガ・フローリオの最多優勝記録なのだ。 ポルシェとタルガ・フローリオの関係を知ると、屋根を開けた911タルガで感じる風にはシチリアを想わずにいられない。地中海の要所として、古代ギリシャ時代から重要な島だったシチリア島。砂埃の混じる乾燥した風と、照りつける太陽に思いを馳せるのも、911タルガの楽しみといえるだろう。  

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ポルシェ(Porsche 911) Porsche 911 Targa 4 (2015) 最新の911タルガを見て「タルガが帰ってきた」と思ったポルシェファンは少なくないだろう。過去3世代にわたって、911タルガはロールバーのある本来のタルガトップではなく、スライド式のグラスルーフを備えたモデルになっていたからだ。やはりシルバーのロールバーこそが911タルガの代名詞であり、タルガ・フローリオという公道レースをオリジンに持つ911タルガのあるべき姿だろう。

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ポルシェ(Porsche 911) Porsche 911 Targa (1967) 1966年に発表された初代911タルガの姿。ボディ色とは別の、ステンレスシルバーのロールバーが残ったオープン状態。これこそタルガだ。当時はルーフ部分がハードトップになっており、ロールバーの後ろはソフトトップになっていた。ソフトトップ部分もたたむと、フロントウィンドウとロールバーだけになり、プロトタイプスポーツカーのようでもある。現行モデルがリアのガラスで表現したかったのは、この初代のイメージだ。 Porsche 906 Porsche 906 at the Targa Florio (1966) 911タルガを発表した1966年から、ポルシェはタルガ・フローリオを5連覇する。タルガ・フローリオ1973年まで、当時高い人気を誇ったスポーツカー世界選手権の1戦として開催されていたため、参加車両もフェラーリやアルファロメオを筆頭にアルピーヌやフォードなど多彩な顔ぶれだった。

 Text by Koyo Ono