_R3A4332_R(2)

10万円超えの高級紳士靴は何が違うのか?

多くの人にとって5万円を超える紳士靴は、かなり思い切った買い物だろう。それを上回る10万円、20万円のクラスとなると、おいそれと手を出せるものではない。だが、「一度、ハイエンドな紳士靴を履くと、やみつきになりますよ」と語るのは、伊勢丹新宿本店メンズ館・紳士靴担当の塚原拓也さんだ。

5万円と20万円の紳士靴は、そもそも何が違うのだろうか? 塚原さんに聞いた。

伊勢丹新宿店メンズ館・紳士靴担当の塚原拓也さん

■10万円超えの革靴は「厳選された革」と「作る時間」からして違う

伊勢丹新宿本店メンズ館、地下1階の紳士靴売り場。5万円以上の高級な革靴がずらりと陳列されている。なかには20万円を超えるものもあるが、素人目にはその違いは分かりづらい。というより、どれも同じ「良い靴」に見えるが……。

「まず、5万円~10万円の価格帯でいうと、その品質自体に大きな差はありません。5万円の靴も8万円の靴も、素材や履き心地に優劣があるわけではなくて、では何が違うかというと『ブランド力』と『拘り』ですね。やはり有名ブランドのものは若干値が張ります」

ブランドにこだわらなければ、5万円のものでも特に見劣りはしないという。品質に「明らかな差」が出てくるのは、10万円のラインを超えたあたりからだと塚原さん。

「革の質から明らかに変わってきますね。職人がより手をかけ、工場でじっくり木型に寝かせるなど、本当に丹念に作られています。また、20万円前後のクラスになると、伝統を受け継ぐ職人の厳しい目で『厳選された革』を使うころからして違いますから」

某英国靴ブランドは、子牛の段階から厳しい質管理を行い、「厳選された傷のない牛」のみを選び抜くという。最高級の素材を用い、革にダメージが出る薬品は使わない。塚原さんいわく「きめの細かい風合い」が、最大の魅力だ。

「そのぶんデリケートなので、きちんと手入れをしないと革が乾燥したり割れの原因になります。ただ、10万円以上のものを買われるのは本当に革靴が好きな方が多く、そうした手入れも含めて楽しんでいただいているようです」
EDWARD GREEN(エドワード・グリーン)
JOHN LOBB(ジョン・ロブ)
J.M.WESTON(ジェイエムウエストン)
さらに、履き心地もまるで違うようだ。

「5万円台と20万円以上の靴を履き比べてみると、フィット感の違いに驚かれると思います。最高峰の紳士靴は土踏まずや踵の部分もキュっと締まっているため、包み込まれるような感覚です。足を“やさしく抱かれている”、そんな心地よさが味わえると思います」

塚原さん自信、履き心地の良い靴を履いている時は1日ずっと快適な心持ちでいられるという。そして、一度それを知ってしまうと「戻れなくなる」そうだ。

知られざる“超高級”紳士靴の世界。足を踏み入れるには覚悟がいる、なかなか危険な沼のようだ。

text by Noriyuki Enami(Yajirobee)

photograph by Masahiro Kojima